『イシイのおべんとクン ミートボール』といえば、毎日の食卓やお弁当の強い味方として広く知られているロングセラー商品だ。では、その製造・販売元である石井食品が、無添加調理や地域共創に力を入れている企業であることをご存知だろうか。同社では2027年のおせち商戦に向け、自社ECサイト「イシイのオンラインストア」にて『すごい熊本酒肴箱~生産者とともに、一年かけて作り上げた一箱~』の先行予約を開始。本商品のメディア向け発表会が8月21日に東京都内で行われ、石井智康社長らが企画背景やこだわりを語った。熊本県産食品をふんだんに使い、7月に発生した令和8年熊本地震の被災地支援にも通じる本商品。会場には試食も用意され、味と素材へのこだわりを実際に体験してきた。
実はミートボールよりも息が長い定番商品「イシイのおせち」
「真(ほんとう)においしいものをつくる ~身体にも心にも未来にも~」をミッションに掲げ、国産食材や無添加調理に力を入れた商品開発を行っている石井食品。代表商品の『イシイのおべんとクン ミートボール』も、うま味調味料などの食品添加を使用せず、それ以外も余分な原材料を極力使わずに、素材の味を活かした商品になっている。

一方で、代表商品があまりに有名であるがゆえに「ミートボールの会社」という認知をされがちな同社。しかし、本発表会で挨拶に立った石井智康社長によると、同社はもともと佃煮の製造を主業として創業した企業で、その「煮る」技術を活かして生まれたおせちは、1951年から提供してきた毎年恒例の商品なのだという。この日最初に試食で提供された「黒豆」と「栗きんとん」は、まさにその伝統が活きた惣菜だ。

同社は、おせち商品でも国産食材・無添加調理にこだわっている。石井社長は「おせちを無添加にするのは本当に大変なんです」と本音で苦労を滲ませつつ、「良い食材を仕入れ、それらをシンプルに味付けすることで、もっとおいしくすることができる」とそのメリットを説明。自社商品への自信を伺わせた。

また、家族揃って楽しめる多彩なおせちを用意しているのも、“イシイのおせち”の特徴だ。『慶春譜』『祝春華』といった三段重の定番商品に加え、食塩不使用おせちの『ちづる』、減塩おせちの『つばさ』、食物アレルギー配慮おせちの『のぞみ』などを揃え、安心・安全を求める幅広いニーズに対応。そのほか、一人前おせちの『迎春小箱』、子ども向けの『キッズおせち』といった、若い世代におせち文化を継承するような商品もラインナップに入れている。それらが一堂に並べられた会場には、まだ八月ながら正月の華やかさが漂っていた。

そして2027年のおせち商戦には、「地域共創おせち」と銘打った初の商品として『すごい熊本酒肴箱~生産者とともに、一年かけて作り上げた一箱~』(以降、熊本酒肴箱)を投入。本商品は、2016年の熊本地震を機に生まれた熊本県とのつながりを背景に、「地域の生産者とともにつくるおせち」をコンセプトにしている。
無添加調理、ご当地の味にとことんこだわった「熊本酒肴箱」
石井社長は商品名に「酒肴」を冠した理由について、「熊本のおいしいものを集めてみたらお酒に合うものがとても多かったため、従来のおせちの形にこだわらず、みんなでごはんとお酒が楽しめるような商品にしました」と説明。計9品で構成されるおせちには、山海の幸が揃う熊本の特産品をふんだんに使い、調味料にも熊本の醤油、味噌、酢などを使うことで、現地の味に近付けたという。

食材産地との地域共創は、現在を第四創業期と位置付ける同社にとって、無添加調理と並んで特に力を入れている取り組みだ。例えば代表商品のハンバーグでも、茨城県筑西市産の館玉ねぎや千葉県市原市産の姉崎だいこんなどを使った期間限定ハンバーグを販売。石井社長は「生産者の方々と地域の農業における課題を解決につながる商品を作り、食べる方に食材の旬や季節の違いをお届けできたら」と、そこにある思いを語る。

