ヤマシンフィルタ株式会社と国立大学法人信州大学は産学連携の取組みとして、ナノファイバーを軸とした素材の開発・社会実装に向け、共同研究契約を締結・「SHIN-PROJECT」を始動しました。産業用フィルタ技術と繊維研究を融合させ、2030年頃の製品化を見据えたプロジェクトです。

もとより脱炭素社会の実現に向けた取組みが進む中、欧州を中心にPFAS(有機フッ素化合物)の規制が強化されています。これにより防水機能がある素材の見直しが進んでおり、レインウェアや防護衣料といった分野では代替素材への関心が高まっています。一方で、防水性と透湿性の両立など、従来素材に代わる機能性の実現に向けた技術開発も着実に進められているほか、昨今の不安定な国際情勢や、ホルムズ海峡を巡る石油供給リスクを鑑みると、素材のバイオマス化はもはや単なる「環境対応」の枠を超え、有事の際も産業を止めてはならない喫緊の課題といえます。

こうした背景のもと、ヤマシンフィルタと信州大学は、次世代繊維の開発および製品化に向けた共同研究を開始します。本研究では、PFASを使用しない防水・透湿素材の開発に取組み、アウトドア・スポーツ・防護衣料分野への応用を見据えた次世代素材の研究を推進。ヤマシンフィルタでは事業方針として、石油という外部リスクへの比重を減らし原料の分散化やバイオマス素材の活用を進めることで、日本の資源と技術によってインフラを支え続ける「素材の安定供給」体制の確立を目指します。また、自己発電素材や高精度センサーなど、各テーマに応じた用途を想定した素材開発についても、並行して進めていくとのことです。

始動する「SHIN-PROJECT」では、主に3つの社会課題に取り組みます。1つ目は「環境・資源リスク」で、PFASフリーの撥水素材や、軽量で高断熱なバイオマス素材を開発することで省エネや環境負荷低減を目指すというもの。2つ目は「超高齢化・人手不足」で、自己発電型センサーを活用し、ガス検知や生体情報のモニタリングによって医療・介護現場の効率化に貢献するというもの。3つ目は「次世代インフラへの対応」で、EVやドローン向けに軽量な電磁波制御素材や吸音素材を開発することで、熱や重量の課題解決を目指していきます。

発表会に出席したヤマシンフィルタ株式会社代表取締役社長執行役員の山崎敦彦氏は、「まずは信州大学の金先生と協力して素晴らしい製品開発をやっていく。中堅中小企業の発展のポイントは技術開発にあり、と思っている。これが上手くいったら、次の課題はどうやって売るのかということになってくるかと思うが、これはコストの問題や販売チャンネルの問題で、別途パートナーを探してしかるべきパートナーと組んで展開していきたい」と「SHIN-PROJECT」への意気込みを語りました。

同じく信州大学副学長卓越教授の金翼水氏は、「今回のこの研究は単なる企業との共同研究ということではなく、人材育成まで含めたひとつのプラットフォームになる。大学の役割が非常に大事なポイントになってくるが、大学は研究を行って論文を書いて終わりということではなく、ヤマシンさんのような技術のプロ集団と手を組み、実際我々の生活の中に広がるモノ作りまでいけるということに力を入れたい」と想いを語りました。

なお、「SHIN-PROJECT」という名称には、「シン素材」「シン産学連携」「シン未来」という意味が込められており、さらにヤマ“シン”フィルタ、“信”州大学、そして技術者の“真”の融合も表現されています。およそ3年間をかけ、このプロジェクトを通じて機能素材事業を成長させ、社会課題の解決につながる新たな価値創出を目指していくとのことです。
