梅雨明け前にもかかわらず、すでに30度を超える真夏日が各地で記録されるなど、今年の夏は“本番前”から厳しい暑さが続いている。例年なら8月にピークを迎える夏バテだが、今年は5月からすでに気温は夏、既に夏バテを感じている日とも多いのではないだろうか?特に酷暑が予想される今年は夏本番前から早めの対策が重要だ。
食欲がわかない、だるい、疲れが取れない…。こうした夏バテの背景には、単なる暑さだけでなく、水分・ミネラル不足、自律神経の乱れ、腸内環境の悪化、免疫力の低下など、体の内側で起こるさまざまな変化が関係している。
そこで注目を集めているのが、“ヌメヌメした食材”を日々の食事に取り入れる「ヌメ活」だ。
「ヌメ活」とは?
ヌメ活とは、モズク・オクラ・なめこなど、“ヌメヌメした食材”を日常的に取り入れて、腸や免疫の健康をサポートする新習慣。“ヌメヌメした食材”には腸内環境の改善や免疫力の向上、抗炎症作用、代謝促進など、様々な健康効果が期待できる食習慣。
ヌメヌメした食材が持つ様々な健康成分を組み合わせて、日々食事に取り入れることで幅広い年代や生活課題に対応できると話題になっている。
ヌメ活の特徴
「ヌメ活」は、スーパーなどで買える食材で実施可能のため、日々の食事にプラスするだけなので手軽に始められるのが嬉しいポイント。また、「ヌメ活」は、食品の免疫力を中心に食品の機能性について研究している専門家、九州大学の広瀬直人教授、宮﨑義之准教授により提唱されたもので、安心感がある。また、医薬品のように一時的に取り入れるのではなく、日々の生活に根付くライフスタイルとして浸透することで、日本人の健康の底上げを目指しているという。
主なヌメ活食材の成分と健康効果

「ヌメ活」に用いられる“ヌメヌメした食材”=「ヌメ活食材」は、それぞれが異なる健康効果を持っているため、バランスよく取り入れることで免疫力向上や腸内環境改善、抗酸化作用などのメリットを得ることができる。特にヌメ活の中心になるのは、免疫力向上が期待できる「フコイダン」という成分で、オキナワモズク、メカブに多く含まれているという。フコイダンを軸に、他のヌメ食材を合わせたり、不足している栄養を補うことで様々な健康効果が期待できるという。
今年の夏は夏バテに要注意!
夏バテといえば8月だったのは今や過去の話。今年は5月後半から夏バテ第1波がくると言われ、そして、6月以降は真夏日がくると予想されています。関東では6月上旬に梅雨入りしましたが、6月中旬には35度を超える真夏日を記録、「梅雨前線が消えた」という報道もあり、今年の夏は例年よりも真夏日が多くなることが予測されています。
夏バテになると、暑さや冷房、寝不足などの影響で、体にさまざまな不調が現れます。たとえば、食欲が出ない・疲れが取れない・だるさが続く・頭がボーッとする・イライラする・眠りが浅くなるといった症状が出やすくなり、病気の原因になるとされています。
夏バテ対策に「ヌメ活」が効く理由
夏バテは暑さによる「疲労感・だるさ」だけでなく「免疫力の低下」「自律神経の乱れ」にも深く関連しており、ヌメ活の特徴がそれぞれの症状に対応できるとのこと。
①免疫力の低下
ヌメ成分であるフコイダン・βグルカンが免疫に効果あり!身体の免疫力を高めることで、ウイルスや細菌に対する抵抗力をサポート、夏風邪など夏ならではの病気の予防にも効果的。
②自律神経の乱れ
夏バテすると腸の働きが低下し、栄養吸収や自律神経にも影響が出てしまう恐れも。ヌメり成分である「水溶性食物繊維」により腸内環境が改善!腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経と密接に関係。腸内バランスを整えることで、自律神経の安定にもつながります。
③疲労感・だるさ
ヌメ成分であるアルギン酸やポリグルタミン酸により代謝サポートと栄養吸収の効率化!
食欲不振で不足しがちな栄養を補い、疲労回復・スタミナ維持にも効果的です。
夏におすすめの“ヌメ活食材”
モズク

