ファイザー株式会社は、夏にかけて流行が予想されるRSウイルス感染症について、ファミリー向けの啓発セミナー「高齢者から孫世代で考えよう『RSウイルス感染症』」を都内で開催しました。
ファミリー向け啓発セミナー「高齢者から孫世代で考えよう『RSウイルス感染症』」
RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial Virus)は、生まれたばかりの乳幼児や高齢者に重篤な症状を引き起こす可能性がある呼吸器感染症。
RSウイルスは世界中のどこにでも存在するウイルスで、特に日本の乳幼児は2歳までにほぼ全員が感染すると言われており、実際に3歳の時点で検査をするとほとんどの方が抗体を持っている(感染して体が抗体を作っている)状態なのだとか。
感染ルートは、麻疹や水疱瘡のウイルスと違い空気感染はせず、接触感染と飛沫感染の二通りで伝染していきます。
本セミナーに登壇した長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野で教授を務める栁原克紀先生は、
「RSウイルスには、子どもだけでなく大人も感染します。1年を通してかかる可能性のある感染症ですが、実は特に流行する時期があります。2021年以降は、春から初夏にかけてRSウイルスの感染者が増加し、夏にピークを迎える傾向があります。つまりこれからの時期に最も注意が必要となるのです。」
と参加者、オンライン配信の視聴者に向けて注意を促しました。
高齢者も要注意!重篤化する可能性もあり得るRSウイルス感染症
乳幼児だけにとどまらず、RSウイルスは大人にも感染するのですが、特に注意が必要なのが高齢者の方のRSウイルス感染。
呼吸器や心臓などの基礎疾患を抱える方は、重症化のリスクが高くなるとされています。
「RSウイルス感染症が重症化してしまうと、インフルエンザよりも亡くなってしまう確率が高いことが分かっています。2019年には、およそ4300万人ほどいると言われている満60歳以上の方のうち、約70万人が感染し、その中で約6万人の方が重症化したというデータがあります。港区の人口の約3倍もの高齢者がRSウイルスに感染していると考えれば、どれだけ多くの方が感染しているのか想像しやすいのではないでしょうか。」
免疫が衰えている高齢者の方は、重症化のリスクが高まることになります。
特に、重症化しやすい乳幼児と高齢者を含む三世代同居の家庭や、里帰り出産・日々の育児サポートなどで、乳幼児と高齢者が密接な関係にある家庭の方は注意が必要だと栁原先生は語りました。
乳幼児のRSウイルス感染症のリスク
続けて、どうかん山こどもクリニックの院長である森戸やすみ先生は、乳幼児のRSウイルス感染症について説明。
「子どもがRSウイルスに感染しまうと、4〜5日程度、潜伏期間として症状が何も出ない期間があり、その後に風邪のような症状として、熱・咳・鼻水が出ます。ほとんどの方がその段階で治るのですが、重症化してしまうと喉から下の気道の炎症(下気道炎)を起こし、強い咳も頻繁に出てしまい、呼吸するので精一杯で食事も食べられず、飲み物も飲めないというような状態になる方もいらっしゃいます。」
特に生後6ヶ月以内の子どもが感染してしまうと、肺炎などを起こす重症化のリスクが高まるそう。
「元気に生まれて普通に暮らしていた赤ちゃんが、ある日突然具合が悪くなってしまい、お医者様から『入院しましょう』という事態になります。その点がRSウイルス感染症の怖いところです。」
特に注意が必要なのが「上の兄弟姉妹からの感染」で、保育園・幼稚園などに通っている子どもがRSウイルスを保有している状態で家族と接触することにより、下の子どもやおじいちゃん・おばあちゃんに感染させてしまうことも往々にしてあるそうなので、注意が必要だと説明しました。
約7割の子どもは上気道までの炎症で終わるものの、残りの3割の子どもは下気道で炎症(細気管支炎や肺炎)を起こし、重症化してしまうことに。
さらにスウェーデンの調査では、乳幼児期にRSウイルス感染症で重症化した方は、その後喘息になりやすいというデータも出ているのだとか。
そんなRSウイルス感染症を予防するためには、手洗いうがいの徹底や、乳幼児が触る可能性のあるものの消毒を常日頃から行っておくこと、マスクの着用、生活空間の隔離といった比較的簡単にできる毎日の取り組みが効果的だと栁原先生は語りました。
母子免疫を利用したRSウイルスワクチンの有用性
高齢者以上に気をつけたい乳幼児のRSウイルス感染症。特に生まれたばかりの新生児から6ヶ月間以内の子どもは重症化や、その後の喘息発症率といったリスクも高いことが知られています。
そこで丸の内の森レディースクリニック 院長の宋美玄(そんみひょん)先生は、母子免疫を活用したRSウイルスワクチンが効果的だと説明。
「赤ちゃんが生まれてすぐ、感染症に比較的かかりにくいというのは、お母さんから胎盤とへその緒を通じて抗体の一部を受け取っているためです。他にも初乳を通じて免疫が移行します。これを母子免疫と呼ぶのですが、この仕組みを利用したRSウイルスのワクチンがあるんです。大体妊娠28週〜36週くらいに打つのがおすすめで、これによって赤ちゃんの体内で抗体が作られるようになります。私はこれを『赤ちゃんへの最初のプレゼント』と呼んでいます。」
と推奨。
RSウイルスの恐ろしさについて学んできたセミナー参加者たちも「そんなものがあるのか!」と驚かれていた様子でした。
本セミナーにゲストとして登壇したタレントの丸高愛実さんは、2022年に子ども2人がRSウイルス感染症を発症したことがあるほか、第三子が8ヶ月ほどとまだ小さいこともあり、
「外から帰って来たら、手洗い・うがいはもちろんなんですけど、我が家では最近、まずお風呂に入ってもらうことを徹底するようにしました。色々なところに菌はついているということをお聞きしたので、それからはお風呂に入れる時は必ず入るようにしています。一番下の子が色々なものを口に入れる時期に入ってきたので、なるべく子どもが手に取るものを消毒をするよう心がけています。」
俳優・タレントの森尾由美さんは、
「ある程度年齢を重ねると、自分の経験値から“これくらい大丈夫”みたいな気持ちがどうしても勝ってしまって『風邪かな?』で済ませることが多いんですけども、今回先生方から貴重なお話をたくさん聞けたので、自分を過信しないということと、この情報を家族と共有して一緒に見守っていきたいです。自分の普通とちょっとの異変、家族の普通と家族のちょっとの異変が分かるように、一緒に生活していきたいなと思っています。」
と締めくくりました。
RSウイルスにはインフルエンザウイルスのような特効薬がなく、酸素吸引などの対症療法でしか治療ができない感染症。さらに、何度も感染する可能性があるため、乳幼児や高齢者の方がいる家庭では、家族同士での感染に十分気をつけなければなりません。
日々の手洗いうがい・消毒はもちろん、風邪の症状が出た際には出来る限り他の家族へ接触しないことや、屋内でのマスクの着用なども行うようにしましょう。
また、妊娠されているプレママの方は、RSウイルス母子免疫ワクチンをぜひ打って、赤ちゃんへ免疫というプレゼントを贈ってみてはいかがでしょうか。