公益財団法人博報堂教育財団の調査研究機関である「こども研究所」は、全国の小学4年生~中学3年生を対象に、「生成AI」に関する意識調査を実施。その結果、小中学生の多くが生成AIに対して関心を持ち、勉強や創作活動への可能性を感じていることがわかりました。
生成AIを知っている子どもは約8割、使ったことがあるのは約4割

生成AIを「知っていて、どんなことができるかわかる」「知っていたが、どんなことができるかわからない」を合わせた認知率は約8割でした。「よく使っている」「たまに使っている」「使ったことはあるが、今は使っていない」を合わせた使用経験率は全体の約4割でした。また、「今後も生成AIを使うと思う」と回答したのは約6割。特に小学生よりも中学生の認知率や使用経験率が高く、使用意向も小学生をわずかに上回りました。
生成AIに対するイメージ「楽しい」「味方」が多数派

生成AIを知っている子どもに生成AIの印象を聞いたところ、「楽しい(80.1%)」、「味方だと思う(73.2%)」と、多くの子どもたちがポジティブに受け止めている一方で、「優しい」「安心」「信用できる」といった項目は半数未満であり、4割近くが「どちらとも言えない/わからない」と回答していることから、まだ生成AIの安全性や信頼性については判断ができない様子がうかがえます。
生成AIによって「勉強のしかたが変わる」と感じている子どもは半数以上!「好きなことに詳しくなれる」期待が多数

生成AIがあることで「勉強のしかたが変わる」と答えたのは55.7%でした。その理由には、「すぐに答えが出る」「時短できる」「辞書や塾、学校がいらなくなる」など、効率化や学習環境の変化に対する声が多く寄せられました。一方で、「自分で考えなくなる」「頼りすぎてしまう」などの懸念もあり、期待と不安が入り混じった現状が浮き彫りに。「変わらないと思う(16.6%)」の理由としては、「結局は自分で理解しないといけない」「AIが正しいか判断するには、自分の勉強が必要」といった、自律的な意見も見られました。

また、生成AIの使用によって期待する効果を聞いたところ、トップ3は「好きなこと・興味のあることに詳しくなりそう(68.0%)」「新しいことを体験できそう(63.2%)」「デジタルやコンピューターに詳しくなれそう(60.6%)」だった。続いて、「創作活動でよりよいものが作れそう(58.9%)」「宿題が楽になりそう(54.8%)」という結果となり、勉強サポート以上に、探究心や創作活動を広げるツールとしての期待が高いことがわかりました。
今年の夏休みの宿題で生成AIを「使った/使う予定」の子どもは3割

調査時期が夏休みだったこともあり、「宿題に生成AIを使ったか(使う予定か)」も質問。その結果、「使った/使う予定」と回答したのは全体の3割でした。中学生の36.1%が「使った/使う予定」と回答。小学生は半数以上が「使わない予定」でした。学年が上がるにつれて、活用機会が増えている様子が見られました。
使用目的は「調べもの」が最多。中学生は文章生成にも活用

生成AIの主な使用目的は、「わからないことを調べる(70.8%)」が最多。また、中学生では、「文章を作ってもらう(28.1%)」「文章のアイデアを出してもらう(23.7%)」といった活用が、小学生より高い割合を示しました。

さらに女子の方が、雑談や相談、イラスト制作など、検索以外の使い方でも活用する傾向が見られました。
利用上の注意点、まだ十分に浸透せず

生成AIを知っている子どもに、生成AIを使う時に気を付けることを挙げ、知っている項目を聞いたところ、「名前や住所を入力しない」の認知率が最も高く35.8%でした。生成AI使用経験者でも全項目で認知率は5割未満という結果に。生成AIの使い方は広がりつつありますが、安全性やリテラシー教育の強化が今後の課題といえそうです。
「子どもと生成AI」調査概要
調査手法:インターネット調査
調査エリア:全国
調査対象者:小学4年生~中学3年生(保護者の承諾を得て実施)
有効回答数:1,200人

調査実施日:2025年8月8日(金)
企画・分析:公益財団法人 博報堂教育財団 こども研究所
実施・集計:QO株式会社
調査パネル:株式会社マクロミル
※回答前には「生成AI」について以下のような説明を提示:
「生成AIとは、たくさんの文章や絵、写真、音楽などを学んだコンピューターが、新しいアイデアや答えを作り出してくれるしくみです。質問に答えたり、作文や絵をつくったり、知らないことを説明してくれたりします。まるで人と会話しているような自然な話し方もできます。生成AIの代表的なサービスには、ChatGPT、Geminiなどがあります。」
今回の調査からは、生成AIが小中学生にも浸透しつつあること、そして子どもたちは生成AIを単なる勉強の補助ではなく、探究・創作・学びの可能性を広げるツールとして見ていることがわかりました。しかしその一方で、安全性や使い方への理解不足という課題が見えてきました。子どもたちが安心してAI活用するために、正しい使い方やルールを学ぶことがこれからますます大切になっていくでしょう。テクノロジーを味方につけて、より豊かな学びへとつなげていきたいものです。