福井県坂井市で、ちょっと未来を感じる取り組みが始まっています。
市街地を走るのは、ハンドルを握らなくても進む「自動運転車」です。
地域の人たちが気軽に乗れるようにと運行されているこの車は「イータクプラス」と呼ばれ、市役所春江支所から春江病院までの約2.5キロを、静かに、そして確実に走っています。
この実証運行は、日々の移動をもっと便利に、そして将来的には“運転手がいなくても走る”社会を見すえたものです。
車両には多くのカメラが取り付けられ、歩行者や他の車の動きを見守りながら安全に走行します。
市民がスマートフォンのアプリで予約をして乗車できる仕組みで、市外の人でも登録すれば体験が可能です。
初めて乗る人の中には「ちょっと怖いかも」と感じる方もいるようですが、実際に乗ってみると「想像よりずっと自然」「まるで人が運転しているみたい」と安心する声が多く聞かれます。
福井のまちを静かに走る自動運転のバン。その車内では、これからの“まちの足”が少しずつ形になりつつあります。
市民が体験する新しい移動のかたち

福井県坂井市では、10月末から11月29日までの約1か月間、自動運転車「イータクプラス」を使った社会実証が行われています。
春江支所から春江病院までの約2.5キロの区間に7つの停留所を設け、平日のみならず土曜日も運行。市民が日常の延長として体験できるよう、開かれた形で実施されています。
この取り組みの目的は、運転手不足が深刻化する地域の公共交通を支える新しい手段を探ることにあります。
また、今後の「完全自動運転」時代に向け、どのような課題があるのか、どの程度市民に受け入れられるのかを検証する意味も込められています。
試乗の方法もとてもシンプルです。
スマートフォンのアプリ「イータク」から希望の時間を選んで予約するだけで、坂井市民以外でも登録すれば誰でも体験することができます。
まちを走る小さなバン型の車両は、春江エリアの交通量の多い通りを静かに進み、未来の移動のかたちを少しずつ描き出しています。
静かに走る自動運転バンの車内では

運行初日、春江支所の停留所にはブルーのマークが掲げられ、出発の時を静かに待つ車両の姿がありました。
定刻になると、バン型の「イータクプラス」が滑るように到着。乗り込むと、運転席のすぐ後ろにモニターが設置され、車の周囲の様子が映し出されています。

出発時はまず手動運転でスタートし、道路状況を見ながら自動運転に切り替わります。
切り替えの瞬間はモニターに表示が出て、歩行者や自転車は赤い印で検知される仕組みです。
ハンドルに軽く手を添えるだけの運転手の姿に、同乗者からは「本当に自動で動いているんですね」と驚きの声も。

春江支所から春江病院までは、全部で7つの停留所があります。
あらかじめアプリで降車予約ができるため、好きなタイミングで乗り降り可能です。
交通量の多い目抜き通りやカーブの区間では、状況に応じて一時的に手動運転に切り替えることもあり、安全を最優先にした走行が続きます。

車内には静かなエンジン音と、モニターに映し出される周辺映像があります。
まるで人の手で操られているかのようにスムーズな走行に、乗車した市職員も「安心感がありました」と話します。
安心を支える技術と人の連携

イータクプラスの車体をよく見ると、上部や前後、両側面などに小さなカメラがいくつも設置されています。
その数は全部で18台。360度の視野で周囲の歩行者や車、自転車の動きをとらえ、安全な走行をサポートしています。
今回の自動運転は、完全無人ではなく「レベル2」と呼ばれる“部分的な自動運転”にあたります。
ハンドルを握るのは地元・ケイカン交通の運転手。基本的な走行は自動で行われますが、交通状況や急な動きがあるときには、すぐに手動に切り替えられる仕組みです。
こうした「技術」と「人」の協力によって、安心して乗れる運行が実現しています。
乗客にとっては「機械に任せすぎない安心感」ない安心感”があり、初めて体験する人でも自然に受け入れられるよう配慮されています。
市民が感じた“未来の足”への期待

試乗を終えた人たちからは、「思っていたよりずっとスムーズ」「人が運転しているみたい」「怖くなかった」といった声が多く聞かれています。
最初は不安を感じていた人も、実際に乗ってみると安心感が強く、「次は完全自動の走行も体験してみたい」という前向きな意見も寄せられています。
坂井市では、こうした市民の声をもとに、今後の運行データやコスト、安全面などを検証していく予定です。
人手不足が課題となる地域の交通をどう守り、持続的に維持していくか――。
今回の「イータクプラス」の社会実証は、その解決策の一歩として注目されています。
未来の交通は、いつの間にか私たちの暮らしのすぐそばまで来ています。
ハンドルを握らずに進む車が、地域のまちを静かに走る――。
それは、坂井市が描く“人と技術がともに進むまちづくり”の確かな一歩です。