熊本県とも10年にわたり関係を深めており、特に今回の商品に使用されているアサリの産地である長洲町とは包括連携協定を結び、「地域と旬」をテーマにした商品開発を実施。それをきっかけに天草市や和水町とも縁が生まれ、今回の企画へとつながるきっかけに。また、非常食の品質を高めるため、社会課題に取り組む現地NPOの協力のもと、前回の熊本地震の被災地でヒアリングを行い、新商品の開発につなげるなど、さまざまな活動を行ってきた。
天草大王、火の本豚、牛深のサバ節…、熊本印の特産品をひとつのおせちに
会場では、本商品の中から3品が試食として提供され、商品担当者がそれぞれのこだわりを語った。
3品のうち「天草大王と熊本野菜のがめ煮」は、天草地方で生産されるブランド地鶏・天草大王を使った一品だ。ブロイラーの1.5倍という大きな体に育つ天草大王は、弾力がありながら、やわらかな食感が魅力。もちろん里芋、レンコン、椎茸など、主役を支える野菜も熊本県産だ。

ここで担当者がもうひとつ強調したのは、だしへのこだわり。もとより自社でひいただしを使っている同社のおせちにおいて、本品には天草地方・牛深産のサバ節を使っている。担当者は「炊いた魚を冷風で温度を上げずに乾かすことによって生臭みのないサバ節ができ、非常にすっきりとコク深いだしをとることができます」と、その魅力を説明。実際に試食すると、無添加で良い素材を使った優しいだしの味わいが口の中いっぱいに広がった。なお、「酒肴箱」には「天草大王の柚子胡椒焼き」も入っており、こちらは天草大王の大きな手羽先を丸ごと味わうことができる。

次に、「火の本豚の角煮 シトラスジャム仕立て」は、和泉町のさいき農場で生産されている火の本豚を使っている。担当者によると「マイクロバブル水を飲ませるなど、ストレスの少ない環境で育った豚肉は、質の良い脂が特徴」とのこと。そこに天草地方・苓北町の山下果樹園で生産されたシトラスのジャムを合わせた角煮は、箸で掴んだだけで分かるやわらかさ。実際に味わうと、噛まずともほどける身とともに脂身の上品な口解けを感じた。
そして熊本らしさを一層感じたのが、馬肉を使った「阿蘇の恵み 馬すじ味噌煮込み」だ。
熊本といえば馬刺しで有名だが、地元ではホルモンやすじ肉の煮込みを食べる文化が根付いているという。「熊本に何度か伺ううちに、その味を再現したくなりました」と担当者。何度も試行錯誤を重ねながら、希少な脂多めのすじ肉を仕入れることで、納得できる味が実現したそう。また、調味料には地元名産の「赤酒」をみりん代わりに使用。現地では正月のお屠蘇で飲まれる酒を使っていることも、おせちらしいポイントだという。

こちらも先ほどの角煮同様、箸で掴むのが大変なほどプルプルの食感。たっぷりとしたコラーゲンを感じるすじ肉は濃厚な味付けで、噛めば噛むほど深い味わいを感じた。なお、馬肉は「阿蘇の恵み ローストホース」でも味わえる。
そのほかの素材も天草の車エビや長洲町のトマトなど熊本を代表する特産品ばかりで、ひとつひとつ生産者まで伝える担当者の熱量に同社の地域共創にかける本気度が伺える内容だった。
おせち商品監修者を招いたトークセッションも
また、この日は、2023年から同社のおせち商品を監修している近茶流宗家の柳原尚之氏をゲストに招き、「これからのおせちはどうあるべきか」をテーマにしたトークセッションを実施。「人間関係の希薄化が進む現代において、食というのは人と人とのつながりのハブになる。おせちはまさにそういう存在として未来に残していかなければならないものだと思います」と語るなど、江戸時代からの懐石料理を継承する深い知見を交えたトークが展開された。

なお、本商品開発の最中、先月には「令和8年熊本地震」が発生したが、現状、本商品の食材調達に大きな影響はないとのこと。同社の社員も生産者を訪問中、地震に遭遇したそうで、石井社長は 「今回の『酒肴箱』の売上の一部も義援金に充てたい」と話した。
石井食品の地域共創への思いが詰まった『すごい熊本酒肴箱~生産者とともに、一年かけて作り上げた一箱~』は、同社のECサイト「イシイのオンラインストア」にて予約受付中。来年のお正月は、熊本の味が詰まったおせちで迎えてみてはいかがだろうか。
