ソラーレホテルズ アンド リゾーツが石川県加賀市の山中温泉で運営する「山中温泉 河鹿荘」が8月1日に開業を迎え、同日午前から記念イベントが開催された。地元政財界から多数のゲストを招いて行われた開業セレモニーには宮元陸加賀市長も出席。盛大なテープカットや芸妓衆による山中節の披露なども行われ、華やかに開業を祝った。松尾芭蕉の「奥の細道」にも詠まれた1300年の歴史を持つ名湯を楽しみながら、絶景に抱かれてステイできる同館。ここでは実際に見学した館内の感想を交えながら開業当日の様子をお伝えする。
「北陸の恵みを五感で味わう」温泉ホテルが誕生
東京から新幹線で約2時間50分。昨年3月の北陸新幹線延伸で首都圏からのアクセスがグッと便利になった石川県の加賀温泉駅。その加賀温泉駅から車で約20分のところにある山中温泉は、加賀市内に3か所ある温泉街の中でも奥まった風情と鶴仙渓(かくせんけい)の渓谷美に代表される自然との調和が魅力的な温泉地である。

その山中温泉にこの度誕生した「山中温泉 河鹿荘(かじかそう)」は、「北陸の恵みを五感で味わう」をコンセプトにした温泉ホテル。鶴仙渓の渓流沿いに構える10階建ての旧施設をリノベーションした宿は、和室、洋室、和洋室合わせ、山中温泉で最大規模の101室を擁する。
現地を訪れて真っ先に感じたのは、そのロケーションの素晴らしさだ。

山中温泉の中心部から徒歩圏内の立地ながら、正面から見た外観の背後には鶴仙渓の緑が借景として広がる。無論、館内もその景観をどこにいても感じられる造りになっており、まずエントランスを入り、石川県の地酒などのウェルカムドリンクとともに過ごすラウンジから見る景色に目を奪われる。

スイート、デラックス、スーペリアなど5タイプある客室も窓一面に緑が広がる渓谷ビューが自慢。全室が35㎡以上とゆとりを持たせた広さで、この日、施設説明を行った渡辺政仁総支配人は「カップルやご夫婦のお客様はもちろんのこと、4名様から6名様でご利用いただける広い部屋を多く用意しておりますので、ファミリーの方々や社員旅行の方々のご利用にもおすすめしたいです」と多様なニーズへの対応をアピールする。

加えて洋室の壁面には、この地の伝統工芸である山中漆器の技法「加飾挽き(かしょくびき)」に着想を得たモチーフをあしらい、郷土色を意識したコンセプトの反映が感じられる。

温泉三昧の後は禅をイメージした湯上りラウンジでゆったりと
気になる温泉は檜風呂と石風呂を配した内風呂と石造りの露天風呂で楽しめる。泉質は薬効が高く、美肌効果もあるとされるカルシウム・ナトリウム―硫酸塩温泉で、内風呂にはこちらも檜造りのサウナを設け、木材の香りがふんだんに香る空間の中でリラックスできる。


一方で周囲の樹木を映し込む露天風呂は自然に溶け込む気分を誘い、隣にはサウナ利用者の「ととのう」に欠かせない外気浴スペースも。

また、禅をテーマにした湯上りラウンジも広々としたゆとりある空間だ。「能登の農園と提携して加賀棒茶や8種のフレーバーティー、アイスクリームも提供します」と渡辺氏。ビャクダンの香りや富山県の伝統工芸である久乗おりんの音色で心落ち着かせながら、湯上りの余韻にゆったりと浸れそうだ。

石川県が誇る海の幸、山の幸をライブキッチンで
さらに、北陸の恵みを重視したコンセプトを掲げる上で特に力を入れるのが、6階のビュッフェレストランで供される料理の数々だ。

夕食は季節ごとに入れ替えを行いながら常時80種類以上のメニューを用意。その中には金沢おでん、鶏の治部煮、のどぐろ炙り寿司、ハントンライスなど、金沢の郷土料理や加賀野菜などの食材をふんだんに盛り込む。一方、朝食も石川県の銘柄米である「ひゃくまん穀」や加賀味噌の味噌汁、小松うどんに金沢すいかと郷土の味覚が盛りだくさんの内容だ。
「なかでも注目していただきたいのはライブキッチンです。夕食は能登牛と能登豚を合わせたハンバーグがメインで、パンにはさんでハンバーガーにするなど、いろいろなアレンジを用意しています。旬の加賀野菜とガスエビのかき揚げも提供します。朝食は加賀棒茶を使ったフレンチトーストや握りたてのおにぎりをお楽しみください」(渡辺氏)

