イタリア・ミラノで毎年行われる「フォーリサローネ」と世界観を共有する都市型デザインイベント「OSAKA FUORI SALONE 2025(オオサカ フォーリサローネ2025)」が、9月10日から16日まで大阪市内で開催。開幕初日にはメイン会場の高島屋大阪店でオープニングセレモニーが行われ、展示ディレクターを務める建築家の永山裕子らが登壇した。関西のクリエイターらが持つ、ものづくりとデザインの力を広く発信する本イベント。ここではセレモニーの様子とともに、その見どころの一部をお伝えしていこう。
『陶酔するライフスタイル』をテーマに、関西が持つ“デザインの力”が集結
大阪・関西万博も終盤に差しかかり、ますます活況を見せている大阪市。世界中から文物が集まる万博でもイタリア館は屈指の人気パビリオンになっているが、そのイタリアにまつわるイベントが同じ大阪で産声を上げた。

デザインの街、イタリア・ミラノ市と大阪市が姉妹都市という縁もあって実現した「OSAKA FUORI SALONE 2025」は、世界最大規模の家具見本市・ミラノサローネと同時期にミラノ市内で開催されているデザインの祭典「フォーリサローネ」をオマージュしたイベントだ。初開催の今回は来年以降の定期開催に道筋を付ける“第0回”という位置付けで、『陶酔するライフスタイル』のテーマのもと、建築・家具など、関西に拠点を持つ企業やクリエイターらが手がけるアート性の高い暮らしを潤すモノやコトが紹介されている。
デザインの力を交えて日本の伝統がモダンに進化
複数の会場をつなぎ、街を回遊しながら関西のものづくりを知れる催しになっているところが本イベントのポイントのひとつ。そのうちメイン会場の高島屋大阪店7階のメイン会場では、6社のものづくり企業による展示を見ることができる。
例えば、業務用家具の老舗企業である株式会社アダルはミラノサローネに出品されたサスティナブルブランド「Look into Nature(ルック・イントゥ・ネイチャー)」の製品を展示。生産農家が減りつつある国産い草を使ったデザイン性の高いチェアをヨーロッパ向けに販売し、消臭、調湿、リラックス効果といった素材特有の魅力を世界に発信しており、本会場では実際の商品を体験することができる。「あえて和風のデザインにせず、国際的に通用するモダンでシンプルなデザインを心がけています」と担当者が語る中でも、着物の羽織から着想を得たという畳の羽織が付いたチェアは、面白みあふれる必見のデザインだ。

一方で、レンジフードのトップメーカーである富士工業株式会社は自社の特殊金属加工スペシャリストチーム「Demold(ディモールド)」が手がけた金属パネルを展示。高い加工技術を武器に、“和と金属の融合”をコンセプトにして造られたプロダクトを見ることができる。彼らの製品は関西国際空港のラウンジや万博開催中の夢洲駅などに採用され、空間にラグジュアリーさを与える製品として注目されている。全体的にまばゆい展示空間の中でも、特に強いインパクトを放つのは、今回のために製作されたという“アルミの屏風”。金型で模様を付けた屏風は、まさに現地で実物を見てこそ凄みが実感できる品だ。

また、木製建具の老舗企業である中井産業株式会社は、自社ブランド「KITOTE(木と手)」の障子を展示している。日本家屋の美を構成する要素のひとつである障子だが、デザイナーとコラボして現代の建築空間に合わせて造られた同ブランドの障子には新しい美しさがある。そのほか、ワイヤーで吊るして設置する『AIR SHOJI』という製品も展示され、単なる空間の仕切りではなく、装飾の一部としても機能する障子の新しい可能性が感じられる。

なお、同じ高島屋館内の6階特設会場では期間中、ミラノのフォーリサローネでブースデザインを手がけたインテリアデザイナーのトークショーや、彫金作家が講師を務める錫の表札作りワークショップなど、さまざまな催しが予定されている。
世界的建築家・永山裕子ら初開催の立役者が熱い思いを語る
オープニングセレモニーには、本イベントの発起人である西岡利明氏(株式会社SANEI代表取締役社長)、立野純三氏(株式会社ユニオン代表取締役)と、展示ディレクターを務める建築家の永山裕子が登壇。
水回り製品のメーカーを営む西岡氏は「万博で世界中からたくさんの人が大阪に来られる際に我々も何かできないかと考えていたところ、ちょうどユニオンの立野社長から『ものづくりで大阪を盛り上げよう』とお声がけをいただいた」と冒頭の挨拶で述べ、大阪市とミラノ市の姉妹都市提携が来年で45周年を迎えることにもちなんで本イベントの企画が決まった経緯を説明。その上で「本場のフォーリサローネに見習って、大阪市がミラノのブレア地区のような形で盛り上がることを夢見ています」と、ついに開幕に至った喜びと期待を語った。

次に大阪市の横山英幸市長がビデオメッセージで祝辞を寄せ、「ミラノ市と繋がりを強めていく上で大阪市でも見本市を盛んにしていきたいと考えており、その中でこうしてミラノと連携したイベントが開催されるのは本当に素晴らしいことだと思います。OSAKA FUORI SALONE 2025の成功を願っております」とエールが贈られた。

その後、開幕のテープカットを経て行われたトークセッションでは、司会者から三者に開幕までの苦労や海外から見た大阪のデザインの強みなどを問う質問があり、「40年くらい前は大阪でたくさんの展示会が行われていて、大阪に来れば建築やインテリア、エクステリアの流行が分かった。今回の開催を契機にその流れを取り戻したい」(立野)、「展示と展示を巡る間に大阪という都市の勢いや雰囲気を感じながら、食も組み合わせた数々の体験を楽しんで欲しい」(永山)、「春はミラノ、秋は大阪と、世界の人たちがヨーロッパと日本を回遊する形が作れたら」(西岡)などとそれぞれコメント。

最後は永山が「ひとつひとつの展示を深く読み込んでいくとものづくりの魅力がどんどん見えてくると思います。私自身、ものづくりの現場を見るとデザインへのモチベーションが上がるので、例えば来場者の方が『実際の工場を見てみたい』と思ってくれるような入り口になってくれたら嬉しいです」と述べて全体を締めた。

都市型デザインイベント「OSAKA FUORI SALONE 2025」は、9月10日から9月16日まで開催。メイン会場である高島屋大阪店、および市内各地のサテライト会場の展示やステージプログラムの詳細については、下記の公式ホームページにてご確認を。国際的なデザインの発信地を標榜する野心あふれるイベントの幕開けをお見逃しなく。
■OSAKA FUORI SALONE 2025公式ホームページ
https://osakafuorisalone.com