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震災の教訓を世界へ 日本人の心に根づく共助を神戸から伝えるJICA関西とDRLCの取り組み

大きな災害は、時間が経つにつれて記憶の中から少しずつ遠ざかっていきます。しかし日本では、30年以上前の震災の経験が、今もなお国内にとどまらず、世界へと受け継がれています。 兵庫・神戸を拠点に、各国の防災担当者が集い、日本...
ナイスコレクション 2026年1月19日

大きな災害は、時間が経つにつれて記憶の中から少しずつ遠ざかっていきます。
しかし日本では、30年以上前の震災の経験が、今もなお国内にとどまらず、世界へと受け継がれています。

兵庫・神戸を拠点に、各国の防災担当者が集い、日本の防災や復興の歩みを学ぶ取り組みが続けられています。そこで重視されているのは、最新の技術や制度だけではありません。地域の人たちが助け合い、困難を乗り越えてきた過程そのものです。

なぜ被災地で学ぶのか。
なぜ防災を「人づくり」として考えるのか。

震災の教訓を過去の出来事で終わらせず、次の災害に備える力へと変えていく。その静かな積み重ねが、神戸から世界へと広がっています。本記事では、その背景にある想いと取り組みに目を向けていきます。

防災を「人づくり」として考える場所

震災の経験を伝える取り組みの中心にあるのが、兵庫県神戸市に拠点を置くJICA関西と、そこに設置された国際防災研修センター(DRLC)です。

ここで行われているのは、災害が起きたときの対応方法だけを教える研修ではありません。防災を「制度」や「設備」として学ぶのではなく、それを支える人の考え方や行動にまで目を向けた人材育成が行われています。

研修には、アジアや中南米、アフリカ、ヨーロッパなど、さまざまな国や地域で防災を担う行政関係者が参加します。国や文化、災害の種類は違っても、共通しているのは「次に起こる災害にどう備えるか」という問いです。

日本が積み重ねてきた経験の中には、すぐに数字やマニュアルに落とし込めない学びも多くあります。地域で声を掛け合うこと、日頃から顔の見える関係をつくっておくこと、いざという時に迷わず動ける土台を整えること。JICA関西と国際防災研修センターでは、そうした目に見えにくい部分も含めて、防災を考える場が用意されています。

神戸という被災地で学ぶこと自体が、参加者にとって大きな意味を持ちます。過去の出来事を知識として学ぶだけでなく、その土地に刻まれた記憶や復興の歩みを感じながら、防災を自分ごととして考える。その実感こそが、各国に戻った後の行動につながっていきます。

なぜ世界の防災担当者は神戸で学ぶのか

防災の研修と聞くと、専門的な技術や制度を学ぶ場を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、ここで行われている学びは、それだけにとどまりません。世界各国の防災担当者が神戸を訪れる理由は、日本が経験してきた災害の「結果」ではなく、その「過程」に触れるためです。

神戸は、阪神・淡路大震災という大きな被害を受けながらも、長い時間をかけて復興してきた街です。その歩みの中で積み重ねられてきたのは、行政の仕組みだけではありません。地域の人たちが支え合い、役割を分け合いながら困難を乗り越えてきた記憶そのものです。

研修では、日本の災害事例をもとに、参加者が自国の災害リスクを見つめ直し、防災計画を考える時間が設けられています。答えをそのまま持ち帰るのではなく、それぞれの国や地域に合わせて考え直すことが重視されています。そのため、学びの中心にあるのは「どう応用するか」という視点です。

災害の種類や社会の仕組みは国ごとに異なります。それでも、人が暮らす地域で災害が起きるという点は共通しています。神戸での研修は、防災を特別なものとして切り離すのではなく、日常の延長線上で捉えるためのヒントを与えてくれます。

被災地という場所で学ぶことは、防災を机上の知識ではなく、自分たちの社会にどう根づかせるかを考えるきっかけになります。その実感こそが、各国に戻った後の行動につながっていきます。

助け合いが防災になるという考え方

日本の防災の特徴としてよく語られるのが、「自助・共助・公助」という考え方です。その中でも、研修を通して特に重視されているのが、地域の中で支え合う「共助」の存在です。

