6月〜8月にかけての平均気温は全国的に平年より高く、厚生労働省は今年6月に職場での熱中症防止を目的として、事業者に熱中症対策を義務化する労働安全衛生規則の改正省令を公布するなど、国内における熱中症対策の重要性は年々高まっています。
熱中症対策として水分補給を心がけている方も多いと思いますが、実は水分を摂るだけでは十分ではないということをご存知でしょうか。
本記事では熱中症対策の基本や、水分補給の際に大切な「ミネラル」を含む食材、それらを使用したレシピなどもご紹介します。
暑さが厳しい夏は「熱中症」に気をつけよう
2024年5〜9月の間に熱中症で救急搬送された方は9万7,578人と過去最多となり、熱中症で亡くなってしまった方も120人に上りました。
近年の気候変動による気温上昇により、命に関わる深刻なリスクの1つとなっている熱中症ですが、実は正しい知識と習慣が身についていないことで、知らず知らずのうちにリスクを高まてしまっているケースもあることをご存知でしょうか。
そもそも熱中症とは、高温多湿な環境下で長時間過ごすことにより、体温調節機能が正常に働かなくなり、体内に熱が蓄積されてしまっている状態のこと。
私たちの体は運動や作業によって発生した熱を、汗の蒸発などにより皮膚から放熱することで体温を36〜37℃程度に保っていますが、気温や湿度が高い環境下で激しい運動を行うと、体内で生じた熱を効率的に逃がしにくく、体温が上昇しやすくなってしまいます。
さらに、過剰な発汗によって体内の水分や電解質が失われると、血流が低下して体表からの放熱が妨げられることも。
徐々に発汗もしづらくなることで体内に熱がどんどん蓄積してしまい、脳や臓器の働きが低下したり、血流が行き渡らなくなることで意識障害や筋肉のけいれんなどが起きてしまうのです。
暑い季節は、できるだけ直射日光を浴びる時間を短くすることが大切。
屋外での作業や外出時には、つばの広い帽子やUVカット機能の日傘を活用し、直射日光を避ける工夫をするようにしましょう。
また、服装は通気性と吸湿性に優れた素材を選ぶことで、汗を効率よく発散でき、風通しの良いデザインを取り入れることで体温の上昇を抑える効果も期待できます。
さらに徐々に暑い環境に体を慣らしていくことで汗をかきやすくし、血液循環を促進させ体の適応機能を高める「暑熱順化」を意識的に行い、外気温へ体を慣れさせる方法も効果的。
また、水分・ミネラルの補給や、休憩の取り方が熱中症対策において非常に重要。
「喉が渇く前」に水分を補給することが基本で、特に大量に汗をかく場面では、ナトリウムなどの電解質を含むスポーツドリンクを活用し、こまめな水分補給を心がけましょう。
意識して摂りたい!熱中症対策のカギとなるミネラル3種
汗とともに失われてしまうミネラルは、体内の水分バランスの維持、神経や筋肉といった体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素で、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミンと並ぶ五大栄養素の一つでもあります。
この機能がうまく働かず、結果として熱中症のリスクが高まることもあるため、不足しがちな今の時期にはしっかりと補給することが重要です。
体液中でイオンとして存在するナトリウム、カリウム、マグネシウムといった多量ミネラルは、水分バランスの調整や神経伝達、筋肉の収縮などに関わることから「電解質」とも呼ばれているミネラル。
今回は熱中症対策におすすめなミネラル3種をご紹介します。
ナトリウム
ナトリウムは、水分バランスや血圧の調整、筋肉の収縮や神経の伝達に欠かせないミネラル。
汗とともに体外に失われやすく、不足すると脱水症状やめまい、筋肉のけいれんなどを引き起こす恐れがあります。
