映像の中に入り込んだような感覚を味わえる「イマーシブ体験」は、テーマパークやイベント、展覧会など、さまざまな場所で身近になりつつあります。大きなスクリーンに包まれたり、VRゴーグルを着けて仮想空間を歩いたりと、その楽しみ方も一つではありません。では、スクリーンがつくる空間とVR技術を組み合わせると、キャラクターとの出会いはどのように変わるのでしょうか。
ブラザー工業株式会社が開発を進める没入空間創造システム「ROOMDIVE(ルームダイブ)」が、2026年6月27日と28日に開催された「サンリオフェス2026 in みなとみらい」に登場しました。会場では体験コンテンツ「ハローキティ MRキャラクターグリーティング」に活用され、ハローキティが来場者のいる空間へ会いに来るような、新しい触れ合いの時間が提供されました。
ハローキティが会いに来る新しいグリーティング

「ハローキティ MRキャラクターグリーティング」は、ROOMDIVEによってつくられた特設空間で、ハローキティとの交流を楽しめるバーチャルコンテンツです。
登場するハローキティは、サンリオの常設型VRテーマパーク「Virtual Sanrio Puroland」の世界から来場者のもとへやって来ます。参加者は目の前に現れたハローキティの頭をなでたり、ハイタッチをしたりと、キャラクターとの距離の近さを感じられる仕組みです。
カーブしたパノラマスクリーンに映像を投影することで、視界いっぱいにサンリオの世界が展開されます。スクリーンによるROOMDIVEの没入空間とVRゴーグルなどの技術を融合し、見て楽しむだけではない、触れ合いを伴う体験へとつなげています。
“自分が入る”から“キャラクターが現れる”へ
一般的なVR体験では、ゴーグルを着けた人がキャラクターのいる仮想空間へ入り込む形がよく見られます。今回のコンテンツで特徴的なのは、ROOMDIVEがつくるイマーシブ空間にいる体験者のもとへ、キャラクターが現れるように感じられる点です。
参加者を取り囲むようなスクリーン上の世界と、ゴーグルを通して見えるハローキティの姿が重なり、現実の会場とバーチャル空間の境界をやわらかくつないでいます。自分だけが別の場所へ移動するのではなく、親しみのあるキャラクターが同じ空間へ飛び出してくる感覚が、従来とは異なるグリーティングを生み出しました。
キャラクターを間近に感じながら実際に手を動かせることも、没入感を高める要素です。写真撮影やステージ鑑賞とは異なる形で、来場者自身が体験の一部になれる内容だったといえそうです。
ブラザーとGugenkaが追求したリアルな空間

コンテンツシステムのソフトウェア開発を担当したのは、XR技術を活用したデジタルコンテンツ制作を手がける株式会社Gugenkaです。同社はサンリオのグループ会社で、ブラザーと協働しながら、よりリアルに感じられる空間づくりを進めました。
スクリーンに広がる映像だけでなく、VRゴーグルを通じたキャラクターの動きや、触れ合っているように感じられる演出を組み合わせています。異なる技術を一つの体験として自然につなげることで、ハローキティがすぐ近くにいるような感覚を形にしました。
開催期間中の2日間で、およそ2,300人が同コンテンツを体験しました。ブースの前には多くの人が並び、ハローキティとの新しい触れ合いを楽しむ来場者の姿が見られたといいます。体験者の多さからも、キャラクターとイマーシブ技術を組み合わせた試みに寄せられた関心がうかがえます。
大掛かりな設備を抑えた没入空間づくり

ROOMDIVEは、空間と映像を一体化させ、好みの世界へ入り込んだような体験をつくるシステムです。体験者を囲うように配置する「カーブスクリーン」に、ブラザー独自の「空間投影システム」と「コンテンツマネジメントシステム」を組み合わせて、没入空間を生み出します。
大掛かりな設備を必要とせず、比較的手軽に導入できることも特徴とされています。イマーシブ体験というと、専用施設や広い会場を想像しがちですが、導入の負担を抑えられれば、イベントや店舗をはじめ、より多様な場所で活用できる可能性があります。
今回のGugenkaとの取り組みは、ROOMDIVEと外部の技術やコンテンツを組み合わせることで、どのような体験が生まれるのかを示す一例となりました。
キャラクターとの距離を変える没入技術
今回の体験で印象的なのは、イマーシブ技術が映像の迫力を高めるだけでなく、キャラクターとの距離感そのものを変えている点です。仮想空間へ出かけていくのではなく、ハローキティが自分のいる場所まで会いに来てくれるという見せ方には、グリーティングらしい親しみやすさがあります。頭をなでる、ハイタッチをするといった素朴な動作が加わることで、技術に詳しくない人でも感覚的に楽しみやすい体験になったようです。大掛かりな設備を抑えながら空間をつくれるROOMDIVEが、キャラクターや作品、場所ごとの表現とどのように結びついていくのかも気になるところです。デジタルと現実の間を自然につなぐ工夫が、身近なイベントで新しい思い出を生むきっかけになるかもしれません。
