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日比谷花壇と武庫川女子大学が向き合った 人とお花の新しい距離感

花は、誰かに贈る特別なもの。そんなイメージを持っている人は、少なくないはずです。けれど最近は、「自分のために花を選ぶ」「気分を整えるために花を飾る」といった、少し違う距離感で花と向き合う人も増えてきました。 今回紹介する...
ナイスコレクション 2026年1月29日

花は、誰かに贈る特別なもの。
そんなイメージを持っている人は、少なくないはずです。けれど最近は、「自分のために花を選ぶ」「気分を整えるために花を飾る」といった、少し違う距離感で花と向き合う人も増えてきました。

今回紹介するのは、そうした変化を象徴するような取り組みです。老舗のフラワーカンパニーである日比谷花壇と、武庫川女子大学の学生たちが一緒になり、「推し活」や「癒やし」といった、今の若い世代にとって身近なテーマを、花という存在と重ね合わせました。

イベントそのものが目新しいというよりも、注目したいのは、なぜこの形にたどり着いたのかという背景です。花を通して、どんな時間を届けたいのか。どんな気持ちに寄り添おうとしているのか。その考え方に触れていくと、この企画の見え方は少し変わってきます。

なぜ日比谷花壇は学生と一緒に企画をつくるのか

日比谷花壇と武庫川女子大学による産学連携は、今回が初めてではありません。これまでも、学生と共に商品や企画を考える取り組みが行われてきましたが、今回のプロジェクトでは、より「考える時間」に重きが置かれている点が特徴的です。

お花屋さんの仕事というと、完成された商品をいかに美しく届けるかに目が向きがちですが、日比谷花壇が学生と向き合う中で重視しているのは、その一歩手前にある問いです。なぜ今、お花なのか。なぜこの形なのか。そうした問いを、答えありきではなく、学生自身の言葉で考えてもらうことが、この連携の軸になっています。

背景には、お花が「特別な日のもの」という印象を持たれやすい現状があります。贈り物や記念日の定番として親しまれてきた一方で、日常の中で自分のためにお花を選ぶきっかけが見つけにくいと感じる人も少なくありません。特に若い世代にとっては、「お花は好きだけれど、どんな場面で取り入れればいいのかわからない」という声も聞かれます。

だからこそ、企業側が一方的に正解を示すのではなく、学生と同じ目線に立ち、感性や違和感を共有しながら企画を育てていく。その姿勢こそが、日比谷花壇が産学連携を続けてきた理由の一つだと感じられます。学生の自由な発想と、花のプロとしての経験が交わることで、これまでになかった視点が生まれていきます。

このプロジェクトは、学生にとっての学びの場であると同時に、日比谷花壇にとっても、お花と人との関係を見つめ直す機会になっているようです。次の世代と向き合うことで、花の価値を改めて問い直す。その積み重ねが、今回の企画の土台になっています。

Z世代の感性から生まれた「HANA ROOM」という考え方

今回の企画で軸となっているのが、「HANA ROOM」というコンセプトです。これは、花を特別な贈り物として扱うのではなく、自分のための時間や空間にそっと取り入れる、という発想から生まれています。その背景には、学生たち自身の等身大の感覚がありました。

学生たちは、花に興味がないわけではありません。ただ、日常の中で花を買う理由が見つからず、結果として距離ができてしまっている。そんな正直な気持ちを出発点に、では自分たちが「欲しい」と思える花の形とは何かを考え続けました。そこで浮かび上がってきたのが、「推し活」や「癒やし」といった、日々の暮らしに密着したテーマです。

誰かに贈るためではなく、自分の好きなものを大切にする時間。忙しい日常の中で、少しだけ立ち止まり、自分の気持ちに目を向ける瞬間。学生たちは、そうした感覚とお花を自然につなげる方法を探っていきました。「HANA ROOM」という名前には、お花を飾る場所という意味だけでなく、自分のための居場所や時間そのものを表したいという想いが込められています。

