スマートフォンでニュースを確認し、仕事ではパソコンやチャットツールを使い、移動中にはSNSや動画を眺める。生成AIの普及も進み、私たちは一日の中で膨大な情報に触れながら生活するようになった。便利さが増す一方で、「何となく頭が重い」「十分に寝たはずなのにスッキリしない」と感じる機会が増えた人も少なくないのではないだろうか。
こうした感覚は単なる気のせいではなく、多くの人が共通して抱えている悩みである可能性がある。7月22日の「世界脳の日」に合わせて実施された調査では、30〜50代の約半数が頭の疲れを実感していることや、休日や就寝前でも仕事が頭から離れない人ほど睡眠への満足度が低いことなど、情報過多時代ならではの実態が明らかになった。さらに、頭のコンディションを気にしている人は多い一方で、「何をすればよいかわからない」という声も目立つ結果となっている。調査結果と医師の解説からは、情報に囲まれた日常の中で、現代人の頭がどのような状態に置かれているのかが見えてくる。
30〜50代の2人に1人が感じる「頭の疲れ」

調査では、「最近、頭が疲れている・頭が重いと感じることがある」と答えた人が50.7%と、30〜50代の2人に1人にのぼった。また、休日や就寝前でも翌日の仕事や予定が頭から離れない人は46.1%、日中に「頭がさえている状態」を維持できていない人は53.7%という結果になった。
さらに、やる気が出にくい、集中力が続かない、物忘れが増えた、情報処理が遅く感じるなど、日中に何らかの違和感を覚えている人は63.1%に達している。
これらの結果からは、多くの人が「頭を十分に休ませられていない」と感じながら日常生活を送っている様子がうかがえる。忙しさだけでなく、情報に触れ続ける生活そのものが、頭のコンディションに影響を与えているのかもしれない。
PC利用時間が長いほど頭の疲れを感じやすい傾向

調査では、普段のPC利用時間と頭の疲れとの関係も分析されている。
「頭が疲れている・重い」と感じる割合は、PC利用時間が1時間以下では41.0%だったのに対し、2〜3時間では48.7%、4〜5時間では58.7%、6時間以上では61.4%まで上昇した。もちろん、PCを長時間使うことだけが原因とは言えない。しかし、スマートフォンやPCに加え、チャットツールやSNS、生成AIなど、常に情報へ接続している現代の生活環境を考えると、デジタル機器との接触時間が長い人ほど頭の疲れを感じやすい傾向が見られたことは興味深い結果と言えそうだ。
「仕事が頭から離れない人」は睡眠への不満も高い

今回の調査では、頭の疲れと睡眠との関係にも注目している。全体では、睡眠の質に不満を持つ人は62.2%、睡眠時間に不満を持つ人は58.4%だった。一方で、休日や就寝前でも仕事が頭から離れない人に限ると、睡眠の質に不満を持つ割合は73.8%、睡眠時間への不満も68.5%まで高まっていた。
休息時間になっても頭の中では翌日の仕事や予定を考え続けてしまう状態では、身体を休めているつもりでも、脳は十分に休息できていない可能性がある。今回の結果からも、「頭がオフにならないこと」と「睡眠への満足度」は密接に関係していることがうかがえる。
関心は高い一方で、具体的な対策が分からない人も多数

頭の疲れを感じている人が多い一方で、実際に対策へつなげられている人は多くないようだ。頭の疲れへの対策として最も多かった回答は「特に何もしていない」の39.1%だった。

一方で、今後、頭のコンディション管理に取り組みたいと考えている人は68.5%にのぼる。しかし、そのうち60.6%は「何をすればよいかまったく知らない」と回答している。
つまり、頭の疲れを課題として認識している人は少なくないものの、具体的な行動へ移すための知識や方法が十分に浸透していない実態が浮かび上がった。関心と実践の間には、まだ大きなギャップがあるようだ。
<調査概要>
調査名:情報過多時代の脳疲労サインと睡眠に関する実態調査
調査対象:全国の30〜59歳男女
サンプル数:1,000名
調査方法:インターネット調査
調査実施期間:2026年6月中旬
調査機関:株式会社ネットエイジア
医師が語る「休めない脳」と睡眠の大切さ
調査結果について、医療法人社団ミッドタウンクリニック理事長の田口淳一医師は、スマートフォンやPC、SNS、AIなどによって大量の情報に触れ続ける現代では、「頭が疲れている」「集中できない」といった状態は脳疲労のサインとして考えられると説明している。
脳では日々大量の情報が処理されており、その過程で生じた老廃物は、睡眠中に活性化する「グリンパティックシステム」によって排出されるという。しかし、睡眠不足や睡眠の質の低下によってこの働きが十分に機能しなくなると、頭重感や集中力・判断力の低下につながる可能性があるとしている。
また、頭のコンディションを整える基本は、食事や運動に加え、質の高い睡眠であるとも指摘する。特に暑い時期は、エアコンを適切に使いながら室温や湿度を調整し、快適な睡眠環境を整えることも重要だという。
日々の「頭が疲れた」という感覚を軽く考えず、脳をしっかり休ませる習慣を意識することが、現在のパフォーマンスだけでなく将来の健康にもつながると呼びかけている。

<プロフィール>
医師 田口淳一 (たぐちじゅんいち)
医療法人社団ミッドタウンクリニック 理事長
東京ミッドタウンクリニック 総院長
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 総院長
ミッドタウンクリニックイースト 総院長
東京ミッドタウン先端医療研究所 設立者・初代所長
一般社団法人脳の健康を守る総合研究所 代表理事
頭を休ませることも、これからのコンディション管理のひとつ
今回の調査では、「頭が疲れている」という感覚が、一部の人だけの悩みではなく、多くの人が日常的に感じている身近な課題であることが示された。仕事や生活のあらゆる場面で情報に触れる時間が増えた今、身体だけでなく、脳にも休息が必要であることを改めて考えさせられる結果と言えるだろう。
十分な睡眠を確保することはもちろん、就寝前に情報から少し距離を置く時間をつくるなど、自分なりに頭を休ませる習慣を見つけることも大切になりそうだ。「世界脳の日」をきっかけに、毎日のコンディション管理を見直してみるのもよいかもしれない。