ナトリウムは、塩・しょうゆ・みそなどの調味料のほか、ハム、ウインナー、練りもの製品、漬物などの加工食品にも多く含まれており、スポーツドリンクや経口補水液などの飲料にも含まれているため、暑い時期は水だけでなくナトリウムを含む飲み物を取り入れることが効果的と言えるでしょう。
しかし、軽く汗ばむ程度の日常生活であれば、通常の食事で必要なナトリウムを十分に摂ることができるため、過剰摂取に注意するようにしましょう。
カリウム
カリウムは体内の水分バランスを保ち、筋肉や神経の正常な働きを支える重要なミネラル。
汗をかくことでカリウムも体外に失われますが、汗の中に含まれるカリウムの量はナトリウムほど多くありません。
ただし、長時間の発汗やミネラル補給が不十分な場合には、カリウムが不足しやすくなることがあります。カリウムが不足すると疲労感や倦怠感、食欲不振、筋肉のけいれんなどの症状が現れることがあります。
カリウムはバナナ、えだまめ、ズッキーニ、トマトなど、様々な野菜や果物に含まれており、普段の食事で補うことが可能。
しかし、カリウムは水に溶けやすい性質をもつため、茹でると煮汁へカリウムが流れ出てしまうことも。
効率良く摂取したい場合は、茹で汁を捨てずにスープなどに活用するとよいでしょう。
マグネシウム
マグネシウムは、骨の構成成分であるだけでなく、300種類以上の酵素の働きを助け、エネルギーの生産や筋肉の収縮や神経伝達、体温・血圧の調整など、様々な身体機能に関与するミネラル。
汗に含まれる量はそれほど多くないものの、発汗が長時間続くと体内のマグネシウムも徐々に失われる可能性があるため、注意が必要です。
マグネシウムが不足すると、疲労感・だるさ・筋肉のけいれんなどが起こりやすくなるなど、ナトリウム・カルシウムとともに電解質バランスを保つうえで欠かせません。
これらの電解質が適切に働くことで、細胞内外のイオンバランスが保たれ、体温調節もスムーズに行われますが、このバランスが崩れてしまうと熱中症のリスクが高まる恐れも。
マグネシウムは、ゴマやアーモンドなどの種実類、干しひじきなどの海藻類、大豆や小豆などの豆類、糸引き納豆や油揚げなどの大豆加工食品、玄米などに多く含まれています。
普段の食事でマグネシウムを摂りすぎる心配はほとんどないものの、サプリメントなど通常の食品以外からの耐容上限量は成人で350mg/日とされており、過剰に摂取すると下痢などの症状が出る場合があるため、サプリメントなどを利用する際は摂り過ぎに注意しましょう。
ミネラル補給にぴったり!旬の食材を使用した熱中症対策メニュー
熱中症対策におすすめのレシピとして、管理栄養士の横川仁美さんがトマトをたっぷり使った「冷やしトマトと豆腐のお味噌汁」を紹介してくれました。
トマトやきゅうり、なすといった夏野菜には、熱中症対策に欠かせない水分やカリウム、マグネシウムが豊富に含まれており、ミネラル補給に最適。
冷たいままだと爽やかな涼しさを感じられ、温めれば冷房で冷えた体にじんわりと染み渡る優しい味わいと、どちらの食べ方も楽しめる夏の体調管理にぴったりの一品となっているので、熱中症対策におすすめ。
●レシピ詳細
【材料】(1人分)
・トマト 1/2個(80g)
・絹豆腐 1/2丁(160g)
・わかめ(茹で)30g
・みょうが 適量
【調味料A】
・だし汁 220ml
・味噌 大さじ1/2
【作り方】
調理時間:5分
・だし汁と味噌をよく混ぜ、冷蔵庫で冷やしておく(※1)
・トマトは4等分のくし形に切り、さらに半分に切る絹豆腐は約1.5cm角に切り、わかめは2cmほどに切る。みょうがは輪切りにする
・器にトマト、豆腐、わかめを入れて軽く和えたら(※1)を注ぎ、上にみょうがをのせて完成
栄養素についてさらに詳しく知りたい・学びたいという方は以下WEBサイトをご参照ください。
大塚製薬 栄養素カレッジ:https://www.otsuka.co.jp/college