近年、日本の夏は猛烈な暑さに加え、ゲリラ雷雨や台風などが相次いで蒸し暑い日が続くなど、これまでとは異なる気候へと変化しています。
こうした雨が多く高温多湿な環境で、今年特に注意したいのが「雨季化熱中症」
熱中症というと気温の高さに目が向きがちですが、危険度の目安となる暑さ指数(WBGT)※では湿度が最も大きな要素とされており、気温がそれほど高くなくても湿度の高い日は注意が必要です。
これからの熱中症対策では、単に水分を摂るだけでなく、体内に水分を保つ「水分保持」や深部体温、日頃の体調管理にも目を向けることが重要。
そこで今回は「雨季化熱中症」の特徴や対策のポイントとともに、水分保持の観点から注目されるヨーグルトの健康価値や、埼玉県熊谷市で展開されているヨーグルトを使った「雪くま」の取り組みについて紹介します。
雨の多い今年の夏に注意したい「雨季化熱中症」とは
今年の夏は、厳しい暑さが続くだけでなく、台風やゲリラ雷雨などによって雨量が多く、まるで熱帯の雨季のような高温多湿の環境が目立っていますが、こうした気候の中で注意したいのが「雨季化熱中症」です。
「雨季化熱中症」とは、雨が多く蒸し暑い日が続く今年の夏のような環境で起こりやすい熱中症のこと。
熱中症の危険度を判断する目安として用いられる「暑さ指数(WBGT)」は、気温・湿度・輻射熱の3つの要素から算出されますが、その影響について気温が約1割、湿度が約7割、輻射熱が約2割とされており、なかでも湿度の影響が特に大きいことが明らかになっています。
雨の日には屋外の湿度が80%を超えることもあり、気温が26~27℃程度でも暑さ指数が「警戒」レベルに達する場合があるのだとか。
湿度が高い環境では、汗をかいても蒸発しにくく、体内の熱をうまく外へ逃がせなくなるため、その結果として体に熱がこもりやすくなり、熱中症につながるリスクが高まります。
つまり、これからの夏は「今日はそれほど気温が高くないから大丈夫」と判断するのではなく、天気や湿度にも目を向けることが大切。
猛暑日に限らず、雨上がりや蒸し暑い日にも注意し、高温と高湿度の両方を意識した熱中症対策へアップデートしていく必要があるのです。
こまめに水分補給していても不十分?調査で見えた「したつもり水分補給」
熱中症対策として、多くの方がまず思い浮かべるのが「こまめな水分補給」ではないでしょうか。

しかし、株式会社ネオマーケティングが2026年7月、昨年夏に暑さによって体調を崩した経験のある全国20歳以上の男女2,000人を対象に実施した調査からは、水分を摂ることだけでは体調不良を防ぎきれていない実態が見えてきました。
調査によると、昨年夏に「水分をこまめに摂る」という熱中症対策を行っていた人のうち、25.3%が昨年の自身の体調不良について「熱中症だったと思う」と回答。
さらに「おそらく熱中症だったと思う」と答えた47.5%を合わせると、実に72.8%が熱中症だったと認識していました。
また、具体的な水分補給の方法を見ると「こまめに飲んでいた」が64.0%で最多だった一方で「のどが渇いてから飲んでいた」が29.9%、さらに「一度にまとめて飲んでいた」が11.7%という結果に。

本人としては水分補給を行っているつもりでも、補給するタイミングや方法によっては、十分な暑さ対策になっていない可能性があります。
こうした“対策しているつもり”の水分補給について、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長・東京医療保健大学大学院客員教授の谷口英喜先生は「したつもり水分補給」と指摘しています。

のどが渇いてから一度に大量に飲むのではなく、起床時や食事時、外出・運動・入浴の前後など、生活の節目ごとにこまめに補給することが重要。
さらに、これからの熱中症対策では、水分を「摂る」ことに加え、摂取した水分を体内に「保持する」という視点も意識していく必要があります。
「雨季化熱中症」対策で意識したい3つのポイント
高温多湿の環境で起こりやすい「雨季化熱中症」に備えるためには、こまめな水分補給に加えて「深部体温」「水分保持」「免疫バランス」という3つの視点を意識することが重要。
まず注目したいのが、体の表面ではなく、心臓・脳・腎臓など体内の臓器の温度を示す「深部体温」です。
健康な状態では約37℃前後に保たれていますが、暑熱環境で体内に熱がこもると深部体温が上昇。

