若手俳優として注目を集める古川琴音が、前作の写真家・松岡一哲と7年ぶりにタッグを組み、待望の写真集『CHIPIE』をリリースした。彼女が映画祭で訪れたドイツ・フランクフルトでの5日間を、あたかもドキュメントのように写しとった写真集。本人にインタビューした。
――購入された方に写真集のお渡し会をされたそうですが、終えられていかがでしょうか。
写真家の松岡一哲さんと作った一冊目の写真集の時にサイン会、お渡し会はあったのですが、俳優は日頃ファンの方たちと一対一でお話をする機会が滅多にないので、その時以来のものになりました。なんて温かい空間なんだろうと思いました。みなさんの中にはわたしのお芝居が好きで来てくださった方もいれば、一哲さんの写真が好きで来てくださる方もいて。
今回の写真集を早く見たいとずっと待ってくださっていた方たちばかりだったので、初めて会う方も多かったのですが、親近感を覚えました。どこか通じるものがある気がしていて、とてもパワーをもらいました。
――写真集の『CHIPIE』というタイトルは、日本語で「おてんば」という意味だそうですね。
この言葉はわたしが選びました。おてんば、小悪魔という言葉があり、フランスでは飼い猫によくつけられる名詞だそうで、フランクフルトで撮影が終わった後でタイトルを何にするか話していた時に思いついたんです。でもそのこと自体をわたしは忘れていて写真集がだんだんカタチになってそろそろ題名を決めましょうとなった時にみなさんが覚えてくださっていて。響きと意味合いを含めて、とても好きなタイトルになりました。
――ドラマや映像作品ではなく、写真集が世に出ていくことについて、ご自身にとってはどのような感覚ですか。
こうして作品ができて自分の手元に置いておけることで、ひとつ満足しているのですが、それは表現者としてよくないかなと思いつつ。この作品を撮るにあたって一哲さんとお話していたことは、街角で誰を撮ったか分からないような写真集にしたいということだったんです。古川琴音というイメージとは別に、読まれる方が新しい妄想や、自分のイメージを重ねていただける写真集になったのではないかなと思います。なので、年齢・性別関係なく、いろいろな方に受け入れられる作品になっていたら嬉しいです。わたし自身もみなさんの反応が楽しみです。
――日々ご活躍を作品を通して拝見していますが、俳優という仕事について今ご自身としては、どのような心境で向き合っていらっしゃいますか。
これまでいろいろな役をいただいたけれど、まだ自分が見ていない自分がいるような気がしていて、そこを破くタイミングを待っている感じなんです。もちろん、出会った作品、すべてに一生懸命取り組みますが、白馬の王子様を待っている女の子の気持ちに近いような感じなのか、自分を変えてくれることが、まだもうひとつ起こるかもしれないという期待があります。
――それは以前にもあった感覚ということでしょうか。
ありました。ただ、自分が思い描いていたような180度一気に変化したということではなく、その作品に出会って以降、じわじわといい方向に変化してきたというイメージですかね。
――ドラマや映画を拝見していると、さまざまな表情で観る方たちを魅了されるお仕事だなと思いますが、たくさんの違うキャラクターを演じることで大切なことは何でしょうか。
そう見えていることが理想なのですが、ひとつ自分の中で、身体が使えることが強みだなと思っているんです。たとえば具合が悪い時の姿勢は、重心の捉え方ひとつで変わるんです。全部がキラキラと見える姿勢とも違い、姿勢をちょっと動かすだけでも性格や生活環境まで表現できるし、話し方のクセだったり、衣装だったり、いろいろな要素を混ぜると、自分だけれど自分じゃないものになれるんです。だから、自分ひとりでキャラクターを作るのは難しいけれど、脚本をはじめ、役作り、いろいろな人の力が合わさって違う人格に見えていくのかなと思っています。
撮影:松岡一哲 @ittetsumatsuoka
発行:講談社 @kodansha_jp
発売日:2025年7月3日(木)