不動産クラウドファンディング(以下、不動産クラファン)という言葉を耳にする機会が増えてきました。不動産に興味のある人にとっては、ここ数年で馴染みのある言葉になってきたかもしれませんね。一方で、まだまだ「不動産クラウドファンディングって何?」と感じている人も多いでしょう。
市場はこの5年で約50倍に拡大。2023年には1,700億円超がクラウドファンディングを通じて募集され、投資家数も延べ20万人を突破した不動産クラウドファンディング市場について、クリアル株式会社の代表取締役社長 CEO 横田大造氏(一般社団法人不動産クラウドファンディング協会代表理事)がメディア向けラウンドテーブルを実施。いまなぜ不動産クラウドファンディングが伸びているのか、その背景について解説しました。
「オンラインで完結する不動産投資」──制度と時代が追い風に

横田氏は、法改正により、従来は対面でしか行えなかった契約がオンラインでも可能になり、少額から投資できる環境が整ったことが大きいと語ります。さらに2020年頃からは、個人資産運用が叫ばれる時代に。官主導による資産形成気運が醸成され、個人の資産形成への関心の高まりが、不動産クラウドファンディングの勢いを後押しします。
「これまで数千万円単位の資金が必要だった不動産投資を、1万円から始められるようにした。加えて、すべての手続きをスマホで完結できる。まさに“オンライン上で完結する不動産ファンド”です」と横田氏。
不動産クラウドファンディングの仕組みはシンプル。投資家がネット上で資金を出し、その資金で取得した不動産の賃料収益や売却益が分配されるというもの。一般的なクラウドファンディングをイメージすると、不動産クラウドファンディングの仕組みもそれほど難しくは感じないはずです。不動産クラウドファンディングの強みはまさにここなのでしょう。従来の不動産投資の煩雑さを取り除いた点に革新があるのです。こういった背景によって、「手軽に始められるミドルリスク・ミドルリターンの投資」として注目を集めています。
クリアルが描く「見える投資」──透明性で広げる信頼と共感

メリットがわかっていても、なかなか気軽に手を出せないのが不動産投資ではないでしょうか。面倒くさい、多額の資金が必要、手続きが複雑、本当に危険性はないのか……。こういった従来の不動産投資の課題を、「CREAL(クリアル)」は解消します。
クリアルの大きな特徴は3つ。手軽に、わかりやすく、安心・共感できるという点です。なかでも横田氏が力を入れて解説していたのが、情報の開示の徹底について。
物件の立地や賃料想定、売却時の利回り設定にいたるまで、動画や図解を用いて視覚的に説明しているのがクリアルの大きな特徴です。横田氏は「不動産投資の最大の課題は“情報の非対称性”。売る側だけが情報を握る構造を、テクノロジーで変えたかった」と、クリアルの強みを語ります。
「共感」を軸に広がるESG投資──社会に循環する新しい資産運用
扱う物件はマンション、オフィス、ホテル、保育園、高齢者施設など多岐にわたります。
中でも、保育園や地方創生ホテルといった社会的意義を持つESG不動産に積極的に取り組んでいるのが印象的でした。ここで3つ目の「共感」というワードが登場します。
横田氏はESG案件事例として、品川区での保育所開発運営を挙げました。保育所のような小規模な不動産開発は、従来であれば困難なものでしたが、クラウドファンディングによって共感を得たことでこれが実現しました。同様に、千葉県での小学校施設のホテルリノベーション事案も、「共感を軸にした投資」として国交省の好事例に挙げられています。
クリアルの投資家データによると、40代が最多。続く50代、30代とあわせて全体の7割を占めているとのこと。さらに女性投資家の占める割合が多いのも特徴的で、共感といったフックとの相性の良さも感じさせました。
一方で、横田氏は業界全体の課題にも言及します。高利回りをうたった一部の案件で情報開示の不備や延滞が生じた業界内の過去を踏まえ、協会では広告ガイドラインの策定やデータベース公開など、透明性向上のための自主規制を進めていると紹介しました。
「クラウドファンディングを健全に育てるには、“数字の高さ”より“情報の質”を競う時代にしていかなければならない」と未来を見据えます。
クリアルの取り組みは、単なる投資サービスを超え、個人の共感資金を社会に循環させる新しい金融の形を提示しました。不動産クラウドファンディングは、従来の投資のハードルを下げただけでなく、「資産形成を自分の手で選ぶ」新しい時代の入り口になりつつあるのかもしれません。
