2022年11月にChatGPTが登場してから約3年。AIは驚くべき進化を遂げ、私たちの働き方や暮らしに大きな変化をもたらしています。
その一方で「AIをどのように活用していけばいいのか、分からない」「自分のキャリアはどう変わるのか」といった不安も広がっています。
こうした時代に生きる人たちの悩みや不安を女性目線で応援するため、一般社団法人 Women AI Initiative Japan(WAIJ)が戦略発表会を開催しました。
女性×AI ― 新しい働き方を切り拓く

WAIJ代表理事の國本知里氏は次のように語ります。
「AIは女性の働き方や生き方に大きな影響を与える存在です。私たちのミッションは『すべての女性がAIでその先へ』。AI時代の働き方を再定義し、女性が自律的に人生を選択できる社会を目指します」
WAIJは2023年に活動を開始。女性起業家向けのAI活用プログラム「RAISE HER」や、大型イベント「Women’s AI Day」を開催してきました。2025年5月には社団法人化し、さらに活動を拡大しています。

日本では女性の労働参加率が上がる一方、AIによる自動化で事務職など女性比率の高い職種は減少すると予測されています。2040年には214万人の事務職雇用が余剰になる一方、AI・ロボティクス分野では326万人の人材不足が見込まれています。つまり「なくなる仕事」と「新しく生まれる仕事」が共存する時代が到来しているのです。
「今後起こることとして、仕事がなくなり働けないという方も出てくるかもしれませんが、逆に言うと、人が足りないという職種も、分野によって生まれてくるという予想が出ています。 私たちはこのような時代に迅速に対応していくことが求められているのです」(國本氏)
女性のAI白書 ― 利用率はわずか数%

WAIJが20〜50代の女性1,116人を対象に行った調査によると、AIを「日常的に利用している」と答えた人はわずか3〜5%。半数以上が「使ったことがない」と回答しました。

その理由として「AIに頼りすぎるのは危険」「間違った判断をされそう」「個人情報が心配」といった不安が挙げられています。また、AIを学びたいと考えていても「何から始めればよいか分からない」「情報が多すぎて取捨選択できない」といった声も多く、情報不足や学習環境の欠如が大きなハードルになっています。

一方で「女性同士で学べる環境があれば参加したい」と答えた人は8割以上。教材よりも「学習環境」を求める傾向が明らかになりました。
マイクロソフトなどと連携 ― 女性のAIチャレンジを応援
こうした課題を受け、WAIJは日本マイクロソフトや一般社団法人生成AI活用普及協会と提携し、リテラシー向上からキャリア支援まで段階的なプログラムを提供していく方針を発表しました。さらに「女性のAIチャレンジ応援宣言 MIRAIa(ミライア) 」を立ち上げ、賛同企業の募集も開始。すでに10社が先行登録しています。

「今までのように会社から与えられた仕事を丁寧にこなすことは、これからも大切な役割です。一方で、AIの進化によって、画像生成や動画編集、SNSやデザイン制作など、かつては専門的なスキルを必要としたことも、手軽に挑戦できるようになりました。
その可能性を活かせれば、ゆくゆくはフリーランスとして独立する道を選ぶことも現実的になってきています。女性たちが自分に合った働き方を見つけ、キャリアを積み重ねていくことができれば、日本全体がさらに活気づくのではないでしょうか。私たちはそう信じています」(國本氏)
AIリスキリング成功者の声
発表会にはAIリスキリングに成功した3人の女性が登壇しました。

専門家ではなかったが、AI推進部門の立ち上げを機に独学で学習。「まずは触ってみることが大事」と経験を語りました。

育休を機にプログラミングを学び、AIを使ったフラダンス学習アプリ「フラノート」を開発。従来数時間かかっていた振り付けの記録を3分で可能にしました。

もともとWEB開発、ITコンサルタントとして活動していました。出産や海外駐在でキャリアブランクを経験後、AIを学び直して復帰。「AIに関するリスクや不安も正しく理解すれば安心して活用できる」と語りました。