阪神・淡路大震災では、多くの人が地域のつながりによって救われました。家族や近所の人が声を掛け合い、助け合うことで被害を最小限に抑えられた例も少なくありません。その経験をきっかけに、神戸を中心に自主的な防災活動が広がっていきました。

コミュニティ防災の研修では、こうした地域の取り組みを通して、防災が特別な行動ではなく、日常の延長にあるものとして捉えられています。防災訓練や地域活動は、災害時のためだけでなく、普段から人と人との関係を築く役割も担っています。

また、研修の中では、震災の教訓を伝える施設である人と防災未来センターなどを通じて、過去の出来事を知識として学ぶ機会も設けられています。ただ知るだけで終わらせず、自分たちの地域では何ができるのかを考えることが、この学びの中心です。

国や文化が違っても、地域に人が暮らしているという点は共通しています。コミュニティの力をどう育て、どう活かすか。その視点は、世界各地で防災を考える上でも大きなヒントになっています。

防災を体験として伝えるための場

研修の中では、講義や視察だけでなく、防災を「体験」として感じる機会も大切にされています。そこに共通しているのは、防災を特別な出来事として切り離すのではなく、記憶として共有し、次の行動につなげていくという考え方です。

その一つが、地域と世界をつなぐ防災の取り組みです。地域の防災訓練に参加し、消火器の使い方や助け合いの動きを体験することで、日本の防災が制度だけで成り立っているわけではないことが伝わります。炊き出しなどを通じた交流も、防災が人と人との関係の中にあることを実感させる場になっています。

また、阪神・淡路大震災を追悼する行事では、国や文化の違いを越えて、同じ時間と場所を共有します。被災地を歩きながら過去に思いを寄せることで、災害を「遠い出来事」にしないための時間が生まれます。こうした経験は、研修を終えて自国に戻った後も、防災を考え続ける原動力になります。

さらに、楽しみながら学ぶ防災イベントでは、子どもから大人までが参加できる工夫が凝らされています。防災を難しいものとして構えるのではなく、身近で分かりやすいものとして伝える姿勢は、日本の防災教育の特徴の一つです。

これらの取り組みは、それぞれが独立したイベントというよりも、防災を記憶し、共有し、次の世代へと受け渡していくための一連の流れとして位置づけられています。その積み重ねが、研修全体の学びをより深いものにしています。

被災地・神戸から世界へ 防災の心をつなぐ取り組み

防災は、災害が起きた瞬間だけに必要なものではありません。
日々の暮らしの中で人と人が関わり、地域の中で役割を分かち合う。その積み重ねが、いざという時の行動につながっていきます。

神戸で行われている国際防災研修は、そうした考え方を静かに、しかし確実に世界へと広げています。震災の経験を過去の出来事として終わらせるのではなく、次に備える力へと変えていく。その姿勢は、日本が長い時間をかけて築いてきた防災文化そのものと言えるでしょう。

国や地域が違っても、災害に向き合う根本は変わりません。人が暮らす場所があり、守りたい日常がある。その当たり前を守るために、学びを続ける人たちがいます。

被災地・神戸から発信される防災の知恵と想いは、これからも世界各地で、それぞれの地域に合った形で息づいていくはずです。


JICA関西/国際防災研修センター(DRLC) 概要

JICA関西は、阪神・淡路大震災の教訓を世界の防災力向上に生かす取り組みの拠点として、神戸・HAT神戸を拠点に国際協力を行っています。

その中核を担っているのが、国際防災研修センター(DRLC)です。DRLCは、2007年に独立行政法人国際協力機構(JICA)と兵庫県の協力により設立され、日本が震災からの復旧・復興を通じて培ってきた経験や知見をもとに、開発途上国を中心とした各国の防災担当者に向けた人材育成型の研修を実施しています。

制度や技術だけでなく、地域のつながりや「共助」の考え方を含めて学ぶ点が特徴で、国内外の関係機関と連携しながら、防災分野における国づくり・人づくりを支える取り組みを続けています。

JICA関西:https://www.jica.go.jp/domestic/kansai/
国際防災研修センター(DRLC):https://www.jica.go.jp/domestic/kansai/drlc/

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