今や日本でもキャッシュレス決済は急速に普及し、コンビニやチェーン店ではスマートフォンひとつで支払いが完了する光景が当たり前になった。利便性やスピードに加え、現金を持ち歩かなくても安心して買い物ができる点は、多くの消費者にとって欠かせない要素となりつつある。しかし、地域の小規模店舗や個人経営の飲食店では、依然として「現金のみ対応」が少なくない。導入コストや手数料を懸念する事業者の事情もあるが、消費者からは不便さや時代遅れといった印象を与えかねない。支払い手段が限られているために購入を諦めた経験を持つ人も多く、キャッシュレス慣れした層が増えるほど、店舗にとっての機会損失は大きくなる。では、実際にどの程度の影響があるのだろうか。そこで今回、StorePro(https://store.cloudil.jp/)は20代〜60代で日常的にキャッシュレス決済を利用している方を対象に、キャッシュレス決済非対応の店舗がまねく機会損失の実態調査を実施した。
消費者が選ぶ決済手段とその理由

調査によると、日常的に最も利用されているのは「QRコード決済」で76.4%、次いで「クレジットカード」が74.5%と、両者が主要な手段となっている。これに比べて、交通系電子マネーは30.4%、プリペイド型電子マネーは18.8%にとどまり、スマートフォンのタッチ決済(15.8%)やデビットカード(7.8%)は限定的な利用にとどまる結果となった。また、キャッシュレスを利用する理由としては、「ポイントが貯まりお得だから」(71.5%)、「会計がスムーズだから」(68.7%)が突出して多く、利便性と経済的メリットが主な動機となっている。「財布を持ち歩く必要がない」(32.4%)や「現金不足でも使える」(29.7%)といった回答もあり、日常生活の自由度を高める存在としても評価されている。こうした背景から、キャッシュレス非対応の店舗は消費者に敬遠されるリスクを抱えているといえる。

年代別にみると、20〜40代は「QRコード決済」の利用率が約8割と高く、生活に深く浸透している。一方、60代では68.0%にとどまり、その代わりに「クレジットカード」が79.2%と最も多く使われていた。若年層はスマホ決済に慣れているのに対し、高齢層は従来から馴染みのあるカード決済を好む傾向が強い。また、プリペイド型電子マネーは50〜60代で特に利用率が高く、世代ごとに支持する手段の違いが浮き彫りとなった。
非対応店舗で生じる「購買断念」という現実

調査では、キャッシュレス決済が使えないために購入を諦めた経験があるかを尋ねたところ、「はい」と答えた人は45.9%にのぼった。つまり、約2人に1人が「欲しい商品やサービスがあっても、支払い手段が限られていたために購入できなかった」経験を持つことになる。店舗にとっては、これは確実に売上機会の損失であり、消費者にとっても不便さを感じる場面だといえる。
さらに注目すべきは、購入を諦めたことのある人のうち、93.9%が「キャッシュレス決済が導入されたら、その店舗を再び利用したい」と回答している点である。裏を返せば、非対応で一度は失われた顧客も、環境を整えれば再び戻ってくる可能性が高いということだ。キャッシュレス対応は単なる利便性の問題にとどまらず、店舗の信頼回復や顧客維持に直結する施策であることが浮き彫りになった。
非対応店舗に抱く印象と利用しにくい業種

キャッシュレス決済が利用できないと分かったときの印象については、「不便・面倒だと感じる」が49.6%で最も多く、約半数の消費者がマイナスの印象を持つことが明らかになった。「対応が遅れていると感じる」(28.7%)や「時代遅れだと感じる」(14.5%)といった回答も目立ち、非対応であることが店舗のイメージダウンにつながるリスクは小さくない。一方で「特に気にしない」とする回答も30.8%あり、必ずしも全員が不満を抱くわけではない点も興味深い。また、キャッシュレス決済が利用できないサービスとしては、「小規模飲食店」(41.2%)、「医療機関」(39.2%)が上位に挙げられた。個人経営の小売店(23.5%)、美容関連サービス(21.0%)、自動販売機(16.4%)なども続き、日常生活で頻繁に利用する場面で非対応が目立っている。こうした業種は導入コストやシステム整備の負担が大きいと考えられるが、消費者の不便さを軽減するためにも対応の加速が求められている。
新規店舗選びと来店頻度に与える影響

調査結果によると、新しく利用する店舗を選ぶ際に「キャッシュレス決済対応を重視する」と答えた人は65.5%に達した。「とても重視する」が16.5%、「やや重視する」が49.0%となっており、多くの消費者が支払い方法を店舗選びの基準のひとつにしていることが分かる。一方で「あまり重視しない」(27.3%)や「まったく重視しない」(7.2%)と答えた人もおり、全員にとって絶対条件ではないにせよ、多数派が重要視している現状は無視できない。
さらに、キャッシュレス対応店舗で「ポイント還元」や「キャッシュバック」がある場合の利用頻度については、「大幅に上がる」(31.5%)、「やや上がる」(51.7%)と、合わせて8割以上が来店回数増加を見込んでいる。消費者にとって決済手段の充実は利便性だけでなく、お得さの実感にも直結し、店舗にとっては顧客を惹きつける強力な要因となっていることがうかがえる。
消費者が実感するキャッシュレスの利便性

キャッシュレス決済を利用して「良かった」「便利だ」と感じる場面については、「ポイントが貯まったとき」が75.9%で突出しており、経済的なお得感が最大の魅力となっている。次いで「支払いがスムーズに終わったとき」(49.8%)、「現金の持ち合わせがなくても支払いができたとき」(38.1%)が続き、決済のスピードや安心感も高く評価されていることが分かる。
さらに「お得なキャンペーンに参加できたとき」(35.5%)や「小銭を出す手間が省けたとき」(32.8%)といった回答もあり、日常の細かな利便性が積み重なることで満足度が高まっている様子がうかがえる。「レジでの待ち時間が短縮されたとき」(23.5%)も評価されており、店舗にとっても回転率の向上や業務効率化につながる可能性がある。消費者にとってキャッシュレスは単なる支払い方法ではなく、「お得さ」と「快適さ」を両立させる仕組みとして定着しつつあることが浮き彫りになった。
調査概要:キャッシュレス決済非対応の店舗がまねく機会損失の実態調査
【調査期間】2025年8月13日(水)~2025年8月15日(金)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】1,000人
【調査対象】調査回答時に20代〜60代で日常的にキャッシュレス決済を利用していると回答したモニター
【調査元】StorePro(https://store.cloudil.jp/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
キャッシュレスは消費者と店舗をつなぐ新たな基準
今回の調査結果から明らかになったのは、キャッシュレス決済が消費者の購買行動や店舗選びに大きな影響を与えているという事実である。利用者は「ポイント」や「スムーズな支払い」といったメリットを強く求めており、非対応の店舗は購買機会を逃すだけでなく、「不便」「時代遅れ」といった印象を持たれるリスクすら抱えている。だが同時に、対応を進めれば再び利用したいと考える消費者が9割を超えていることも示された。つまり、キャッシュレス非対応によって一度は失われた信頼や顧客も、導入次第で取り戻せる可能性が高いのだ。
キャッシュレスはもはや単なる「便利な選択肢」ではなく、店舗経営における基本条件のひとつとなりつつある。消費者が当たり前のように利用し、利便性とお得さを期待する中で、導入をためらうことは機会損失に直結する。今後、地域や業種を問わず広がる対応の流れが、店舗の競争力を左右する決定的な要因になるだろう。