若手俳優の鈴鹿央士が、作家・朱川湊人の代表作で、ある兄妹の不思議な体験を描いた小説を映画化した『花まんま』に出演した。有村架純演じるフミ子の婚約者で、動物行動学の助教・中沢太郎役を丁寧に演じている。作品の魅力をはじめ、鈴鹿本人にさまざまな話を聞いた。
──本作の出演が決まった時、どのような心境になりましたか。
最初は、前田(哲)監督とまたお仕事ができるということがとてもうれしかったです。共演者の方々のお名前を見て「すごい場でお仕事できるな」と思いました。鈴木亮平さん、有村架純さん……本当にすごい方々に囲まれることになるので、「楽しみだな」「頑張ろう!」という気持ちが一番にありました。
──ベストセラーが原作ですが、物語の印象はいかがでしたか。
脚本を最初にいただいた時、とても感動しました。この作品は死と向き合いながらも、生きることに前向きな力をくれる作品だなと思ったんです。前田監督の作品は『ロストケア』の時もそうだったのですが、“死から逃げない”、“死というものと向き合いながら生きることを考える”というテーマが込められているなと感じます。今回の作品にもそう感じて、どんな演出になるのかなと考えながら撮影に臨みました。
──演じられた中沢太郎という役は、原作では最後に少しだけ登場する人物でしたね。
そうですね。原作だと太郎さんは最後に1行出てくる研究者肌の真面目な人物として書かれているのですが、この脚本ではすごく膨らんでいて、とても優しいキャラクターだと思いました。
彼は、自分のカラスの研究だったり、理解したいと思うことに対して、ちゃんと向き合って理解しようとする優しさを持っている人だと思うんです。そして、それを理解するまで何度も繰り返し考える強さも持っていて、すごく素敵な役だなと感じました。
──演じる際にどのようなことを気をつけましたか。
いろいろな場所に行ったり、いろいろな人の間に立つ立場で、客観的に見るとちょっと難しい立ち回りをしているのですが、その中には太郎さんの誠実さやまっすぐ人と向き合う姿勢があるんです。なので、それを僕なりにちゃんと演じられればいいなと思って挑みました。
──今回は受けの演技が多かったかと思いますが、鈴木さんや有村さんはアドリブも多かったそうですね。
確かにアドリブは多かったですし、会話のテンポもすごかったです。関西、大阪のノリといいますか、関西弁のテンポでみなさんが進めていくなか、僕一人だけ標準語だったんです。すごく気持ちのいいテンポで会話が流れていくなかで、僕はその中に何を挟めるかなって……近くで見て圧倒されていました(笑)。
でも、太郎さんだったらきっと見ていると思うんですよね。会話に反応はしているけれど、どちらかというとずっとみなさんを見ていた感覚なんです。
──カラスの研究者だからカラスと会話するシーンもありましたが、ご自身もアドリブはありましたか。
お兄さんと車に乗っているシーンで、僕がカラスを見つけて喋った後に、お兄さんが「ほんまかいな」ってツッコんでくるんですが、そこに対して太郎さんはカラスの鳴き声で返事をする。あれは、アドリブと言えばアドリブです(笑)。使われないだろうなと思ってやってみて、撮影現場では監督に「普通に返事してみようか」って言われて、普通の返事バージョンも撮ったんです。でも完成した映画を観たら、カラス返事のほうが使われていて、嬉しくなりました(笑)。
──前田監督とは先ほども話題に出た『ロストケア』でもご一緒されていましたが、今回印象に残った演出などはありましたか。
今回は太郎さんという役柄が僕の年齢よりも少し上の設定だったので、「ちょっと大人っぽくしよう」という話はありました。ただ、『ロストケア』の時よりも自由度が高かった気がします。
監督が亮平さんや有村さんと一緒にいることが多かったので、それを見ていて「前田監督、すごく楽しんでいらっしゃるなあ」と思いながら、演出されている様子を見ていました。
──今回の『花まんま』、みなさんにはどう勧めますか。
観終わった後、絶対多くの方に観てほしいと心から思えた作品になりました。兄弟愛、家族愛、自分の大切な家族や大切に思っている人に会いたいなと思う映画です。僕自身、この映画を通じて、もっと優しく生きようとも思いました。『花まんま』、一人でも多くの方に観てほしいと思います。
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