ミネラルが豊富なモズクには、「フコイダン」という免疫力をアップする効果が期待できる成分が含まれている。生モズクは5月に沖縄で収穫され、全国に並ぶのは6月頃。沖縄ではてんぷらなどの加熱料理のほか、そうめんのように食べることも。
オクラ

夏野菜代表のオクラ。ヌメヌメは「ペクチン」という成分で、腸内環境の改善にくわえて、満腹感をもたらすことによる血中コレステロールの低下や血糖値の抑制が期待できる。同じくペクチンでヌメヌメしているモロヘイヤも葉物なのに夏が旬で栄養価が高くおすすめ。さっと湯通ししてサラダに。
なめこ

天然物は実は夏に多いなめこ。ヌメヌメ成分以外にも「βグルカン」という免疫力を強化する(免疫賦活効果)栄養素が入っている。モズクのフコイダンと組み合わせるとより免疫力がアップ。味噌汁や冷やしおろし和えで。
■ヌメ活実践のコツ
・食べる頻度
ヌメリ成分を含む食品(モズク、めかぶ、なめこ、山芋、オクラなど)は、医薬品のように「一度食べれば終わり」というものではありません。少なくとも一日一回の継続的な摂取がおすすめ。
・食べる量
ヌメリ成分の正体は、主に水溶性食物繊維(フコイダンなど)。厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人における1日の食物繊維の目標摂取量は25g以上とされています。
ただし、これはすべてをヌメリ食材から摂る必要はありません。他の野菜や穀物なども含めてバランスよく摂取し、ヌメヌメ食材で“足りない分を補う”イメージで取り入れていくと良いでしょう。
・食べ方(組み合わせの工夫)
ヌメリ成分は、腸内環境の改善や血糖値の上昇抑制などに効果が期待される一方で、それだけで栄養が完結するわけではありません。
たとえば、
・たんぱく質と合わせて
・ビタミン豊富な野菜と合わせて
といったように、ほかの食材と組み合わせて補完し合うことで、より健康効果を高めることができます。
・ヌメ活食材は低カロリーなのでダイエット中にもおすすめ。
(モズク:6~7kcal/100g、なめこ:15kcal/100g、オクラ:30 kcal/100g)
・ヌメヌメ成分にはフコイダンなど熱に強いものが多いですが、ビタミン類や乳酸菌は熱に弱いため、あまり加熱しないことがベター。
すでに暑い日が訪れている今年は、早期からの夏バテ対策が重要だ。毎日の食事にプラスするだけで、腸内環境・免疫力・ミネラル補給をサポートしてくれる「ヌメ活」で、夏バテに負けない体を目指してみては?
専門家プロフィール

広瀬 直人氏
九州大学大学院 農学研究院 食品免疫機能分析学寄附講座 教授
大阪府立大学農学部卒。食品メーカー勤務を経て1999年に同大大学院農学研究科で博士号取得。同年より沖縄県農業研究センターおよび工業技術センターにて黒糖製造に関する研究、農産物の有用成分利用など加工利用や鮮度保持に関する研究、企業への技術指導に従事。2022年鹿児島県立短期大学生活科学科食物栄養専攻教授、2024年より現職。ヴェントゥーノ社が九州大学に持つ寄附講座にて、食品が持つ免疫機能の利用を中心に幅広い研究を実施している。

宮﨑 義之氏
九州大学大学院 農学研究院 食品免疫機能分析学寄附講座 准教授
九州大学大学院農学研究院で博士号取得後、同大医学部研究員、佐賀大学医学部助教。2016年に九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門准教授に就任。国内で初期からフコイダンの免疫メカニズムを解明する研究に携わり、現在はヴェントゥーノ社と共同で、幅広い食品の免疫機能に関する研究を実施している。ノーベル賞受賞者を輩出する、世界各国で活躍する免疫学者が一同に集う世界最大規模の学術組織「アメリカ免疫学会」でフコイダンの免疫に関する研究成果を発表している。