進路を考える高校生にとって、大学での学びは興味があっても、授業の中身までは想像しにくいものだ。パンフレットや説明会だけでは伝わりにくい専門分野の考え方も、身近な体験を通すことで少し近く感じられることがある。とくにゲームやメタバース空間に慣れた世代にとって、画面の中で動きながら学びを試せる仕組みは、大学を知る入口のひとつになりそうである。学部名や科目名からだけでは見えにくい学びの手触りを、遊びの延長で確かめられる点にも関心が集まりそうだ。
武蔵野大学は、世界的なオンラインゲーム「フォートナイト(Fortnite)」のプラットフォームを活用した学修コンテンツに、新たに2種類の模擬授業コンテンツを追加し、2026年7月9日に公開した。今回加わったのは、データサイエンス学科とフィールド・スタディーズをテーマにした内容である。
「日本初」から広がる模擬授業コンテンツ
武蔵野大学では、大学で扱う専門的な学びをゲームとして再構築し、中高生が楽しみながら大学の学びに触れられる機会づくりを進めている。この企画は、同大学の卒業生で、株式会社日本でいちばん遊んでる会社の代表取締役である宮崎雄基さんとの共同でスタート。2024年3月には経営学科のコンテンツを公開しており、今回はそこに「データサイエンス」と「地域探究」という2つの新しいテーマが加わった形である。
ゲームという日常に近いツールを使うことで、中高生が「大学での学びは面白い」「もっと知りたい」と感じられる接点をつくる狙いがある。専門分野を難しい言葉だけで説明するのではなく、体験の中で理解していく構成が特徴だ。
失敗を重ねて学ぶ「強化学習」の感覚

データサイエンス学科のコンテンツでは、フォートナイト上に再現された「武蔵野大学 有明キャンパス」を舞台に、参加者が制限時間内に卒業論文提出場所を目指す。プレイヤーは移動しながら瞬時にルートを選び、その探索結果をデータとして蓄積していく。ここで大切にされているのは、1回で正解を出すことではない。何度も失敗しながら最適なルートを考え、行動を修正していくプロセスそのものが、AIが精度を高めていく仕組みである「強化学習」と重ねられている。遊びながら進むうちに、データを集め、結果をもとに合理的な意思決定を行う流れを体験できる点が印象的である。データサイエンスという言葉に少し距離を感じる人でも、ゲーム内の選択や試行錯誤を通じて、その基礎にある考え方をつかみやすくなりそうだ。
深川の街を巡る地域探究の導入体験

もうひとつのコンテンツは、武蔵野大学の必修科目「フィールド・スタディーズ」を題材にしている点だ。薬学部を除く学生が履修する科目で、今回は実際にある「深川まつり」体験の授業がモチーフになっている。参加者は、フォートナイト内に再現された深川・清澄白河の街並みを巡る。実在する店舗の女将さんなど、地域の住民へのヒアリングを行いながら、深川まつりに必要な4つのアイテムと街の知識を集めていく流れだ。その後、大学へ戻って教員から出されるクイズに全問正解するとミッションクリアとなる。自分で歩き、話を聞き、情報を整理し、知識としてまとめる一連の流れを通じて、フィールド・スタディーズの導入部分を体験できる構成である。地域を知る学びが、ゲーム上の探索として表現されているところに親しみやすさがある。
専門分野を「動きながら知る」学び方
今回の2つのコンテンツは、参加者が自分で選び、動き、集めた情報をもとに次の行動を決めていく点が共通している。データサイエンスではルート探索の試行錯誤が、フィールド・スタディーズでは街を巡る聞き取りや整理が、大学での学びにつながる体験として設計されている。
高校生にとって、大学の専門分野は名前だけでは実感しにくいこともある。フォートナイトを使った模擬授業は、専門用語や授業名だけでは見えにくい内容を、キャンパスを走り、街を巡り、課題に向き合う体験として示す試みである。ゲーム内の体験が授業のすべてになるわけではないが、最初の関心を生むきっかけとしては親しみやすい。進路を考える高校生にとって、大学の学びを知る道筋が少し多様になる取り組みだ。
