2026年10月13日から16日まで、幕張メッセで開催されたデジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2026」。数多くの企業が最新技術を披露するなか、東京都も「東京ベイeSGプロジェクト」のブースを出展した。会場には、パートナー企業4社が手がける先端技術のほか、伝統と最新技術を融合したモビリティ「ツナグルマ」が並んだ。東京都が掲げるのは、先端技術によって持続可能な都市を実現する「SusHi Tech Tokyo」の理念。その考え方を背景に、未来の東京を見据えた街づくりを進めている。
新しい技術は、東京の暮らしをどう変えていくのか。そして、実用化に向けてどのような課題があるのだろうか。
東京都が描く未来の街づくり、その狙いとは?
東京都が推進する「東京ベイeSGプロジェクト」は、東京のベイエリアを舞台に、50年・100年先を見据えた持続可能な都市づくりを目指す取り組みだ。「自然」と「便利」が融合する都市の実現に向け、企業などと連携しながら先端技術の実証や社会実装を進めている。
今回のCEATECへの出展について、東京都スタートアップ戦略推進本部 戦略推進部 東京eSGプロジェクト推進担当課長の齋藤司氏は、「50年、100年先の未来を見据えて、今を良くしていこうという取り組みをしていますので、非常に親和性のある展示会だと考えています」と説明する。出展した4社は、パートナー企業からの応募をもとに、展示会の趣旨やプロジェクトとの関連性などを踏まえて選定された。
齋藤氏によると、出展の狙いは技術の紹介だけではない。
「パートナー企業の技術をより良くしていくために、共に作っていく相手を探していただいたり、実際に導入していただける会社や団体に広く見てもらう場でもあります」
東京都では、ベイエリアに実証の場を提供するなど、技術の社会実装に向けた支援も進めている。
発電するガラス、水上ドローン 暮らしを変える技術
ブースで紹介された技術の一つが、inQs株式会社の発電ガラス「SQPV GLASS」だ。太陽光だけでなく室内照明などの光でも発電でき、遮熱・断熱効果も備える。同社の担当者は「透明なガラスであっても発電することと、遮熱効果、断熱効果がある」と特徴を説明する。将来的には家庭やオフィスの窓への導入を目指しているが、建材としての普及にはまだ課題があるという。現在は既存の窓ガラスの内側に設置するなど、屋内での活用を中心に展開している。
また、色付きのガラスは透明なものより光エネルギーを吸収しやすく、発電性能を高められるという。室内の光で発電した電力を使い、観葉植物の水を循環させる仕組みも紹介された。ガラスにデザインを施すこともでき、インテリアとして暮らしに取り入れる使い方も想定している。

一方、株式会社スペースワンが手がけるのは、自律型水上ドローン「ARIVIA」だ。LEDや噴水、音楽を組み合わせた水上演出に加え、センサーによる水温や濁度などの環境データの取得も可能だ。
同製品は米国のテクノロジー見本市「CES」で「CES Innovation Awards 2026 Honoree」に選出され、今回のCEATECで国内初披露された。担当者は「エンターテインメントだけでなく、環境のモニタリングも一緒にできるところが評価されました」と話す。
GPSによる自律航行が可能で、ホテルのプールや水辺の施設などでの活用を想定している。東京湾やお台場など、水辺のにぎわいづくりにもつながる技術だ。現在は実証・デモンストレーション段階にあり、各地の施設でデモンストレーションを実施。さらに、搭載したカメラとAIを組み合わせ、プールで子どもの異常を検知する仕組みや、施設の点検などへの応用も検討されている。

スマホ動画から3D空間を再現 空間AIによるインフラ維持管理の未来構想
都市インフラの維持管理に役立つ技術として注目したいのが、CalTa株式会社の「TRANCITY Nebula」。スマートフォンやドローンなどで撮影した動画をアップロードするだけで、現実の空間を3Dモデルとして再現できるデジタルツインプラットフォームだ。
担当者は「スマートフォンやGoPro、360度カメラなど、さまざまなデバイスで撮った動画をアップロードするだけで、3Dモデル化できます」と説明する。
すでに東京都港湾局で施設の維持管理に活用されているほか、福井県では災害現場の状況把握にも使われているという。今後はAIを活用し、3Dモデルからひび割れや危険箇所を見つける機能の開発も進めている。

環境分野では、グリーンカーボン株式会社がGXプラットフォーム「Agreen」を紹介した。
温室効果ガスの削減・吸収活動によって生まれるカーボンクレジットの創出から販売までを支援するサービスで、衛星データや現地データを活用し、複雑な申請手続きなどを効率化する。同社の ESG事業部のパク ジヨン氏は、Green Carbonが目指すのは「地球に良い取り組みをした人が、手間なく正当な利益を得られる仕組み」だと語る。
例えば、水田の水管理を工夫してメタンガスの排出量を削減し、その削減実績に基づくカーボンクレジットの創出・販売を通じて、農家への収益還元につなげる取り組みを進めている。
また、直近では、東京都の「東京ベイeSGプロジェクト」に採択された実証事業に清水建設などとともに参画し、海水からCO₂を回収するDOC技術の社会実装に向け、CO₂除去量の測定・検証に必要な基盤の構築や、将来的なカーボンクレジット化の仕組みづくりを進めている。

未来の東京に必要なのは技術だけではない
先端技術の開発が進む一方、それらを都市に導入するには課題もある。齋藤氏は東京の強みについて、「世界でトップ3に入るような大きい都市でもあるので、ここで実装が進む技術であれば、世界中でも使っていけるというアピールポイントがあると思います」と話す。
一方で、新しい技術の導入には規制への対応も必要だという。
「新しい技術を取り入れていくときに、これまでの延長線上でやっていくというよりは、規制を緩和するなど、技術を導入しやすい環境を東京都としても提供していくことが必要だと思います」
また、会場では伝統と最新技術を融合したモビリティ「ツナグルマ」も展示された。
齋藤氏は「過去からの流れがあって、その流れを受け継いで、未来に向かって今を作っていく。歴史を感じさせる部分と、そこに未来をどう組み込んでいくか。その象徴として、ツナグルマがあると考えています」と、その意義を語った。

窓が電気を生み、スマートフォン一つで街の安全を守り、水辺に新しいにぎわいが生まれる。そして、田んぼの水管理が地球温暖化対策につながる。今回出展された技術はどれも、SF的な未来像ではなく、今の暮らしの延長線上にあるものばかりだった。
50年後、100年後の東京がどのような街になっているのか、今はまだわからない。ただ、その未来をつくる技術は、すでに私たちの身近なところで動き始めている。そうした技術が一つ、また一つと実装されていくたびに、東京の街は少しずつ姿を変えていくはずだ。その先にどんな東京が作られていくのか、これからも注目していきたい。