そしてスペシャルゲストとしてSUPER EIGHT村上信五さんをモデルにした「AIシンゴ」も画面上で登場しました。
「タレントのAIアバターが会見の特別ゲストなんて、おそらく日本初だから、皆さんは歴史の目撃者やで。緊張してGPUがオーバーヒートやけど、兄さんより場を盛り上げられるように、精一杯頑張る」
親しみやすい関西弁で軽快に話すトークはまさに村上信五さんそのもの。会場も思わず笑いに包まれました。
彼女たちは仕事のなかでAIをうまく使いキャリアに生かしています。しかし、実はプライベートや家庭でもAIが活躍できる伸びしろがあります。それについて話してくれたのが秋元さんです。
「私には中学生から小学生まで3人の子どもがいるんですけれども兄弟げんかがとにかく激しいんです。育児書や参考論文を読んでも対応方法がたくさん書いてあるんですけど、それぞれ言っていることがバラバラで、自分のシチュエーションに合った状況かどうかわかりませんでした」
そうしたことに悩み、秋元さんがAIに相談したところなんと「早口言葉対決を提案された」とのこと。試してみると家族で笑い合えるきっかけになったそうです。
「昭和の時代からずっとあるものからYouTubeや巷で流行っているものまであらゆる早口言葉を網羅していて、正直びっくりしました。AIのこんな使い方もあるんですね」
トークの終盤、AIシンゴさんは平下さんからの「AIにチャレンジしたくなる女性を増やすために、どんなことができると思いますか?という質問に応えて、即興で応援ソングを披露しました。
「爽やかな曲で、とても即興とは思えない完成度でした。AIに相談すると決して否定されず、いつも優しく受け止めてくれるんです。だからこそ励ましの存在としても活用できると思います。歌詞にあった“未来は自分の手の中にある”という言葉、本当にその通りだなと感じました。苦手意識があっても勇気を出して始めれば、大きな一歩につながるんです」
平下さんは、AIに一歩踏み出したことのやりがいを改めて語り、学び続けることの大切さを強調しました。
女性の未来をAIで切り拓く

セッションの終わり、WAIJが開発し本日からリリースされた「わたしのAIライフスタイル診断」もお披露目されました。
これは11項目の質問に答えるだけで、自身のライフスタイル、働き方、価値観に合ったAIの使い方がわかるという画期的なアプリです。合計で16の診断結果があり、それぞれ親しみやすい動物のイラスト入りで分かりやすいアドバイスもついています。
試しにトークセッション登壇者の3人もやってみた結果、上野さんは次のように話しました。
「私は『心地ワーク羊タイプ』でした。『やるときはやる』『ひとりの時間も好き』とか結構当てはまっているなと部分はあります。今のAIオペレーション推進の仕事にも、だからこそ繋がっているのだと実感しました。ただ『オンライン会議は音だけ参加が理想』という部分はちょっと違うかなと思いました(笑)。私、オンライン会議は結構顔出し派なので」

なんとなくやってみて楽しんで、それで自分がAIとどのように付き合っていくのか考えるきっかけになれば、WAIJ國本氏もそう語り、アプリをPRしました。
今回の発表会を通じ、AIは女性の働き方を奪う存在ではなく、新しいキャリアや生き方を拓くチャンスであることが示されました。
國本氏は最後にこう締めくくりました。
「AI時代を不安ではなく希望に変えていくために、女性が安心して学び、挑戦できる環境をつくりたい」
Women AI Initiative Japanの活動は、これからの社会において女性の力をさらに引き出す原動力となりそうです。
ご紹介した「わたしのAIライフスタイル診断」、なんと本日のリリースから1カ月間限定でAIシンゴさんのナビゲートで楽しむことができます。ぜひ試してみてください。ご自身のAI生活のヒントになるかもしれません。
