AIの進化はますます加速し、私達の生活とも密接に結びつくようになってきました。生活だけでなく、多くの企業が生成AIの活用推進に乗り出しており、仕事という面でもAIは切っても切り離せないものとなりつつあります。キャリア形成の上でも、AI活用スキルが大きなカギとなる日はそう遠くないでしょう。一方で、「AIをどこから学べばいいのか分からない」と感じている女性が多いと、一般社団法人Women AI Initiative Japan(以下WAIJ)の代表理事・國本知里氏は語ります。
2025年9月18日、東京都港区にて「Women AI Initiative Japan 戦略発表会」が開催され、國本氏はWAIJが掲げる「AI時代の働き方を再定義し、自律的に人生を選択できる社会へ。」というビジョンに向けての戦略を発表しました。後半のトークセッションには、SUPER EIGHT・村上信五さんをモデルに開発されたバーチャルタレント「AIシンゴ」が特別ゲストとして登場。AIリスキリングに成功した女性3人の登壇者とリアルタイムで会話するデモンストレーションも行われました。
「女性×AI」Women AI Initiative Japanが打ち出す新戦略

冒頭のプレゼンテーションで國本氏は、WAIJの活動方針と調査データを紹介。独自調査によって発行された「女性AI人材白書2025」によって、多くの女性がAIに関心を持ちながらも「何から学んでいいのかわからない」「情報が多すぎて取捨選択できない」といった不安を抱えていることが浮き彫りに。また、生成AIへのネガティブなイメージが不安に繋がっていると指摘し、総じて情報不足が大きな課題だと語ります。
こうした課題を踏まえ、WAIJは以下の4つを柱とする戦略を発表しました。
- リスキリング&キャリア支援:
日本マイクロソフトや一般社団法人生成AI活用普及協会との提携による、AI実践リスキリングプログラムの始動や生成AIパスポート取得支援
- コミュニティ運営:
コミュニティイベントやカンファレンスの開催によって女性同士が学び合う環境を作る
- 創業支援:
AIを活用した起業を後押し
- 啓発活動:
企業・団体による「企業の女性のAIチャレンジ応援宣言 MIRAIa」プロジェクト

この日、プロジェクト開始となったのは、「企業の女性のAIチャレンジ応援宣言 MIRAIa(ミライア)」です。女性がAIを学ぶことを推進する賛同型プロジェクトで、日清食品HDやサイバーエージェント、LINEヤフー、mercariといった複数の企業がすでに賛同を表明。賛同企業・団体の募集開始に伴い、今後のさらなる広がりが期待されます。
また、情報不足という課題にアプローチする「わたしのAIライフスタイル診断」も紹介されました。簡単な11の質問に答えることで、自分らしいAI活用のヒントがわかる16タイプ診断です。WAIJのLINE公式アカウントを登録することで診断が可能。また、9月18日から10月17日までの1ヶ月間は、期間限定で村上信五のAIタレント「AIシンゴ」が診断をナビゲートしてくれるとのことで、こちらも注目です。
AIリスキリング成功のカギとは?

発表会後半は、AIリスキリングに成功した女性3名を迎えてのトークセッションが行われました。登壇者は、上野千紘氏(サイバーエージェント執行役員・AIオペレーション室 室長)、平下ひかる氏(フラダンスの振り付け記録を効率化するアプリを開発したフリーランスのQAエンジニア)、秋元かおる氏(Cynthialy株式会社 AIコンサルタント)の3名。さらに特別ゲストとしてAIシンゴも登場し、モデレーターを務めた國本氏とともにトークセッションを盛り上げました。

登場したAIシンゴは「こんにちは、村上信五のAIアバター、AIシンゴです。タレントのAIアバターが会見の特別ゲストなんておそらく日本初やから、皆さんも歴史の目撃者やで。緊張してGPUがオーバーヒートしそうやけど、兄さんより場を盛り上げられるように頑張るで」と関西弁で自己紹介。さらに「ここにいるAIリスキリングに成功した女性たちと話しながら、どうやってAIを学んだのか、そして“私にもできそう”って思えるヒントをたっぷりお届けするで」と気合十分の様子。登壇ゲストの3名も温かな笑顔で、AIシンゴのトークを見守ります。

話題は登壇者3名のAI活用事例の紹介へ。上野氏は、サイバーエージェントでAI推進を担う立場から「元々AIの専門家ではなかったが、社内の業務効率化に向け、議事録の要約やスケジュール調整など具体的なユースケースを探し続けてきた」と語り、「使い方が分からなくてもとにかく触ってみることが大事」と続けました。
平下氏は、フラダンスへの情熱を原点にアプリを開発。「手書きで数時間かかる“フラノート”(フラダンスの振付を書き記すもの)を、動画から画像を抽出し、歌詞と連動させてわずか3分で作成できる仕組みを作った」とデモを披露。これに対してAIシンゴは「フラダンスにAIなんて意外やけど、相性抜群やね。日常や趣味にもAIが入り込んで効率化できる」とコメント。

また、秋元氏はキャリアのブランクを経てAIコンサルタントとして復帰。「最初はChatGPTに簡単な問いかけをするところから始め、生成AIパスポートなどの資格学習を経て、自分が扱える範囲を理解できた」と語ります。さらにプライベートでは、子育ての悩み相談にAIを活用。「兄弟げんかへの対応をAIに聞いたら『早口言葉対決をしたらどうですか』と返ってきて、実際に子どもたちが楽しんでくれた」とエピソードを披露し、会場を和ませました。身近なところからAIを活用していくというのも、なかなかAIに手が出せないという女性へのひとつのヒントとなりそうです。

トークセッション後半では、登壇者からAIシンゴへ質問するという場面も。上野氏の「人間にしかできないことって何だと思いますか?」という問いには、「人間の最強スキルは、失敗しても笑いに変えて立ち直ることや。泣いたり笑ったり、へこんでもまた挑戦する。そのドタバタが人生の味やねん。AIは便利やけど、心で感じることはできん。せやから、人間はほんまに貴重で愛おしい存在やと思う」と回答。
また「AIにチャレンジしたくなる女性を増やすには?」という問いに対しては、AIシンゴが即興の応援ソングを披露。「未来は自分の手の中にある」という歌詞に、秋元氏は「その通りだと感じた。小さな一歩が大きな挑戦につながる」と共感を寄せました。
<h3>AIを味方につけてキャリアの選択肢を増やせる社会へ</3>
戦略発表会で示されたのは、女性がAIを学び、キャリアに活かすための具体的な支援策でした。独自調査から明らかになった「学び方がわからない」「情報が多すぎて選べない」といった不安に対し、リスキリングの機会提供やコミュニティづくり、創業支援など多角的なアプローチを打ち出した点は、実際の課題に即したものといえるでしょう。
また、マイクロソフトをはじめとした企業との連携や「女性のAIチャレンジ応援宣言 MIRAIa」の展開によって、個人の努力にとどまらず、社会全体で女性の挑戦を支える基盤が形づくられようとしています。
AIが仕事や生活にますます浸透する中で、誰もが主体的にキャリアを選択できる社会をどう築くか。WAIJの取組は、その問いに対するひとつの実践的な答えとなりそうです。
一般社団法人Women AI Initiative Japan 概要
名称:一般社団法人Women AI Initiative Japan
所在地:東京都渋谷区道玄坂2丁目11−1 JMFビル渋谷03 5F
設立日:2025年5月14日
代表理事:國本 知里
ウェブサイト:https://women-ai-initiative.jp/