熱中症の初期には、脱水によって皮膚への血流が減り、深部体温が上がっていても表面体温が低くなることがあるため、体を触った感覚だけで判断しないことも大切。
そして、これからの熱中症対策で特に意識したいのが「水分保持」です。
血液中では、タンパク質の一種であるアルブミンが水分を血管内に保ち、十分な血液量を維持する役割を担っています。

乳製品に含まれるタンパク質はこのアルブミンの材料となるため、日頃から水分補給だけでなく、水分を体内に保持することまで考えた食生活がポイント。
そこで身近な食品として取り入れやすいのがヨーグルトです。
水分保持と免疫バランスを支える「ヨーグルト」の健康価値
「雨季化熱中症」への備えとして、日々の食生活に取り入れたい身近な食品の一つがヨーグルトです。

特に注目したいのが、これまで紹介してきた「水分保持」と「免疫バランス」という2つの観点。
ヨーグルトに含まれる乳タンパク質は、血液中で水分を保持する役割を担うアルブミンの材料になります。
アルブミンによって血管内に十分な水分が保たれることで血液量の維持につながり、体内の熱を外へ逃がすためにも役立つほか、タンパク質は筋肉を維持するためにも欠かせません。
筋肉は体内の水分を蓄える「水分の貯蔵庫」ともいわれているため、日頃から十分な筋肉量を保つことも脱水対策につながるとされています。
さらに、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は免疫細胞に働きかけるほか、腸内環境を良好に保つことで、免疫バランスを整えるための体づくりにも役立つのだとか。
熱中症では軽度の段階から体内で炎症反応が起こり、重症化すると炎症が全身へ広がる可能性があるため、普段から食事や生活習慣を整えることも重要。
もちろん、ヨーグルトだけで熱中症を防げるわけではありません。
暑さを避けることや、こまめな水分・適度な塩分の補給、休憩、体の冷却と組み合わせながら、毎日の食事に取り入れやすい暑さ対策の一つとして活用することがポイントです。
プレクーリングにも注目!熊谷市ではヨーグルトを使った「雪くま」を展開
ヨーグルトは日々の食生活に取り入れるだけでなく、暑い環境で活動する前の「プレクーリング」という観点でも注目されています。
プレクーリングとは、暑い場所へ出る前などにあらかじめ体を冷やし、深部体温の上昇を抑えるための方法のこと。
熱中症対策では、できるだけ暑熱環境を避けることが基本ですが、日中の外出や農作業、ガーデニングなどで暑さにさらされる場合には、かき氷など冷たいものを活用して深部体温を効率よく下げる方法も選択肢の一つ。
ヨーグルトをかき氷に取り入れれば、体を冷やしながら、乳タンパク質や乳酸菌なども一緒に摂取可能。
ただし、胃腸を過度に冷やさないよう、適量を心がけることも大切です。
こうしたヨーグルトと暑さ対策を組み合わせた取り組みを実践しているのが「暑さ対策日本一」を掲げる埼玉県熊谷市。
熊谷市では、ご当地かき氷ブランド「雪くま」を展開。

「雪くま」は、水や削り方、オリジナル素材という3つの基準を満たしたブランドかき氷で、市民にも夏の風物詩として親しまれています。
さらに2026年は「ヨーグルトで水分保持 チャレンジプロジェクト」の1つの取組みとして、キンキンに冷えた氷を削り、そこにヨーグルトを用いたソースをかけた「雪くま」の新メニューを市内14店舗で提供。

水分補給だけでなく、乳タンパク質による「水分保持」にも着目した取り組みとなっています。
気温だけでなく、湿度にも注意が必要となる「雨季化熱中症」は、従来のこまめな水分補給に加えて、深部体温を上げない工夫や水分保持、日頃からの体調管理まで意識することが、これからの暑さ対策では重要となります。
ヨーグルトを毎日の食事や間食に取り入れたり、暑い場所へ出かける前にはヨーグルトかき氷を楽しんだりするなど、無理なく続けられる方法から取り入れてみてはいかがでしょうか。
雨が多く蒸し暑い今年の夏だからこそ、熱中症対策を改めて見直し、自分自身や家族の体を守るための新しい習慣につなげていきましょう。
※暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。
暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい(1)湿度、(2)日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、(3)気温の3つを取り入れた指標です。
