「スカジャンをARで着てみませんか?」そんな呼びかけが、今、横須賀市から届いています。神奈川県横須賀市とデジタルファッション企業・株式会社harmonyが連携し、スマートフォンのカメラ越しに“スカジャンを羽織った自分”を体験できるARコンテンツを開発しました。昭和の香り漂うスカジャンが、最先端の技術で新たな魅力を放ちはじめています。
今回の取り組みは、ARデジタルファッションアプリ「flah(フラ)」を通じて展開されるもので、スマホをかざすだけで自分の身体にスカジャンの映像が重なり、まるで本当に着ているかのような体験が可能です。初回は6色が公開され、今後3ヶ月にわたり毎月新色が追加されていくとのこと。全18色という豊富なカラーバリエーションも、デジタルならではの楽しみ方といえるでしょう。
ARを活用したこの“バーチャル着用”は、横須賀市が推進する「メタバースヨコスカ」プロジェクトの一環として生まれました。メタバース空間でのプロモーションを起点に、今度は現実世界へと広がりを見せる取り組みとして注目を集めています。スカジャンというローカル文化と、ARという先端技術が融合した今回のプロジェクトは、地域観光の新たな可能性を提示する試みとして期待されています。
スマホで羽織るスカジャン体験、始まる

横須賀の名物として知られるスカジャンが、AR(拡張現実)によって新たな楽しみ方を手に入れました。今回の取り組みでは、横須賀市が所有する公式スカジャンの精密な3Dデータをもとに、株式会社harmonyが開発したARアプリ「flah(フラ)」を使って、現実の風景の中でバーチャルにスカジャンを着用する体験が可能になりました。
スマートフォンのカメラを起動し、アプリを通して自分や友人にかざすだけで、まるで本当にスカジャンを羽織っているかのような映像が現れます。街中でも自宅でも、場所を選ばずファッションを楽しめるこの仕組みは、従来のARコンテンツとは一線を画す“着る”体験に特化している点が特徴です。
リリース初日となる7月4日には、第一弾として6色のスカジャンが公開。今後8月、9月にかけてさらに新色が追加され、最終的には全18色が勢揃いする予定です。豊富なバリエーションは、自分の個性や気分に合わせて選ぶ楽しみもあり、デジタルファッションの奥深さを感じさせます。これは、ARがファッションにもたらす新しい価値の一例と言えるでしょう。
仮想から現実へ、横須賀カルチャーが街に降りる

横須賀市は、令和5年10月よりメタバースを活用した都市魅力の発信・観光PRプロジェクト「メタバースヨコスカ」を推進してきました。これまでにも、メタバースプラットフォーム「VRChat」上でアバター用スカジャンを提供するなど、バーチャル空間を舞台にした先進的な取り組みを展開してきた背景があります。
今回のARプロジェクトは、そうしたバーチャルの試みを現実世界へと拡張するものです。ARを活用することで、特別な機材や環境がなくても、誰もがスマートフォンひとつでスカジャンを“着る”ことができるようになりました。より身近な体験として多くの人に届けるための一歩と言えるでしょう。
また、AR体験中に撮影した写真や動画はSNSで簡単に共有可能なため、ユーザー自身が発信者となって横須賀カルチャーを広めていく効果も期待されています。メタバースという仮想空間の中だけで完結せず、ARを通じて現実空間に“持ち帰る”ことで、地域文化とテクノロジーがより密接に結びつくプロジェクトになっています。観光体験の形が、ここからまた一歩、変わっていくかもしれません。
着て、見て、見せて。flahが生む新しい対話

今回のARスカジャン体験を支えるのが、株式会社harmonyが提供するARデジタルファッションアプリ「flah(フラ)」です。flahは、デジタルファッションを通じて人と人のつながりを深めることをコンセプトとしたSNSアプリで、自分が選んだアイテムを“着た姿”を、友達とリアルに会ってカメラで見せ合うというユニークな仕組みを持っています。
単なる自己表現やコレクションにとどまらず、flahの特徴は「他者との共有体験」に重点が置かれている点にあります。自分が着ているデジタルファッションを友人に見せ、そして今度は自分が相手を見る――そうした“見せ合う”循環が、リアルなコミュニケーションを生み出します。今回のARスカジャンも、そうしたflahの仕組みを活用することで、ただのファッション体験ではなく、誰かと一緒に楽しむコンテンツへと進化しています。 「何を着るか」ではなく、「誰とどう着るか」。flahが目指すのは、ファッションをきっかけに人と人が優しくつながる空間です。スカジャンという強い個性を持つアイテムを通じて、日常の会話や関係性にちょっとした彩りを加える――そんな体験が、スマホ一つで実現するのです。
行政とテック企業が手を組んだ、“着て巡る”プロジェクト

横須賀の象徴とも言えるスカジャンと、ARをはじめとする最先端のデジタル技術。その融合が今回の取り組みの核心です。メタバースとリアルの両軸で展開されるプロジェクトは、観光施策としても、地域文化の保存・発信の手段としても非常にユニークなものと言えるでしょう。
また、行政と民間の協業によって成立したこのプロジェクトは、地域資源の魅力を新しい方法で引き出すモデルケースにもなっています。横須賀市観光課も「デジタルファッションを通じて、より多くの方にスカジャンや横須賀の文化に触れてほしい」とコメントしており、自治体としてもデジタル領域への関心と柔軟性を示しています。
地域の歴史とスタイルを尊重しつつ、そこに革新を加える。そんな“攻めの地域発信”が、今、ARという手段を通して実現されようとしています。
“着る”ことで出会い直す、横須賀というカルチャー
スカジャンをARで着るという体験は、一見すると遊び心のあるアイデアのように思えるかもしれません。しかし、その裏側には、地域の文化をどう次世代に伝えていくか、デジタル時代における観光やコミュニケーションのあり方をどう変えていくかという、真摯な問いが込められていると感じました。
横須賀という土地が持つ歴史やカルチャー、そしてそれを象徴するスカジャン。これまでは現地に訪れたり、実物を手に取ったりしないと得られなかった感覚を、ARという手法でより多くの人へと届ける今回の取り組みは、地域資源の新しい届け方を示しています。
メタバースとリアル、個人と地域、デジタルとファッション。さまざまな境界を柔らかく横断するこのプロジェクトは、技術の進化が地域の魅力発信をどう変えるのかを考えるうえでも、非常に興味深い実例です。
この夏、スマートフォンを手に、まずはスカジャンを“着てみる”ことから始めてみてはいかがでしょうか。そこには、ARを通して出会い直す、新しい横須賀の姿が待っているかもしれません。