福岡の冬を彩る「クリスマスアドベント」。2013年に博多駅前から始まった取り組みは街の各所へと広がり、2025年には東京・上野へ進出。その中心にいるのが、株式会社サエキジャパン代表取締役で、クリスマスアドベント総合プロデューサーを務める佐伯岳大氏だ。「日本のクリスマスをもっと素晴らしいものにしたい」と語る佐伯氏に、クリスマスアドベントに込めた思いや、開催までの道のり、全国へと広がる現在、そしてこれからについて伺った。
【プロフィール】
株式会社サエキジャパン 代表取締役 佐伯岳大氏
1981年福岡県生まれ。大学在学中に起業し、2007年に株式会社サエキジャパンを設立。2013年にJR博多駅前広場で「福岡クリスマスマーケット」をスタート。2023年に「クリスマスアドベント」へ名称を変更し、2025年には東京・上野へ進出。クリスマスアドベント総合プロデューサーとして、地域活性化やまちづくりに取り組んでいる。
光・音・アートを融合し、新たなクリスマス文化をつくる

――現在取り組まれている事業について教えてください。
クリスマスアドベントを主体とした地域活性化や、まちづくり事業に取り組んでいます。ほかにもさまざまな事業を行っていますが、共通しているのは「喜んでもらうこと」です。お客様一人ひとりに喜んでもらうことを一番大切にしています。
――クリスマスアドベントとは、どのようなものなのでしょうか。

クリスマスマーケットを始めた2013年頃は、「クリスマスマーケットって何ですか?」と言われるような時代でした。それが今では、日本中にクリスマスマーケットが広がっています。
そのなかで私たちは、もう一つ新しい文化をつくりたいと考えました。クリスマスアドベントでは、マーケットだけではなく、光と音、アートを融合させています。美しいイルミネーションがあり、音楽があり、芸術がある。そうしたものを組み合わせて、これまで以上に素晴らしいクリスマスを過ごしてもらいたいと思っています。
2023年に名称を変えたのも、クリスマスマーケットからもう一段階進んだ文化をつくりたかったからです。10年後には「クリスマスといえばアドベント」と言われるくらい、日本のクリスマスをアップデートしていきたいですね。
ドイツで出会った、それぞれが自由に楽しむクリスマス
――クリスマスアドベントの原点となったドイツでは、どのような光景が印象に残りましたか。
最初に訪れたのは2007年です。初めてのヨーロッパでもあったので、クリスマスマーケットを見て、単純に「すごいな」と思いました。日本とはまったく違うクリスマスでしたね。
その後もう一度訪れたときに印象的だったのが、みんながそれぞれ自由に楽しんでいる姿でした。雨が降っていても友達と肩を組んで音楽を楽しんでいる人がいれば、恋人と過ごしている人もいる。それぞれの幸せがそこにありました。
だから私たちも、楽しみ方を押し付けたくありません。素敵な光や音楽、アートを私たちが用意します。そのなかで、家族でもカップルでも友人同士でも、それぞれが自由に一番幸せな時間を過ごしてほしいと思っています。
「なんとなく」から「本気」へ――初開催までの道のり

――ドイツでの体験から、実際に福岡で開催するまでに6年ほどかかったのはなぜでしょうか。
ドイツで見て「やりたい」とは思いましたが、イベントの経験がなかったんです。毎年3月、4月頃になると友達と集まって企画書をつくっては、「やっぱり厳しいよね」となる。その繰り返しでした。
ただ、クリスマスのことはずっと心の中に残っていました。2012年にもう一度ヨーロッパへ行き、2013年は「絶対にやろう」と決めました。それまでの「なんとなくやりたい」が「本気でやりたい」に変わって、そこからは全速力でした。
――2013年の初開催に向けて、最も大変だったことを教えてください。
一番は、何も分からなかったことですね。イベントの実績もないし、大きな会社でもない。お金も信用もなく、実現したい想いしかありませんでした。開催場所を借りるために、JR九州には8カ月ほど通い続けてお願いしました。最終的には「君がしつこいから」と、場所を貸していただけることになったんです。
ただ、場所を借りられても、それだけでは開催できません。すぐにドイツへ行って雑貨などを仕入れました。英語も話せないし、輸入もしたことがない。本当に商品が届くのかも分からないような状態で、はちゃめちゃなスタートでしたね。でも、何も分からないなかでやったからこそ、いろいろなものが開けた部分もあったと思います。
福岡で育てた景色を、イベントから文化へ

