横須賀のクラフトビール醸造所「GRANDLINE BREWING」が、2026年10月で創業3周年を迎える。音楽やアート、WEB3など様々なカルチャーを横断し、「乾杯」で人と人をつなぐ“コミュニケーションブルワリー”としてビールの裾野を広げてきた3年間。その先に、4年目のテーマとして掲げるのは「証明」だ。
丸くなるのではなく、尖ったまま強くなる。偉大なる航路の向かう先について、代表・大西隼人氏に話を聞いた。
アメリカと日本のカルチャーが混じり合う横須賀で、理想のビールを追い求めて

大西氏が醸造所の拠点として横須賀を選んだ理由は、この土地が持つ独特の空気感にある。海と山の自然が街と共存し、米軍基地の存在によってアメリカの空気感も漂う街を実際に歩いてみたときに、日本ではあまり見られない「アメリカ×日本」のミックスカルチャーに強く惹かれたのだという。
「外国人が多い街にクラフトビールを持ち込めば、きっと良い雰囲気をつくれる」。追求したかったアメリカンIPAというビアスタイルに、横須賀という土地はフィットすると直感したことも、開業への背中を押した。
拠点となる物件は、横須賀中央駅から徒歩12分ほどの場所にあるラーメン店の跡地だ。自らの手でスケルトン状態にし、一から設計し直すことで、理想のブルワリー・タップルームを形にしていった。
そして2023年10月、GRANDLINE BREWINGがオープン。店名には、軍・港街という横須賀のイメージから受けたインスピレーションが込められている。出発や旅立ちのニュアンスと、「次元を超えて、地域を超えて愛される」という願いを重ねたネーミングだ。
全国各地を自らの足で巡り、数えきれないほどのビールと出会ってきた大西氏だからこそ、「後発として世に出るからには、唯一無二の概念や価値を持つブルワリーを創りたい」という強い思いがあった。それを実現するための、新たなビールを探す冒険がここから始まったのである。
「乾杯」でカルチャーをつなぐ、“コミュニケーションブルワリー”という挑戦

目指したのは、外国人にもパイントで何杯も飲んでもらえるような、飲みごたえがありながらもドリンカブルなビール。これは、大西氏だけでなくブルワーを含めたチーム全員の共通認識だという。
そして、時代やトレンドに合わせて、常にアップデートし続けなければならないと大西氏は語る。
GRANDLINE BREWINGは、単にクラフトビールを醸造するだけの存在ではない。ビールを起点にカルチャーを生み出し、「乾杯」を通じて人と人をつなぐ“コミュニケーションブルワリー”として活動してきた。WEB3や音楽、アート、ファッションなども横断しながらコラボレーションを重ね、カルチャー領域を拡大してきたのだ。
立ち上げ当初から大西氏の胸には、「ビールと他のカルチャーをつなぎ合わせて、クラフトビールの裾野を広げていきたい」という思いがあった。幅広い層にクラフトビールの魅力を感じてもらいたい。その一心で、自社が企画・運営するイベントを数多く仕掛け、精力的に発信を続けてきた。
象徴的な取り組みの一つが、NFTを発行する次世代ビールコミュニティのオリジナルビール「Crypto Beer」の醸造だ。さらに、境界なき新たなビールカルチャーの創造を目指し、オンライン上の仮想ブルワリー「MetΔBrews」の構想も積み上げてきた。リアルとバーチャルを自在に行き来する、これまでにない体験の設計である。
これらの活動に対して、どのような手応えを感じているのか。大西氏はそう問われると、「ビールの裾野を広げることは、非常に難しい挑戦だと痛感している。まだまだ道半ばですね。」と本音を明かす。難しさの背景には、製造量がまだ十分でないことや、流通経路が限られているために多くの人の目に触れる機会が少ないという課題がある。
知名度向上のための3年間を経て、ビールの本質を追求する