興味深いのは、企画の中で「売れるかどうか」よりも、「届けたいかどうか」が何度も問い直されている点です。ビジネスとして成立させることは前提にしながらも、まず自分たちが納得できる形であること。その姿勢が、商品や空間づくりの随所に表れています。

こうした学生の感性に、日比谷花壇が持つ花の知識や経験が重なり合うことで、単なる若者向け企画では終わらない奥行きが生まれています。「HANA ROOM」は、Z世代の視点を起点にしながらも、世代を問わず共感できる考え方へと広がっていく可能性を感じさせます。

想いを体験として届ける、2日間のポップアップショップ

こうして形になった考え方が、2日間限定のポップアップショップとして展開されます。会場となるのは、兵庫県西宮市の商業施設・ららぽーと甲子園です。期間は1月末の週末、買い物や外出の流れの中で、ふと立ち寄れる場所に設けられます。

このショップの特徴は、完成された世界観を一方的に見せる場ではないことです。企画に関わった学生たち自身が店頭に立ち、来場者と会話をしながら商品を紹介します。なぜこの形にしたのか、どんな気持ちで考えたのか。そうした背景も含めて伝えることが、この場の大切な役割になっています。

並ぶ商品も、いわゆる「花を買う」体験とは少し違います。ぬいぐるみと組み合わせて楽しむものや、写真やカードを彩るアイテム、花とお茶をセットにしたリラックス時間の提案など、どれも日常の延長線上に置かれています。花そのものを主役にするというより、そっと寄り添う時間をどうつくるかに軸が置かれている印象です。

また、一部では自分で選び、組み合わせる体験型の要素も用意されています。買って終わりではなく、選ぶ時間や作る時間も含めて「自分のためのひととき」として楽しんでもらう。その考え方が、ショップ全体の設計に反映されています。 イベントとして見れば短い2日間ですが、その中には、学生たちが積み重ねてきた思考や対話の時間が凝縮されています。目に見えるのは商品や空間ですが、本当に届けたいのは、その奥にある時間の過ごし方なのかもしれません。

花を通して、次の世代と社会をつなぐということ

今回の取り組みを見ていくと、単に若者向けの商品を開発した、という話ではないことが分かります。花をどう売るかではなく、花がどんな場面で、どんな気持ちに寄り添えるのか。その問いに、学生と企業が同じ目線で向き合ったプロセスそのものが、この企画の価値なのだと感じます。

学生たちは、自分たちの感覚を言葉にし、形にする経験を積みました。一方で、日比谷花壇は、その感性を一過性のアイデアとして扱うのではなく、花のプロとして培ってきた知見を重ねながら、実際の場に落とし込んでいます。そこには、次の世代と一緒に未来を考えようとする姿勢が、静かに表れています。

2日間という限られた時間で行われるポップアップショップですが、その背景には、長い対話と試行錯誤があります。花を通じて届けたいのは、商品そのものよりも、「自分のために立ち止まる時間」や「好きなものを大切にする感覚」なのかもしれません。

暮らしの中で花とどう付き合うか。その答えは一つではありません。ただ、こうした取り組みがあることで、花との距離が少し縮まる人がいるとしたら、それは確かな変化だと言えそうです。


株式会社日比谷花壇 概要

1872年創業のフラワーカンパニーです。全国に多数の拠点を持ち、店舗やオンラインショップでのフラワーギフト販売をはじめ、ウエディング装花、空間装飾、地域づくり事業など、花と緑を通じた多様な取り組みを行っています。
近年は、暮らしや社会と花をどう結びつけるかという視点から、新しい価値提案にも力を入れています。

公式サイト:https://hibiya.co.jp/

武庫川女子大学 概要

兵庫県西宮市にある女子総合大学です。13学部21学科を擁し、学生数は約1万人と、日本最大規模の女子大学として知られています。
経営学部では、企業や地域と連携した実践的な学びを重視しており、社会とつながる経験を通じて、学生の主体性や総合力を育む教育が行われています。

公式サイト:https://www.mukogawa-u.ac.jp/

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