日常の予定を家族や友人と簡単に共有できるアプリ「TimeTree」が、新しい成長のステージに入りました。利用者はすでに世界で6,700万人を超え、登録された予定は累計130億件以上。生活の中にしっかり根付いたサービスとして存在感を高めています。今回、そのTimeTreeが韓国の大手通信事業者であるSK Telecomから22億円の出資を受け、資本業務提携を結んだことが発表されました。
SK Telecomは通信だけでなく、AI分野への投資や独自のAIアシスタント開発を進めるなど、世界的なAI企業への転換を目指している会社です。TimeTreeにとっては、膨大な予定データとグローバルなユーザー基盤を強みに、AI機能の開発や海外展開を加速させる大きなチャンスとなります。
予定管理という身近なテーマに、AIやグローバル展開といった先端分野が交わる今回の提携。普段からアプリを使っている人にとっても、これから利用を検討する人にとっても、今後の進化に注目が集まります。
世界中で使われる予定共有アプリ「TimeTree」

「TimeTree」は、家族や友人、同僚など複数人で予定を共有できるカレンダーアプリです。2015年にサービスが始まり、いまでは日本国内で3,100万人、世界では6,700万人以上が利用しています。登録された予定は累計で130億件を超えており、日常生活に欠かせないツールとして多くの人に使われています。これほど大規模な予定データが集積しているサービスは珍しく、生活に直結した情報がこれだけ蓄積されている点自体が大きな特徴です。。
利用シーンは幅広く、家族で子どもの学校行事や送り迎えを共有する、友人同士で旅行や食事の予定を調整する、職場のチームで会議やシフトを把握するなど、多様なコミュニティで活用されています。単にスケジュールを確認するだけでなく、誰とどんな時間を過ごすかを共有できる点が、多くの利用者に支持されている理由のひとつです。
また、機能面でも進化を続けています。2024年からは、企業や団体がイベント情報をカレンダー形式で発信できる「公開カレンダー」機能を提供開始しました。これにより、エンターテインメントやスポーツの情報をフォローできるなど、個人利用にとどまらない新たな価値が広がっています。例えば、好きなアーティストのライブスケジュールや、地域のスポーツチームの試合日程を自分のカレンダーに簡単に組み込めるため、日常生活とイベント体験がシームレスにつながるのです。
こうした多面的な利用シーンと継続的な機能拡張が、TimeTreeを単なる予定管理アプリではなく、生活の一部として根付かせる原動力になっています。
成長を支える仕組み「TimeTree Ads」

利用者が増え続ける中で、TimeTreeは単なる予定共有アプリにとどまらず、独自の収益モデルを築いています。その柱となっているのが、ユーザーが登録する予定データを活用した広告配信プラットフォーム「TimeTree Ads」です。
予定という情報は、ほかのデータと比べても生活に密接しています。たとえば「旅行」「ライブ」「病院」など、カレンダーに入力される予定はユーザーがこれから行動しようとしている内容そのものです。そのため、関連する情報やサービスをタイミングよく届けることができ、一般的なウェブ広告やSNS広告よりも高い親和性が期待できます。
実際に「TimeTree Ads」では、イベントやサービスの情報をユーザーが自然に受け取れる仕組みが整えられています。ユーザーにとっても、自分の予定に関連する情報が届くことで利便性が高まり、企業や団体にとっても効率的にリーチできる場となっています。こうした「双方向のメリット」があるからこそ、広告事業がTimeTreeの成長を後押しする大きな柱となっているのです。
さらに、アプリが生活に深く根付いているからこそ、広告が単なる宣伝に見えにくく、情報として受け入れられやすい点も強みといえます。利用者が不快感を持たずに活用できる広告モデルをどう維持するかが、TimeTreeの事業を長期的に支える重要なポイントとなっています。
韓国最大手SK Telecomが注目した理由

今回の提携相手となるSK Telecomは、韓国を代表する通信事業者です。携帯電話やインターネット回線を提供する企業として知られる一方、近年は通信分野にとどまらず、生成AIやAIインフラ、AI半導体といった先端分野への投資を積極的に行っています。独自のパーソナルAIアシスタント「A.Dot」を展開し、利用者の日常を支える新たなサービスを生み出すなど、従来の通信会社から「世界的なAI企業」へと変革を進めている点が特徴です。
SK Telecomが今回特に注目したのは、TimeTreeが持つ膨大な予定データと6,700万人を超えるグローバルなユーザー基盤です。予定は単なる数字や文字の羅列ではなく、個人の生活や行動を映し出す具体的な記録でもあります。たとえば、食事の予定、学習計画、出張、イベント参加など、一人ひとりのライフスタイルを反映した情報が積み重なっています。こうしたデータをAIで分析することにより、新しい価値を生み出せる可能性が高いと判断されました。
さらに、SK TelecomはAI分野での研究開発力を活かし、TimeTreeの開発チームと協力することを計画しています。特に「A.Dot」を開発してきたチームが参画することで、AI機能の共同開発が加速し、従来のカレンダーアプリにはなかった新しい体験を提供できる土台が整うと考えられます。
このように、SK TelecomにとってTimeTreeは単なる投資先ではなく、AI戦略を拡大するための重要なパートナーと位置付けられているのです。22億円という出資額も、その期待の大きさを物語っています。
AIと海外展開で広がる新たな可能性

今回の資本業務提携を通じて、TimeTreeはこれまで蓄積してきた予定データを活用したAI機能の開発を本格的に進めていく計画です。予定データは「誰と」「いつ」「どこで」「何をするか」といった生活の中心を映し出す情報であり、AIにとっては学習の宝庫ともいえる存在です。そこにSK TelecomのAIチームが加わることで、ユーザー一人ひとりに合わせた新しいサービスが生まれる可能性が広がります。
たとえば、入力した予定から関連する情報を自動的に整理したり、必要なタスクを先回りして提示したりといった機能が想定されます。これまで手動で管理していた細かい作業をAIがサポートすることで、ユーザーはより簡単に予定を把握でき、時間の使い方に余裕を持てるようになるでしょう。
さらに注目すべきは、海外展開の加速です。現在、TimeTreeは日本と韓国を中心に利用者を伸ばしていますが、今回の提携を機にアジア各国をはじめとしたグローバル市場での普及を強める計画です。SK Telecomは通信とAIの両面で国際的なネットワークを持っており、そのバックアップを受けることで、TimeTreeはこれまで以上に多様な地域に浸透していくことが期待されます。
AIによる利便性向上と国際的なユーザー基盤の拡大。この二つが組み合わさることで、TimeTreeは単なる予定管理を超え、生活に寄り添うプラットフォームへと進化していく可能性を秘めています。
生活に寄り添う新しい予定管理へ
TimeTreeが大切にしてきたのは、予定そのものが家族や友人とのコミュニケーションの軌跡であるという考え方です。今回の提携によって、その予定データにAIの力が加わり、より便利で価値のある体験へと進化していく可能性があります。
SK Telecomも「両国のAIエージェントの発展をリードする」と語っており、今回の協力は日本と韓国だけでなく、グローバル市場を見据えた挑戦でもあります。
身近な予定管理がAIによってどう変わっていくのか。TimeTreeの取り組みは、私たちの暮らしに新しい選択肢をもたらしてくれそうです。