東京・白金台の八芳園は2025年2月より一時閉館を行い、創業以来初となる最大規模の全面的なリニューアルを実施し、約7か月にも及ぶ工期を終えて、2025年10月1日にグランドオープンします。

それに先立ち、2025年9月17日には特別内覧イベント&メディア向け発表会が開催されました。当日はメディアツアーによる館内の説明や、リニューアルに至った背景、今後の八芳園の戦略について発表されました。

「継承と創造」をテーマに全面リニューアルを実施
“婚姻数減少時代”といわれるなか、八芳園では既存の婚礼事業にとどまらない新たな施設やサービスを用いたMICE事業の強化に取り組んでいます。

今回、そうした流れの中でブライダル事業からライフイベントプロデュース事業へとアップデートするのを視野に入れ、「継承と創造」をテーマに全面リニューアルに踏み切ったそうです。多様化するMICEに選ばれる施設として、ゲストの往来の利便性向上のためにエントランスを改修し、バスの乗り入れがしやすくなりました。


メインロビーは、「日本の、美意識の凝縮」を象徴する空間として、日本庭園の自然美と融和する組子アートの伝統美に包まれる雰囲気を感じることができます。組子細工の美意識や繊細さに、思わず目を奪われてしまう印象を受けました。さらに、メインロビー中央にそびえる“シンボルツリー”は、土台の石垣から結び目のような枝まですべて木で作り上げられた唯一無二の圧倒的な存在感を誇っています。


レストラン「ALL DAY DINING FUDO」では、八芳園と連携協定を結ぶ自治体の生産者から直送される厳選素材を、石窯で素材本来の持つおいしさを最大限に引き出す調理で提供される料理は、さまざまなシーンで利用できるでしょう。


今回のリニューアルの中でもポイントになるのが会員制「CLUB FLOOR」の新設です。会員企業様向けのメンバーシッププログラム「CLUB HAPPO-EN for Business」を2025年2月より開始し、会員企業のみが利用可能な「ROOFTOP TERRACE」や「STUDIO KOKU」「HALL HAKU」など、新たに上質な空間と充実した設備を設け、多様なビジネスシーンに対応していくとのことです。
八芳園が目指す「エリアプロデュース企業」への変革
メディアツアー後に行われた発表会では、八芳園の取締役総支配人を務める関本敬祐氏が登壇し、リニューアルの経緯や事業進捗の報告、今後の展望について語りました。
昨年、八芳園では「本物」を追求するプロデュース企業へと新たなスタートを切るために「VISION 2025」を発表し、長年のブライダル事業で培ってきた「異なるものや想いを一つに結びつけるプロデュース力」を軸に、さらなる事業の拡大を掲げていました。

まさに、今回のリニューアルは、八芳園が「エリアプロデュース企業へ変化を起こすためのスタートそのもの」だと関本氏は述べ、400年以上の歴史を持つ日本庭園を中心に、2043年に迎える八芳園グループ100周年へ向けて変革を進めていく決意を表しました。
400年以上の歴史を持つ八芳園の庭園は、大正時代に実業家・久原房之助が築いたものです。彼は樹齢400年の1本の赤松に心惹かれ、「庭を造るのではなく、自然を整えるもの」という信念のもと、赤松を中心に庭園を造り上げたのが八芳園の始まりとなっています。
その1本の赤松をリニューアル構想の中心に据え、建物を新たに建てるのではなく、既存の建物をより良い形で継承していくことで、八芳園の原点である日本庭園との親和性をより一層深めることを目指したそうです。
一方、サービス面においては「希少性をテーマに掲げている」と関本氏は話しました。日本庭園は四季によって花や木々が変化し、風や光によって空気や色も移ろい、一瞬たりとも同じ表情を見せることがないからこそ、「その時にしかお届けできない価値を大切にしていきたい」と述べました。
例えば、地方にはその地域でしか出会えない希少な食材が数多くあり、なかには1週間ほどしか出回らない果物や、限られた季節だけ獲れる魚介、地域限定の野菜などが存在しています。
このような量や供給の安定性に課題があるものでも、供給方法や業態、場所、調理技術を工夫することで、新たな価値を創出して提供することが可能だといいます。希少性のある素材を生かした特別感のある食事や土産を、八芳園が運営するレストランや婚礼・宴会など多彩なシーンで展開していくそうです。

さらに、リニューアル最大の目玉となる「CLUB FLOOR」についても、「専用ルーフトップテラスでは、日本庭園を全身で感じられる他にない体験が可能。


5階には専用クロークや控室・ラウンジを完備し、ニーズに応じて多彩な楽しみ方で特別な時間を過ごせる空間が特徴となっている」と関本氏は話しました。

2026年4月からは、各ジャンルのプロフェッショナルによる特別なウェディングを提供する新たなウェディングサービスを開始する予定とのこと。
白金・高輪エリアを全国各地の文化発信の中核拠点にしていく
八芳園グループは、「文化資産を活用したエリアプロデュース企業へ」というビジョンのもと、2030年までに年間総売上130億円の達成を目指すと、関本氏は事業で見据える目標を示しました。

「八芳園グループは、コロナショックを契機に事業ポートフォリオの転換に着手し、婚礼中心の事業体質からの脱却を進めてきました。図で示したように、2024年9月期には年間婚礼実施組数1,491組でありながら売上高は95億円へと推移しており、これからも組数にこだわるのではなく、結婚式そのものの価値を高め、高単価での婚礼事業運営を進めつつ、多角的な事業で収益基盤を構築していきます」(関本氏)
直近でも、イベントセールス事業が前期比133%と順調に成長するほか、レストラン事業、空間デザイン事業、ギフト関連事業、自治体連携事業、DX推進事業についても、白金台八芳園との連携を深め、事業シナジーを創出し、全体の成長が加速しているとのこと。2030年にグループ年間総売上130億円を目標に据え、「一人あたり給与支給額 年平均5.5%アップ」の実現に向けて挑戦していくと関本氏は意気込みを語りました。

そして、今回のリニューアルを機に八芳園を舞台にしながら、話題のTAKANAWA GATEWAY CITYへと事業のフィールドを広げるために、2025年9月12日からはニュウマン高輪に「割烹 BUTAI」と「八芳園洋菓子店」の2店舗を新規オープン。
白金・高輪エリアを全国各地の文化発信の中核拠点にしていくため、JR東日本と八芳園は共創パートナーシップ協定を締結し、TAKANAWA GATEWAY CITYを起点に、日本文化と地域の魅力を世界へ発信していくそうです。
「両社がそれぞれの強みを活かし、白金・高輪エリアが国内外のお客様に“目的地”として選ばれる未来を目指す」
そう語る関本氏は具体的な事例を紹介し、今後の連携の可能性を次のように示しました。
「今年6月に開催した『MATSURI JAPAN 2025』では、全国各地の祭りチームによるステージ披露や街中を練り歩くパレードを実施し、八芳園のシェフが考案した『新郷土料理』を提供したところ、事前予約者に加えて通りがかりの方も多く参加し、JR東日本の集客力の大きさを実感しました。
このように、地域の文化資産から新たな価値を生み出し、多くの方に体験いただくことで、両社連携ならではの取り組みができるのではと期待しています」
新しい街だからこそ、しっかりと文化を創っていく。
長年にわたって白金・高輪エリアの地に根差し、文化づくりに携わってきた八芳園だからこそできることがあるのではないでしょうか。
「今後も全国各地の文化資産とこの新しい街の魅力を掛け合わせ、新たな価値を創出していきたい」と関本氏は語り、発表を終えました。