この3年間、GRANDLINE BREWINGはエンターテインメントの追求と、認知・発信力の向上を掲げて走り続けてきた。コラボレーションやSNSでの発信、イベントの開催、異業種との接続。あらゆる手段を通じて「クラフトビールの可能性」を広げ続けてきたのである。
その根底にあるのは、「有名にならなければ、どれだけ美味しいビールを作っても意味がない」というシビアな認識だ。後発の無名ブルワリーだからこそ、マーケティングとブランディングをしっかりと行い、実際に売れるところまで持っていかなければ、そもそもビールを飲んでもらう機会すら生まれない。だからこそ、エンターテインメント性と認知拡大を追求し、まずは知ってもらうための努力を重ねてきたのである。
「多くの人の力を借りながら歩んできた道のりだった」と、3年間を振り返る大西氏。少しずつ認知が広がり、ブランドとしての礎ができてきた実感がある。ビールの味わいの方向性や、ラベルのフォーマットも次第に定まってきた。
もともと、4年目はビールそのものの本質を追求していきたいという構想があった。これまでも「International Beer Cup」での金賞受賞をはじめ、国内のビアコンペティションで複数回受賞するなど品質面で着実に歩みを進めてきたが、味やブランディングを統一し、より骨太なブランドへと磨き上げていく。
時間や場所、コストの制約があるなかで、オーナーである大西氏とブルワーは頻繁に話し合いを重ねてきた。「作りたいビールだけを作って出す」のでも、「定番ビールだけを繰り返し出す」のでもなく、飲み手に喜んでもらうためのビールとは何かを常に問い直しながら、ラベルを含めた商品の細部までこだわり抜く妥協のない姿勢を貫いてきたのだ。
4年目は、ビールの品質で確かな結果を残すことに、さらに踏み込んでいく。
丸くならず、尖ったまま強くなる。世界を見据えた「証明の4年目」に向けて

国内外のビアコンペティションへの挑戦を通じたビールの確かな品質と、GRANDLINE BREWINGだからこそ生み出せる体験の両方で結果を残す。
決して丸くならず、尖ったまま、さらに強くなる。それが4年目の目標である。ここから5周年までの2年間を、大西氏は「試練の期間」と捉えている。世の中には数多くのブルワリーが次々と生まれており、そう簡単に事業を継続できるほど甘くはない時代だ。
だからこそ、4年目はクラフトビールの領域において国内外のアワードを極めてストイックに獲りにいく。「売れるビール」と「勝つためのビール」を必ずしも同一視しない割り切った姿勢で、国内外で通用するビールを作り、世界に実力を証明する。
さらに、ビールの品質追求と並行して、オンラインとリアル両方の「体験」も広げていく。リアルな場で飲むだけにとどまらない、クラフトビールの概念を超える挑戦だ。
そしてもう一つ、「史上初」というキーワードも掲げる。史上初を目指すことは、決して珍しいことではない。それでも、あえて明言するのは、「本気でやる」という覚悟を周囲に伝えると同時に、自分自身に言い聞かせるためでもあると大西氏は明かす。
GRANDLINE BREWINGが「史上初」という概念を何度も何度もつくり出していく。簡単なことではないと自覚しながらも挑戦し続け、いつまでも尖り続けたいという。
様々な人が主体的に関与でき、すべての人が「関わってよかった」と思えるブルワリーにしていきたいという思いもあるそうだ。
結び|4年目の幕開けは、3種の新作ビールリリースと周年イベントから

「証明の4年目」の幕開けを飾るのは、3周年を記念した3種の新作ビールのリリースだ。これまでのGRANDLINE BREWINGの歩みと、これから向かう先のブランド像の両方を象徴する3本となる。
3名のクリエイターとともに、それぞれ異なるコンセプトを持つ3つのビールを制作。さらに、各クリエイターがそれぞれの解釈で手がけた3つのクリエイティブも用意されている。
そして、2026年10月3日(土)・4日(日)の2日間、横須賀のタップルームにて「GRANDLINE BREWING 3rd Anniversary Event『KANPAI YOKOSUKA』」が開催される。
会場では、3種の3周年記念ビールが一斉に開栓されるほか、ボトルの先行販売も行われる予定だ。イベント限定のビールやアイテム、フード、DJといった催しも、2日間を盛り上げていく。
これからどんなビールが、エンターテインメントが、コラボレーションが待ち受けているのか。無限の可能性を追い求めるGRANDLINE BREWINGを中心に、新たなビールとカルチャーが“醸されていく”瞬間を、これからも見届けていきたい。
