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RSウイルスから赤ちゃんを守る 妊婦向けワクチン定期接種が原則無料に

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ免疫が十分に備わっておらず、さまざまな感染症に対して無防備な状態にあります。その中でも、多くの乳幼児が一度は経験するとされる「RSウイルス感染症」は、身近でありながら注意が必要な感染症のひ
リアルプレス 2026年5月11日

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ免疫が十分に備わっておらず、さまざまな感染症に対して無防備な状態にあります。その中でも、多くの乳幼児が一度は経験するとされる「RSウイルス感染症」は、身近でありながら注意が必要な感染症のひとつです。風邪のような症状から始まることが多い一方で、場合によっては重症化し、入院が必要になるケースもあります。しかし、そのリスクや影響については、意外と知られていないのが現状です。特に「健康な子どもでも重症化する可能性がある」という点は、多くの保護者にとって見落とされがちなポイントかもしれません。

こうした背景のなか、近年注目されているのが、妊婦が接種することで赤ちゃんを守る「母子免疫ワクチン」という新しい選択肢です。生まれる前から免疫を届けるという考え方は、RSウイルス感染症への備えとして関心を集めています。

今回は、このRSウイルス感染症の実態と予防の考え方について整理するとともに、妊婦向けRSウイルスワクチンの意義や安全性について、よしかた産婦人科院長の善方裕美先生に話を伺いました。

うちの子は大丈夫?」と思う前に知っておきたいRSウイルス

RSウイルス感染症は、乳幼児にとって非常に身近な感染症のひとつです。ほぼすべての新生児・乳幼児が2歳までに一度は感染するといわれており、生まれたその日から感染リスクにさらされているとも考えられています。

一方で、その症状は単なる風邪にとどまらず、重症化するケースも少なくありません。実際に、医療機関を受診した2歳未満の乳幼児のうち約25%が入院に至っており、その中でも6カ月未満の赤ちゃんが約40%を占めているとされています。さらに注目すべき点として、入院に至った乳幼児の90%以上が基礎疾患を持っていないという報告があります。つまり、特別な持病がなくても、誰にでも重症化し入院に至る可能性がある感染症であるといえます。また、乳幼児がRSウイルスに感染した場合、入院時には保護者の付き添いが必要となるケースも多く、家族にとっての負担も決して小さくはありません。こうした点からも、RSウイルス感染症は単に子ども本人だけでなく、家庭全体に影響を及ぼしうる存在といえるでしょう。

入院後にも影響が?長期的リスクと予防の重要性

RSウイルス感染症の影響は、感染時だけにとどまらない可能性も指摘されています。乳幼児期に入院を経験した子どもは、その後の健康にも影響が見られることがあるとされており、長期的な視点でのリスクにも目を向ける必要があります。具体的には、3歳時点における入院経験率は、感染歴のない対照群では1%であるのに対し、RSウイルス感染による入院経験がある子どもでは23%と大きな差が見られています。さらに、7歳時点では感染歴のない対照群3%に対して30%、13歳時点では感染歴のない対照群5.4%に対して37%と、入院経験や喘息の発症率が高い傾向が報告されています。こうした背景を踏まえると、RSウイルス感染症は「一度かかって終わり」の感染症ではなく、その後の健康にも影響を及ぼす可能性のある存在として捉える必要があるといえるでしょう。

現在、こうしたリスクへの対策として注目されているのが、妊婦が接種することで赤ちゃんに免疫を届ける母子免疫ワクチンです。このワクチンはすでに世界65カ国以上で承認されており、早産リスクへの懸念についても大規模な調査によって安全性が確認されています。生まれる前から赤ちゃんを守るという新しい選択肢は、こうしたRSウイルス感染症のリスクを踏まえたうえで、今後ますます重要な役割を担っていく可能性があるといえそうです。

母子免疫ワクチンとは? 専門医に聞く仕組みと意義

母子免疫ワクチンという新たな選択肢は、どのような仕組みで赤ちゃんを守るのでしょうか。また、妊婦向けに定期接種化されたことには、どのような意味があるのでしょうか。

今回は、よしかた産婦人科院長の善方裕美先生に、母子免疫ワクチンの仕組みや安全性、そして妊婦が知っておきたいポイントについて詳しく話を伺いました。

――今回、RSウイルスワクチンが妊婦さん向けに定期接種化されることについて、先生はどう受け止めていらっしゃいますか?
とても、良かったと思っております。公費になる前から、ご希望のある妊婦さんに接種してきましたが、無料になることで受けやすくなると思います。

