VRゴーグルを装着した子どもたちが、自らの発想で防災の未来を描いていく――そんな光景が大阪で広がりました。2025年5月3日、大阪市立阿倍野防災センター「あべのタスカル」で開催された「第4回 子ども・学生VR自由研究大会 大阪市大会」は、防災をテーマに、バーチャルリアリティ(VR)や人工知能(AI)を使って課題解決に挑む子どもたちの研究発表の場です。会場には防災や教育関係者をはじめ、約100名が集まり、YouTubeを通じたVR中継でも多くの人がその様子を見守りました。
大会で目立ったのは、現実に即した発想と、社会課題に対する真剣なまなざしです。災害時の心のケアを支えるVR空間や、外国語で避難情報を伝える仕組みなど、どの研究も「誰かのために」を出発点に構想されたものでした。単なる技術披露ではなく、人を助けたいという思いが形になっていたのが印象的です。
この大会では、最優秀賞・優秀賞に選ばれたアイデアの社会実装を目指し、研究機関や企業などの連携パートナーも広く募集されています。子どもたちの発想から、未来の防災イノベーションが生まれるかもしれません。
防災×VR×AIの自由研究が大阪で集結

2025年5月3日、大阪市阿倍野区にある大阪市立阿倍野防災センター「あべのタスカル」にて、「第4回 子ども・学生VR自由研究大会 大阪市大会」が開催されました。この大会は、子どもや学生たちが自由な発想でVR(バーチャルリアリティ)やAI(人工知能)を使い、防災に関する研究を発表するというユニークな取り組みです。
今回のテーマは「防災×VR×AI」。参加したのは小学生から大学生までの児童・生徒・学生で、それぞれが取り組んだ研究をプレゼン形式で発表しました。会場には防災関係者や教育関係者も多数来場し、発表を熱心に見守っていました。さらに、会場の様子はYouTubeでVRライブ中継され、オンラインも含めておよそ100名が参加しました。
注目すべきは、単に技術を使うだけではなく、「どうすれば誰かの役に立てるか」という視点で研究が組み立てられていたことです。南海トラフ地震を想定した避難行動のシミュレーションや、高齢者・外国人など災害弱者への支援をテーマにした発表もあり、どの研究も実用性と社会性を兼ね備えていました。
子どもたちの研究が示した“防災の新しいかたち” 最優秀賞と優秀賞に注目
大会では、数ある発表の中から特に優れた研究に対して表彰が行われました。最優秀賞と優秀賞に輝いた2つの研究は、どちらも「災害時に人を支えるにはどうすればいいか」という視点をベースに、VRやAIの力を活用したユニークな提案がなされていました。日常生活の延長線上に防災を位置づけるアイデアは、来場した防災関係者や教育関係者にも深い印象を与えたようです。
最優秀賞 「避難所などで使えるVR・AIを活用した過ごし方」

最優秀賞に選ばれた岡本真史さんは、災害時の避難所生活を少しでも快適に、そして安心して過ごせるようにするためのVRプラットフォームを提案しました。AIによるサポートアバターが利用者の心のケアや健康管理を行い、孤立感の軽減や災害関連死の予防につなげる仕組みが盛り込まれています。
さらに、高齢者向けにアクティビティ機能を用意したり、健康状態の見守りをVR空間内で行えるようにするなど、幅広い世代に配慮した内容となっていました。加えて、災害についての理解を深めるために、RPG形式のゲームやAIが生成する映像を組み合わせるアイデアも取り入れられており、学びと体験の両面を支えるユニークな取り組みとして注目されました。
優秀賞 「防災VR ― 多言語防災無線・避難所設営支援・遠隔ドローン観測」

優秀賞に選ばれた福田知世さんは、自らの避難訓練の体験をもとに、災害時に誰もが安心して避難できるよう支援するVRシステムの構築を目指しました。提案されたのは、多言語対応の防災無線をはじめ、避難所内のレイアウトを自動で計算・設営支援する機能、さらに衛星画像と連携した遠隔ドローンによる被害観測など、複数の要素を組み合わせた実用的なアイデアです。
それぞれの機能は、言葉の壁や情報不足、災害現場での人的リソースの限界といった課題に対する具体的な解決策として設計されており、災害対応の現場でそのまま活用できる可能性を感じさせました。VR技術を通じて“見えない壁”を乗り越えようとする姿勢が評価され、実効性と社会性を兼ね備えた研究として注目を集めました。
社会実装と全国展開に向けた次のステップ
大会で発表された研究の中には、実際の防災現場や教育現場での活用が期待されるものも多く見られました。こうしたアイデアを社会に届けるために、主催団体では現在、研究支援や共同開発に協力できるパートナーを広く募集しています。
連携の形は、資金協賛や技術提供、人材サポートなど柔軟に対応可能とされており、教育研究機関や自治体、社会貢献を重視する企業との連携が想定されています。詳細は大会公式サイトの専用フォームを通じて確認・応募ができるようになっています。
URL:https://freestudy.jp/alliance.html
参考までに、過去の大会がメディアで取り上げられた映像も公開されています。

また、本大会は今後、東京での開催も予定されており、全国規模の探究学習モデルとしてさらに広がりを見せていく見込みです。主催団体は、VR革新機構や学会振興財団などと連携しながら、研究倫理やデータの利活用に関する体制整備も進めており、次世代教育と社会課題解決の両立を目指す取り組みが今後も続いていきそうです。
子どもたちの発想が描く、防災とテクノロジーの未来
VRやAIといった先端技術を、“誰かの役に立つ手段”として組み合わせながら、子どもたちは災害という大きな課題に向き合っていました。避難所での心のケアや、多言語対応の情報伝達、ドローンやゲーム要素の活用まで、それぞれの発表には実用性と創造性が共存していました。
こうした自由研究の場が広がり、アイデアが社会とつながる仕組みが整っていけば、防災のあり方そのものが変わっていくかもしれません。未来を担う世代が、テクノロジーとともに描く“もしもの時の備え”に、今後も注目が集まりそうです。
主催団体情報

一般社団法人子ども・学生VR自由研究大会組織委員会 所在地:東京都千代田区二番町9-3 THE BASE麹町
代表者:代表理事 横松 繁
理事:廣瀬 通孝(東京大学 名誉教授)
竹村 治雄(大阪大学 名誉教授)
同団体は、子どもや学生の探究活動を支援し、科学技術の振興と次世代の育成を目的として2024年に設立されました。
公式サイト:https://freestudy.jp