ファッションブランドが自らの世界観を表現する場として「期間限定ストア」を開設する取り組みは、もはや一時的なイベントを超え、文化的な発信の一形態として定着している。新作アイテムの販売にとどまらず、来場者にブランドの哲学を空間として体感させる試みは、SNS時代のマーケティングにおいて欠かせない手法となりつつある。そうした流れの中で、レディースブランド「SNIDEL(スナイデル)」が東京・青山に新たな期間限定ストア「SNIDEL TOKYO AOYAMA」をオープンさせた。
2025年に創業20周年を迎えたSNIDELが掲げたコンセプトは「LUCKY」。スロットマシンやサイコロといった幸運を象徴するモチーフを散りばめた空間は、日常の延長線上にありながら非日常的な高揚感を呼び起こす仕掛けに満ちている。プレオープンには紗栄子、ヨンア、久間田琳加、藤井サチら多彩なゲストが登場し、それぞれが店内での体験や“開運エピソード”を語ることで会場を一層盛り上げた。さらに、SNIDELとして初めて展開する「LIMITED CAFE」ではオリジナルドーナツやカラフルなドリンクが用意され、アパレルの枠を超えて「味わう」体験を提供している。限定アイテムやカプセルトイなども揃え、訪れる人々にブランドの遊び心を体感させるこの空間は、単なる買い物の場ではなく、ブランドと消費者を結ぶ新しい接点として位置づけられている。
“LUCKY”をテーマに彩られた遊び心あふれる空間

今回オープンした「SNIDEL TOKYO AOYAMA」は、2025年8月21日から12月末までの期間限定で展開される。舞台となるのは東京・青山、感度の高い人々が集まるエリアだ。ブランドの創業20周年を記念して企画されたこのストアは、「LUCKY」をテーマに据え、来場者に特別な体験を提供する場として設計されている。

空間デザインには、スロットマシンやサイコロなど幸運を連想させるモチーフが各所に散りばめられ、訪れた瞬間から遊び心に満ちた雰囲気を味わえる。また、レッドを基調にした華やかなフロアには、来場者が自然とカメラを向けたくなるフォトスポットが設けられており、視覚的な楽しさも追求されているのが特徴だ。

さらに、SNIDELとして初めて導入された「LIMITED CAFE」では、ドーナツブランド「HOCUSPOCUS」とコラボしたオリジナルスイーツやカラフルなドリンクが提供され、衣服だけでなく“味わう”体験を通じてもブランドの世界観を伝えている。加えて、青山店限定のアイテムや、SNIDELオリジナルのカプセルトイといった来場者参加型の仕掛けも用意され、訪れる人に繰り返し足を運ぶ動機を与えている。単なる販売の場ではなく、ブランドと消費者をつなぐ体験型の拠点として構築されたこのストアは、SNIDELの20周年を象徴する新たな挑戦であるといえる。
豪華ゲストが祝福、華やかに彩られたプレオープン

プレオープンイベントには、多くの著名人が姿を見せ、華やかな雰囲気を演出した。タレントでありモデルの紗栄子は、「20周年おめでとうございます」と祝福の言葉を寄せ、青山の店舗を「ポップでかわいらしい」と表現。ファッションだけでなく、ビューティーやカフェまで幅広く楽しめる空間に驚きを示した。
モデルで俳優の久間田琳加も、店内を「ひとつのテーマパークのよう」と語り、ブランドの掲げる「LUCKY」というコンセプトに自身の“開運ルール”を重ね合わせたコメントを披露した。こうした発言は、イベントが単なる商品紹介の場にとどまらず、来場者が自身の体験や価値観を重ね合わせる場となっていることを示している。
そのほか、モデルのミチは「抹茶いちごミルクが美味しかった」と笑顔を見せ、友人と訪れたひまわり畑での偶然の体験を「ラッキーな出来事」と語った。小さなエピソードを通じて会場全体に共有されたのは、“幸運”をテーマにした空間にふさわしい軽やかで前向きな空気感だったといえる。
会場には藤井サチやヨンア、島崎遥香、八木アリサ、高橋愛らも訪れ、それぞれがブランドと関わる中で自分らしい視点を示した。ゲストたちの言葉や仕草は、SNIDELが提示する「LUCKY」というコンセプトを多面的に映し出し、会場の雰囲気をより一層華やかにしていた。来場者にとっても、その存在はイベント全体を盛り上げる大きな要素となっていた。
多彩な体験が広がる空間設計

会場はフロアごとに異なる世界観を楽しめるように工夫されていた。1階が鮮やかなレッドを基調とした華やかで遊び心あふれる雰囲気であるのに対し、2階に設けられた「SNIDEL HOME」や「SNIDEL BEAUTY」のエリアは、パープルを基調にしたリラクシーな空間となっている。上下で大きく印象を変える設計は、訪れる人に新鮮な発見を与える仕掛けである。

また、ブランド初となる「SNIDEL CAFE」では、オリジナルドーナツやドリンクの提供に加え、SNIDELのコンセプトである“ストリートフォーマル”を意識したコーディネートを提案。甘さを抑えたエッジィな雰囲気のアイテムは、これまでのイメージとは異なる新たな側面を示していた。

さらに注目されるのが、ここでしか体験できないオリジナルのカプセルトイだ。1回990円で挑戦できるこのコンテンツは、狙ったアイテムが出ても出なくても楽しめる仕組みになっており、中身は時期ごとに変化するため何度でも訪れたくなる要素を備えている。
このように、「SNIDEL TOKYO AOYAMA」は買い物の場を超え、リラックスと遊び心を同時に味わえる空間として構築されていた。ブランドの世界観を多面的に体験できることこそ、この限定ストアの大きな魅力といえる。
文化としてのファッションを提示したSNIDELの20周年
SNIDELが青山にオープンさせた期間限定ストアは、20周年という節目を祝う場であると同時に、ブランドが今後進む方向性を示す舞台でもあった。豪華ゲストによる注目度の高さに加え、ファッション、ビューティー、フードを融合させた空間設計は、従来のアパレル店舗を超えた体験を提供している。そこには「LUCKY」というコンセプトを通じて、消費者とポジティブな感情を共有しようとする姿勢が表れていた。また、期間限定という形式は、常設店舗にはない鮮度と希少性を生み出し、「今しか体験できない」という特別感を来場者に与える。こうした試みは購買行動の動機となり、今後の新たな展開にもつながるだろう。
SNS時代において体験そのものが価値を持つ今、SNIDELが提示した「体験の拡張」は、ブランド戦略の次のスタンダードを示す取り組みといえる。今回のストアは、20年を経て培ったブランド価値を再解釈し、次の世代へと受け継ぐための試金石となった。SNIDELの20周年は、未来へ踏み出す大きな一歩である。