――母子免疫ワクチンの仕組みと有効性について教えてください。
母子免疫ワクチンとは、妊婦が接種すると、母体内で作られた抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生まれた乳児が出生時から予防効果を得ることができるワクチンのことを指します。他に百日咳、インフルエンザワクチンなどもあります。

RSウイルス感染症 母子免疫ワクチンは赤ちゃんの生後6か月までのRSウイルス感染症による重症化リスクを軽減します。
詳しい有効性につきまして、以下の厚労省のサイトPDFが分かりやすいです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001659042.pdf

――ワクチンの副反応と赤ちゃんへの影響など安全性について教えてください。
RSウイルスワクチン「アブリスボ®筋注用」は、妊婦さんや赤ちゃんに重大な副作用がないことが臨床試験で確認されています。接種部位の軽い痛みや発赤などの軽度な副反応が報告されていますが、一時的なものです。痛みは40%程度ありますが、2,3日で消失することがほとんどです。疲労46.1%、頭痛31.0%、悪心20.0%と報告されましたが、プラセボと同等だったため、注射すること事態の影響と考えられます。赤ちゃんへの影響として、低出生体重児、早産児、の発生率はプラセボと同等であり、重大な副作用はないと報告されています。

――妊婦さんは基本的に皆さん接種した方がよいと考えてよろしいでしょうか。また、接種できないケースや、注意が必要な妊婦さんはいらっしゃいますか?
以下の方は、接種を受けることができません。


接種を受けられない方
・この予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことがある方
・その他、予防接種を行うことが不適当な状態にあると医師が判断する方

また、以下のような場合は接種を受けることができませんので、治ってから受けるようにしてください。


・発熱している。
・重篤な急性疾患にかかっている。

以下の方は、接種にあたって注意が必要なので、あらかじめ医師に相談してください。


接種に注意が必要な方
・心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患を有する方
・これまでに、予防接種を受けて2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方
・けいれんを起こしたことがある方
・免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
・組換えRSウイルスワクチン(母子免疫ワクチン)の成分に対してアレルギーを起こすおそれのある方
・妊娠高血圧症候群の発症リスクが高いと医師に判断された方や、今までに妊娠高血圧症候群と診断された方
・血小板減少症や凝固障害を有する方、抗凝固療法を実施されている方
(以上、厚生労働省HPより)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rs/index.html

――SNSではワクチン接種に批判的な声もあるようですがどう思われますか? また、「新しいワクチン、接種しても大丈夫?」と迷う妊婦さんには、先生はどんな言葉をかけますか?
『新しいから不安』と思うのは、赤ちゃんを大切に想っている証拠です。ただ、今回公費で定期接種化されたということは、それだけ『赤ちゃんを守るために重要であり、安全性と有効性がしっかり確認されている』ということです。お母さんから赤ちゃんへ、生まれる前の最初の『免疫のプレゼント』として、ぜひ前向きに受けてくださいね!


善方裕美(よしかたひろみ)
よしかた産婦人科院長/横浜市立大学産婦人科 客員教授。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本女性ヘルスケア専門医などの資格を有する。横浜市立大学附属市民総合医療センターでの外来診療にも携わり、産婦人科領域を中心に幅広い診療を行う。約30年にわたり女性ヘルスケアに従事し、著書執筆やメディア出演、講演活動などを通じた情報発信にも力を入れている。
よしかた産婦人科HP URL:https://www.yoshikata.or.jp/

RSウイルス感染症は、多くの乳幼児が経験する身近な感染症でありながら、重症化や入院のリスクを持つ存在です。特別な持病がなくても発症しうることを考えると、決して他人事ではないといえるでしょう。

今回の内容を通じて見えてきたのは、「知らないままでいること」ではなく、「知ったうえで選ぶこと」の大切さでした。母子免疫ワクチンは、生まれてくる赤ちゃんを守るための選択肢のひとつとして注目されています。接種はあくまで個々の判断によるものですが、その仕組みや安全性を理解することで、より納得感のある選択につながるはずです。「免疫のプレゼント」という考え方も、その一つのヒントといえるのではないでしょうか。

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