好きな音楽を聴いたり動画を視聴したり、友人や家族との通話やオンライン会議など、イヤホンは日常生活に不可欠なアイテムとなっています。
近年は通勤や通学の移動中、家事の合間、ランニングやウォーキングなどさまざまなシーンで使用する人が増えています。その一方で、カナル型イヤホン(イヤーピースを耳の穴に挿入するタイプのイヤホン)の長時間使用により、耳の蒸れや不快感などのトラブルを引き起こすことも。
特にこれからの高温多湿な季節は、耳の不快症状が発生しやすい時期。UVケアや熱中症対策といった夏季対策に比べ、どうしても後回しにされがちな耳のケアは、適切な認知や対処が十分に行われていないのが現状です。
そんななか、NTTグループ初の音響ブランド「nwm(ヌーム)」を展開するNTTソノリティ株式会社は、 2025年5月15日(木)に「オープンイヤーと耳の不快に関するラウンドテーブル」を開催。
同社が実施した「“耳の蒸れ”に関する実態調査」の詳細やイヤホンと耳トラブル・耳の不快指数についての解説が行われました。
オープンイヤー型イヤホンは耳のトラブルを軽減できる
冒頭では、NTTソノリティ株式会社 マーケティング&クリエイティブ・コミュニケーションG グループ ディレクターの清野 裕美さんが登壇し、夏のケアで見落とされがちな耳ケアの実態や耳トラブルの現状について説明しました。
コロナ禍以降の新しいライフスタイルに寄り添った音のイノベーションで課題解決をしていくオーディオブランド「nwm(ヌーム)」。

その中で、耳をふさがないオープンイヤー型イヤホンの「耳スピ」シリーズは、次のような特徴を持っています。
・耳をふさがないことによる快適性
・周囲の音が聞こえることによる安全性
・スマホ注視などの課題を音で解決
・コミュニケーションロスを防ぐ
・仕事・プライベート、マルチタスクに最適化
・耳を清潔に保ちやすい

これからの梅雨や夏の季節において、「耳穴に入れないオープンイヤー型イヤホンは、耳を清潔に保ちやすい」と清野さんは話しました。
「最近テレビで話題になった『耳カビ』のように、夏の高温多湿な環境で長時間イヤホンを使うことはさまざまなリスクがあります。オープンイヤータイプなら、夏の耳蒸れや外耳炎、耳カビなどのトラブルを軽減できると期待されています」


NTTソノリティによる独自調査では、「梅雨や夏の時期にイヤホン・ヘッドホンを使うことがある」と答えた人は87.4%、1日1時間以上イヤホン・ヘッドホンを使用する人は約半数に上りました。

また、夏の暑さ・湿気への対策として意識的にケアしている部位については、UVケア・日焼け止めといった「顔」が61.6%、制汗スプレー・汗取りインナーなどを使う「脇・足」が38.6%にだったのに対し、耳蒸れケアは11.0%に留まりました。

さらに、3.2%が夏のイヤホン・ヘッドホン着用による「不快感」を経験しており、「耳のムズムズ」、「衛生面の不安」、「痛み・圧迫感」などの不快症状を感じているそうです。

これらに対し、「イヤホンやヘッドホン装着時の耳の不快感における対策はしているか」という問いでは、54.6%が「我慢している」と回答しており、耳の不快感は放置されやすいことがわかりました。

こうした状況にもかかわらず、「対策方法がわからない」「耳の不快感には気づいていたが放置していた」といった回答が上位を占め、耳の不快感は軽視されやすいうえに対策方法があまり知られていないことが浮き彫りになりました。
調査の結果を受けて、NTTソノリティは そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院 院長の内尾 紀彦先生監修のもと、耳の不快感を可視化できる「耳の不快指数」と「セルフチェックシート」を作成。
清野さんは「『耳の不快指数』がわかるセルフチェックシートを活用し、イヤホンの見直しや耳のケアをする新しい習慣を広めていきたい」と語りました。
耳のトラブルを放置すると外耳炎や耳カビの原因に
続いては、そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院 院長の内尾 紀彦先生が登壇し、「夏に増える耳のトラブル・耳の夏バテ対策」をテーマに発表を行いました。
そろそろ夏が到来し、汗をかきやすい季節がやってくるなか、「高温多湿な環境と、耳が濡れることが原因で『耳カビ』の発生が増えることが問題になっている」と内尾先生は冒頭で説明しました。

「最近では、動画コンテンツや音楽鑑賞などで、イヤホンやヘッドホンを長時間使用する機会が増加していることから、耳の中が蒸れやすくなり、『耳カビ』の発生をさらに助長していると考えられます」
また、イヤホンやヘッドホンを5時間以上使っている人の方が、そうではない人に比べて外耳炎や耳カビ、耳のかゆみといった症状が出るのが2.3倍に増えているというデータもあるそう。このように、イヤホンやヘッドホンの長時間使用は外耳炎のリスクになるとされています。
内尾先生は外耳炎を起こしやすい要因をいくつか挙げました。
①イヤホン・ヘッドホンの長時間利用
②綿棒で耳掃除をする
③夏場のプールなどの高温多湿な環境
特に②は、日本人であれば耳掃除をする機会が多いかもしれませんが、アメリカのガイドラインでは「耳掃除を綿棒で耳掃除してはいけない」と教えられているそうです。

