炊飯器のふたを開けた瞬間、ふわっと立ち上る香りとともに、ふっくらと輝く白いごはん。そのおいしさに、つい笑顔がこぼれる———。そんな食卓の幸せを、ひと味違うアプローチで実現する方法が、今ひそかに注目を集めています。鍵となるのは、なんと「ヨーグルト」。しかも、その中でも普段は見過ごされがちな“ホエー(乳清)”という成分です。
日々の料理で食材を「使い切る」工夫が求められる昨今、ヨーグルト1パックを丸ごと活かす新しい調理法「ワンパック」が登場しました。提案者は「乳和食」の第一人者として知られる管理栄養士・小山浩子さん。ホエーをごはんの炊飯に使い、残った水切りヨーグルトをおかずとして活用するこの手法は、栄養・経済性・時短のすべてを兼ね備えた“賢い食卓術”です。
米の価格が高騰し、備蓄米の供給にも偏りが生じる中で、「お米をよりおいしく、ムダなく食べる」という工夫は、今の時代にこそ意味を持ちます。カルシウムやビタミンB群、そして不足しがちな必須アミノ酸まで摂れる「ワンパック」は、毎日の食事をちょっと豊かにしてくれるヒントかもしれません。
この夏、あなたも“ヨーグルトのある食卓”を始めてみませんか?
米価格高騰の今、ヨーグルトで“ごはん改革”

2025年、米の価格が過去最高水準に達し、政府による備蓄米の市場放出が行われるなど、お米を取り巻く状況は大きく変化しています。しかし、十分に行き渡らない地域もあり、思うようにお米が手に入らないという声も少なくありません。そんな中、「いつものお米をよりおいしく、賢く食べる」方法として注目されているのが、ヨーグルトの“ホエー”を使った炊飯術です。
ホエーとは、ヨーグルトを水切りした際に得られる透明な液体で、カルシウムやビタミンB群、必須アミノ酸のリジンなどを含む栄養豊富な成分。このホエーを水の代わりに加えてお米を炊くだけで、炊き上がりはつややかに、ふっくらと仕上がります。古くなったお米でも甘みやコクが引き立ち、冷めてもおいしさが持続します。
さらに、ヨーグルトは低GI食品で、ホエーごはんと一緒に摂ることで血糖値の急上昇を抑える効果も期待できます。栄養価の高いごはんが簡単に作れるこの方法は、特別な調理技術を必要とせず、家庭で気軽に実践できるのも魅力。まさに「美味しさ」と「健康」を両立する、今の時代にぴったりの新習慣と言えるでしょう。
ヨーグルトは“おかず”にも?食卓を彩るアレンジレシピ
ホエーで炊いたごはんを楽しんだ後に残る「水切りヨーグルト」も、実は使い道が豊富です。たんぱく質をしっかり含み、さっぱりとした風味はおかずの一品にもぴったり。肉や魚と組み合わせて主菜にしたり、発酵食品同士の相性を活かして腸活メニューに応用したりと、アレンジの幅が広がります。
ここでは、料理家・小山浩子さん監修の「ワンパックレシピ」から、実際に家庭で取り入れやすい3つのメニューをご紹介します。どれもヨーグルト1パックをまるごと活かした、栄養満点で作りやすいレシピばかりです。ぜひ日々の献立に取り入れて、手軽に“わんぱく飯”を楽しんでみてください。
食べるヨーグルト寿司

カルシウム豊富なホエイごはんは、酢飯にすると吸収率がアップ。ヨーグルト効果でごまのカルシウム吸収もアップ!水切りヨーグルトを加えれば、刺身なしでもたんぱく質が補える。ホエイ酢飯は手巻き寿司、ちらし寿司にもおすすめ。
【材料(4人分)】
米:2合
ホエイ:1パック分(約200ml)
すし酢:大さじ3~4
白ごま:大さじ2
ポン酢しょうゆ:大さじ1
水切りヨーグルト:1パック分(約150g)
缶詰とうもろこし:大さじ8
カニ風味かまぼこ:12本
きゅうり(縦8等分):1本
板のり:4枚
【作り方】
①明治ブルガリアヨーグルト1パック(400g)を約8時間水切りする。
②炊飯器に洗った米、ホエイを入れ、2合の目盛りまで水を加えて炊く。
③すし酢を混ぜて酢飯にし、白ごまはポン酢しょうゆに漬けて5分ほどおき、電子レンジ(600W)で1分〜1分20秒加熱する。
④のりを縦におき、酢飯の1/4量を広げる。
⑤具はすべて1/4に分け、手前からかにかま、とうもろこし、きゅうり1本を並べ、トウモロコシの上にヨーグルトをスプーンでのせごまをふる。上に残りのきゅうりをのせ、具材を芯にして手前からしっかり巻く。残りの3本も同様に作る。
⑥1本を8等分に切り、お皿に盛る。
炊き込み豆腐とキムチのとろとろ中華風ヨーグルトのっけ丼