その他、卓球、ビリヤード、ポーカーのほか、ちょっと珍しいモルックなど室内の娯楽が盛りだくさんのプレイルームや、北陸を舞台にした漫画や石川県出身作家の作品に触れられるライブラリースペースも完備。外には「あやとりばし」や「こうろぎばし」というユニークな橋がかかる鶴仙渓の遊歩道が敷かれており、レンタサイクルも無料で借りられるので、アクティブに体を動かすのもよし、適度に体を休ませながらインドアで遊ぶもよし、思い思いの過ごし方で楽しみたい。


単なる宿泊施設ではなく地域と共生できるような観光施設に
加賀市の宮元陸市長ら多数の地元関係者を招いて行われた開業セレモニーでは、河鹿荘のオーナーであるラサール不動産投資顧問株式会社の奥村邦彦社長とソラーレホテルズ アンド リゾーツの高野瀬明郎副社長が登壇。

滋賀県長浜市出身の奥村氏は「石川県は長浜から近いので、昔は特に南部の方によく遊びに来ていました」と自身と石川県の縁を述べつつ、アメリカ・シカゴを本拠地に世界各地の不動産を管理・運営している同社の事業を紹介。次いで「河鹿荘のリニューアルでは地域の魅力を最大限に活かしつつ、現在のニーズに合致した施設を目指しました。今後の運営でも地域の皆様との連携を強化しながら、単なる宿泊施設ではなく地域と共生できるような観光施設を作ってまいります」と述べ、「北陸地方には大きな潜在性が残されています。もっともっと多くの方に北陸の魅力を知っていただけるよう、この河鹿荘がその助けになれば幸いです」と語った。

ソラーレの高野氏も20以上のホテルブランドを抱える同社の取り組みにまず触れた上で、「国内外の観光客に大変人気のある石川県で山中温泉のホテル運営に携われることを大変嬉しく思っております」と喜びの笑顔。そして「河鹿荘ではお泊りいただくお客様たちにいつまでも心に残るような空間と時間、サービスをお届けしていきます」と述べ、「ここでは新参者になりますが、加賀市をはじめとした行政の皆様、そして地域の皆様と一緒に山中温泉全体を盛り上げていきたいと思っておりますので、お力添えの程よろしくお願いします」と会場に招かれたゲストたちに一層の協力を呼びかけた。

また、来賓を代表して祝辞を述べた宮元市長は、山中温泉の新施設開業に行政のリーダーとして感謝を述べつつ、「例えば、環境への配慮や社会貢献などの付加価値によってイメージアップが図れると温泉地全体の魅力が上がるので、ぜひ奥村社長にはそういうことも含めて投資を加速していただきたい」と今後のさらなる関係の強化に期待を述べた。

セレモニー後はエントランス前でテープカットを行い、河鹿荘のオープニングを華やかに祝福。また、車幸弘石川県議による乾杯の音頭で始まったレセプションパーティーでは、山中温泉芸妓組合の芸妓衆による山中節の披露もあり、地域の魅力発信をコンセプトにした施設の門出にふさわしい笑顔あふれるイベントになった。


「山中温泉 河鹿荘」の宿泊料金は、2名1室利用の場合、一泊二食付きで31,600円から。何より景観が素晴らしい宿には、秋は紅葉、冬は雪景と、そこには四季のグラデーションが鮮明な土地だからこその魅力がある。北陸新幹線延伸で各地からの距離が縮まった山中温泉。その最新ホテルで伝統の湯と絶景、加賀の味覚と三拍子も四拍子も揃った極上ステイを過ごしてみては。
「山中温泉 河鹿荘」
所在地:石川県加賀市山中温泉河鹿町ホ-100
アクセス:小松空港から車で約35分、北陸新幹線・加賀温泉駅から車で約20分。(加賀温泉駅から送迎サービスあり)
駐車場:60台(無料)