「耳の入り口から鼓膜までの通り道を外耳道と呼び、そこに細菌が繁殖して炎症が起きるのが外耳炎です。正常な耳の穴は肌色ですが、外耳炎になると外耳道が赤く腫れ上がり、強いかゆみを伴います。主な症状は耳のかゆみや痛み、耳だれ、耳が詰まった感じ(耳閉感)、聞こえにくさ(難聴)などで、特にイヤホンを長時間つけて密閉された状態が長い時間続くとこういったリスクが上がってきます」(内尾先生)

耳のトラブルを放置すると外耳炎や耳カビが悪化する危険性があります。炎症が長引くと治りにくくなり、腫れや膿で耳の内部が塞がれると、聴力低下を引き起こすことも。さらに重症化すると、炎症が中耳や内耳、場合によっては骨にまで広がる「悪性外耳道炎」に発展する恐れもあります。「ただの耳のかゆみと軽視せず、違和感を感じたら早めのケアを心がけ、症状が続く場合は早めに医療機関を受診すること」と内尾先生は強調しました。
セルフチェックシートの活用で耳の状態を把握することが重要

次いで、清野さんと内尾先生によるクロストークが行われました。NTTソノリティが独自に開発したセルフチェックシートは15項目に分かれており、イヤホンやヘッドホンの使用状況、自覚症状、対策経験、医療経験という4つの観点からチェックするものになっています。
自覚症状については「耳の中がジメジメ湿った感じ」「耳垢が異常に湿る」「耳だれが出る」といったものから、外耳炎の典型的な症状である「ムズムズしたかゆみ」などが見られ、特に蒸れやすいのに放置したり過去に外耳炎や耳の感染症を経験したことがある人はリスクが高まるといいます。「予防のためには、耳を清潔に保つことが何よりも重要で、耳の違和感を軽視しないことが重要」だと内尾先生は述べました。


「耳の不快指数」チャートについては、一番上の快眠が非常に良好で理想的な耳のコンディションだとすると、軽い湿気やムズムズした感じが潜在不快ゾーンで、外耳炎の初期症状が疑われるとのこと。
耳の蒸れ感や違和感を自覚しているということは、耳のバリア機能が弱まり、感染を起こしかけているということを意味するそうです。さらに蒸れてかゆみや痛み、違和感が続くと外耳炎の1歩手前になり、軽度の外耳炎や皮膚炎の可能性が疑われるので、具体的な対処が必要となります。
あとは普段と違う耳垢や分泌液が出たりした場合など、明らかに異常な症状が見られた際は外耳炎や湿疹、真菌症などを既に発症している恐れがあるので、速やかに耳鼻科へ受診することが大切になります。

「今回の全国男女500名を対象とした調査で、耳の不快指数チャートを実施した結果、10人に1人が『予備軍ゾーン』に該当するということが分かりました。そのなかにある『耳ぐじゅ予兆』とは、例えるなら生乾きの靴下や長靴の中、あるいは湿ったタンスや押し入れのような状態です。
つまり、耳の中がじめじめと湿っている状態を指します。耳の中でこの湿気と熱が続くと、カビが繁殖しやすくなり、耳蒸れから耳カビへと進行してしまうリスクがあるのです。過去に外耳炎や耳カビなどの感染症を経験したことがある人は慢性化するリスクが高まるため、より一層の注意とケアが必要です」(内尾先生)
さらにイヤホンの表面には、便座の約20倍もの細菌が付着しているというデータもあることからも、イヤホンを清潔に保つことがいかに重要であるかが伝わってきます。
また、日本人は耳かきをするのが好きな人も多いといわれていますが、内尾先生は「一番耳の健康に良いのは耳掃除をしないこと。もしやるとしたら、月1回から2回程度、見える範囲で優しくぬぐう程度で十分」だと語りました。
清野さんは「夏は高温多湿を避けるため、イヤホンの長時間使用は避けるとともに、清潔に保つことも大事。外耳道を塞いでしまうと耳蒸れと耳カビのリスクが上がるため、なるべく塞がないオープンイヤー型がおすすめ」だと話しました。
オープンイヤー型イヤホンはイヤーピースがなく、イヤホンを清潔に保ちやすいのが利点ですが、ちょっと汗が気になる場合は綿棒や固く絞った布で優しく拭き取ると綺麗になるとのこと。
「イヤホンの圧迫感がなく、周囲の音にも気づけたりするので、個人的には夏に限らず、通年利用いただけるのがオープンイヤー型イヤホンのメリットだと思っている」と清野さんはコメントしました。
最後におふたりがメッセージを伝え、クロストークを締めくくりました。
「夏になると耳蒸れと耳カビが増えてきて、症状が悪化すると治療にも時間がかかるので、そうなる前に早期発見と耳鼻科の受診をおすすめします。今回のチェックシートは、早めに耳の症状に気づく手助けにもなりますので、ご参考にいただければ幸いです」(内尾先生)
「エンタメの多様化、普段の仕事などでイヤホンの長時間利用が増えていますが、耳の不快感を我慢してしまうと、思わぬリスクが生じる可能性があります。今回ご紹介したセルフチェックシートを活用することで耳の状態を把握し、耳の不快感を解消することで生活の質(QOL)向上につながると信じています」(清野さん)