豆腐でかさ増ししたホエイごはんは、たんぱく質が豊富でダイエット中にもおすすめ。ヨーグルト×キムチの発酵食品コンビで腸活効果も期待できる。ごま油をかければ風味が増し、脂溶性ビタミンの吸収もアップ。
【材料(4人分)】
米:1.5合
ホエイ:1パック分(約180ml)
絹ごし豆腐:450g
水切りヨーグルト:1パック分(約200g)
鶏ガラスープの素:小さじ1※お好みで調整
キムチ:200g
ゴマ油:適量
細ねぎ(小口切り):2~3本
白ごま:適量
【作り方】
①明治ブルガリアヨーグルト1パック(400g)を約6時間かけて水切りする。
②炊飯器に洗った米、ホエイを入れ、1.5合の目盛りまで水を加えその上に豆腐をのせて普通に炊く。
③水切りヨーグルトと鶏ガラスープの素を混ぜ合わせおく。(A)
④丼にご飯と豆腐を盛り、キムチをのせ、Aを盛る。
⑤ごま油とごまをかけ、ねぎを散らす。
*炊飯器はできれば5合炊きをご使用下さい。3合炊きで炊く場合、豆腐は半量だけ入れて炊き、残りは蒸らしの時に加えて下さい。
水切りヨーグルトでポークジンジャー

豚肉×ヨーグルトで体力・代謝アップ&水溶性ビタミン補給にも効果的。味付けは焼肉のたれだけでOK。豚肉にしっかり焦げ目をつけると、ヨーグルトだれがよく絡む。
【材料(4人分)】
米:2合
ホエイ:1パック分(約180ml)
豚バラ薄切り:400g ※赤身多めがおすすめ
ショウガ(千切り):大2片
玉ねぎ(縦5mmスライス):大1個
水切りヨーグルト:1パック分(約200g)
焼肉のたれ(甘口):大さじ6
白ごま:適量
【作り方】
①明治ブルガリアヨーグルト1パック(400g)を約6時間水切りする。
②炊飯器に洗った米、ホエイを入れ、2合の目盛りまで水を加えて炊く。
③水切りヨーグルトに焼き肉のたれを混ぜておく(A)。
④豚肉を両面焼き、取り出す。豚の脂でショウガと玉ねぎを炒め、豚肉を戻して(A)を加え、タレが透き通るまで炒める。
⑤仕上げにごまをふり、好みで野菜を添える。
健康・節約・時短をかなえる「ワンパック」の3得ワザ
「ワンパック調理法」は、健康・節約・時短の“三得ワザ”が魅力です。まず健康面では、ホエーや水切りヨーグルトを取り入れることで、カルシウムやビタミン、リジンといった栄養が自然に補えます。節約効果もあり、水切りヨーグルトはたんぱく質が豊富なため、肉や魚を減らしても満足感のある料理に。調味料も控えめで済み、塩分カットにもなります。
調理も簡単で、炊飯器と冷蔵庫があればOK。手間なく続けられる“賢い食習慣”として、忙しい家庭にもぴったりの方法です。
小さな工夫が、食卓を変えるきっかけに
日々の食卓で「もうひと工夫できたら」と感じることは、誰にでもあるものです。そんなとき、身近なヨーグルトを使った“ワンパック調理”は、新しい発見と楽しさをもたらしてくれます。ホエーで炊くふっくらごはんと、たんぱく質豊富な水切りヨーグルトのおかず――どちらも、特別な材料や技術は必要なく、誰でも簡単に始められるのが魅力です。
食材をムダなく使い、健康とおいしさを両立させるこの調理法は、今の時代にぴったりの知恵とも言えるでしょう。夏休みの食卓に、家族で楽しめる“わんぱく飯”を取り入れてみるのも一つのアイデアです。小さな工夫が、毎日の食事をもっと豊かにしてくれるかもしれません。