――2013年から続けるなかで、福岡の街はどのように変わりましたか。
多くの方に協力していただき、博多駅から始まったクリスマスが中洲、貴賓館前、天神会場など福岡市内のさまざまな場所へ広がりました。今では、街全体がクリスマスのテーマパークのようになってきたと思います。
ただ、「もう福岡の文化になったのか」と聞かれると、私自身はまだ分かりません。私たちは異文化を持ってきて、それを福岡という土地とミックスさせながら、イベントから文化にしていこうとしています。今は確かに盛り上がっていますが、300年続くような文化にするなら、もっと地域といろいろなことに取り組んで、なくてはならない存在にしていかなければいけません。
どのような状態になれば文化と呼べるのかは、まだ分からない。分からないからこそ、必死にいいものをつくろうとしているのだと思います。
東京を起点に、日本中へクリスマスアドベントを広げる

――2025年に東京へ進出したのは、どのような思いからだったのでしょうか。
福岡でつくってきたクリスマスを、日本中に広げたいと思ったからです。クリスマスアドベントへ名前を変えたのも、「文化をつくる」という思いがあったからです。
日本中のクリスマスをもっと良くしていくためには、まず東京でやることが大事だと考えました。上野なら日本中から人が来てくれます。そこで見た人が「自分たちの地域でもこんなクリスマスをやりたい」と思ってくれれば、そこからさらに広がっていくと思っています。
――全国へ広げるうえで、どのようなクリスマスアドベントをつくっていきたいですか。
地域の人に愛されるクリスマスを、しっかりつくりながら広げていきたいですね。喜んでもらえなければ、やる意味がありません。
私自身がすべてをつくることにもこだわっていません。私がやると、どうしても似たものになってしまいますから。いろいろなクリエイターやアーティストと一緒につくることで、近くの会場同士でも「全然違うね」と言われるものにしたい。私がやりたいのは、自分のやり方を広げることではなく、日本のクリスマスそのものを良くすることなんです。
「人生そのもの」とともに、世界一への挑戦を続ける

――2030年までに店舗数世界一を目指しているのは、なぜでしょうか。
どうせやるなら世界一を目指そう、ということですね。世界一といっても何を基準にするか分かりにくいですが、「店舗数」とすれば分かりやすいと思いました。
もともと私たちは日本一のクリスマスを目指してきました。その後、博多や天神、中洲など街のさまざまな場所へ広げていくなかで、街そのものを一つのクリスマスアドベントとして考えられるようになりました。この形なら、世界一を目指せると思っています。
――クリスマスアドベントを通して、これからどのようなクリスマス文化をつくりたいですか。
みんなが愛するクリスマスですね。もっとみんなが幸せで、幸福度の高いクリスマスをつくりたいと思っています。
――最後に、佐伯さんにとってクリスマスアドベントとはどのような存在ですか。
今のところは「人生そのもの」です。
これが天職なのかは自分でも分かりません。でも、クリスマスアドベントがあることで毎日が楽しいんです。いろいろな人と出会えて、いろいろな街にも行ける。お客様を喜ばせたいと言っていますけど、私自身が一番楽しんでいるのかもしれませんね。
これからも素敵なクリスマスを用意するので、ぜひ応援して、遊びに来てください。
街全体をひとつのテーマパークに見立て、食・光・音・アートで彩る「クリスマスアドベント」。佐伯氏が仕掛ける熱気あふれる冬のエンタテインメントは、福岡から東京、そして全国へと広がっていく。
五感をフルに使って幸福感を味わえる特別な空間へ。この冬、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
