生成AIの爆発的な普及により、ITエンジニアの仕事は根本から変わり始めています。コード生成や設計支援、テスト、ドキュメント作成など、これまで人間が担ってきた業務の多くをAIが代替しつつあるのが現状です。しかし、悲観する必要はありません。むしろ、これからのエンジニアには、AIという強大な力を使いこなし、業務全体を高い視座から設計・推進する力が明確に求められています。
こうした激変する環境を前に、ITエンジニアの新しい働き方を提案する株式会社PE-BANKが、メタバース空間を舞台にITエンジニア向けイベント「ProTechOne 2026」を開催。テーマは「メタバースでつながるITエンジニアとその先の世界」。AIエージェント、フィジカルAI、XR・Vision Proなど、次世代技術に精通するトップランナーたちが集結し、熱い議論を交わしました。
本記事では、数あるセッションの中から、これからのキャリア形成と最新のAI活用術に焦点を当てた2名のプレゼンテーションをピックアップ。エンジニアが生き抜くための実践的な思考法とアプローチをお届けします。
【開催概要】
イベント名:ProTechOne 2026
日時:2026年6月13日(土)11:30〜18:00
会場:メタバース空間(オンライン)
主催:株式会社PE-BANK
エンジニアの未来のキャリアと働き⽅─ AI・DX・新規事業・⼈材育成の現場から⾒えてきた選択肢
AI時代における「真の安定」とは? 変化を前提としたキャリア戦略
最初のセッションに登壇したのは、株式会社BeeS 代表取締役社長の古宮浩行氏。大手ITベンダーの事業責任者として40年にわたり新規事業の立ち上げに尽力し、数々のベンチャー育成や人材育成に携わってきたプロフェッショナルです。

古宮氏がまず聴衆に投げかけたのは、「エンジニアにとっての安定とは何か」という根源的な問い。これまでのIT業界では「なくならない技術を身につけること」が安定の証とされてきました。しかしAI時代においては、すべての技術が変化し、陳腐化する可能性を秘めています。
「AIの時代は全てが変化します。しかも、人間が頑張って蓄えた知識は、明らかにAIの方が優れています。こんな時代に安定を求めるなら、自ら学び続ける仕組みを持つことが最も安定するのです」
古宮氏はそう断言します。ただし、ただ本を読んだり動画を見たりする「インプット」だけでは不十分。重要なのは「Think(思考)」し、「Output(出力)」し、そして「Move(行動)」すること。変化できる者だけが生き残る。それが現代の唯一の生存戦略です。
知識を「知恵」に変える。エンジニアに求められる思考法とDX

AIに圧倒的に負けてしまう「知識」。古宮氏によれば、知識とは過去のものだからです。我々人間が勝負すべきは、未来を作り出す「知恵」。そして、知識を知恵に変えるプロセスこそが「思考」に他なりません。
「例えば『2人にケーキを切り分ける』という問題。どう均等に分けるかを考えるのではなく、論点は『2人が満足すること』です。片方に食べたい場所を指差させ、もう片方がその間で切る。これが論点思考です」
こうした仮説思考や水平思考など、物事の前提を疑い、課題の本質を見極める力は、未だAIには完全に代替できない人間の強みです。
さらに話題はDX(デジタルトランスフォーメーション)へ。単なる業務効率化を指すIT化とは異なり、DXはビジネスモデルやユーザー体験そのものを変革します。技術力や課題解決力もさることながら、クライアントのビジネスを根底から見直し、新たな価値を創造する「課題形成力」こそが、これからのエンジニアの強力な武器となるのです。
「やりたい」仕事で自走する。ウェルビーイングな組織を作るマインドセット

セッションの終盤、古宮氏は自身の経験に基づく「大切にしたい14カ条」を披露。中でも強調されたのは、仕事への向き合い方です。
「仕方なくやる」「義務感でやる」といった「やらされ感」から脱却し、「仕事の意義を理解し、自ら進んで行う」状態へ。最終的には「心から楽しいからする」というウェルビーイングな状態を目指すべきだと語ります。
「唯一の判断基準として、『後悔するかしないか』を設けることが大切です。失敗することもありますが、後悔しない方を選んだと思えれば、心はとても楽になります」
フリーランスであっても、決して一人ではありません。クライアントやチームに対してリーダーシップを発揮し、関わるメンバーが安心・安全に成長できる環境を作る。それこそが、最強の組織を生み、自身のキャリアを盤石にする確かな道です。
AIエージェントビルダーになろう─ Claude Codeではじめる、じぶんのAIエージェントの育て⽅
AIは「ツール」ではなく「パートナー」。エージェント思考へのパラダイムシフト
続いて登壇したのは、株式会社ジェネラティブエージェンツ 取締役COOの西見公宏氏。事業会社の顧問CTOとして活動し、AIエージェントの経営導入によりあらゆる業種の生産性向上に尽力しているスペシャリストです。

「AIツールを使っているのに、意外と効率よくならない」。そんな悩みを抱えるエンジニアに対し、西見氏は明確な答えを提示します。原因は、AIを単なる「ツール」として扱っていることにあると。
「毎回細かい指示を出さなければならないなら、自分がやった方が早い。そうではなく、AIに役割と自律性を持たせ、『パートナー』として扱う。これがAIエージェントという考え方です」
人間が主体となってツールを操作するのではなく、AIを「代理人」に見立てて仕事を任せる。このパラダイムシフトこそが、AI活用の限界を突破するカギとなります。
ノーコードで誰もが開発者に。Claude Codeを活用したAIエージェント構築

では、そのAIエージェントをどうやって構築するのか。西見氏が強力に推し進めるのが、「ノーコード/ローコードツール」の活用です。
これまでシステム構築の常識だったプログラミング言語の習得。しかし現在は、ブラウザ上の操作だけで直感的にシステムを作れる時代に突入しています。特にAIエージェント開発においては、自然言語による指示がベースとなるため、ノーコードツールとの親和性が極めて高いのです。
西見氏が代表的なプラットフォームとして挙げたのが、オープンソースの「Claude Code」。テンプレートの活用や、ブロックを繋ぎ合わせるワークフロー機能により、誰もが手軽に独自のAIエージェントを生み出すことが可能に。エンジニアリングのハードルは劇的に下がり、アイデアを即座に形にできる環境が整っています。
役割を与え、知識を授け、フィードバックで「育てる」

西見氏は、自身のAIエージェントを機能させるための具体的な3ステップを解説しました。
1. 役割の明確化:「メール返信担当」「スケジュール調整担当」など、具体的なミッションを与える。
2. 知識の付与:役割を果たすために必要なマニュアルや過去のデータなどを学習させる。Claude Codeであれば、ファイルの読み込みだけで完了する。
3. フィードバックによる育成:実際に動かし、修正点や要望を伝える。
「最初から完璧に動くことはありません。フィードバックを与え、『ここはこうしてね』と教えることで、エージェントはどんどん賢くなっていきます。この『育てる』感覚を持つことこそが、AIエージェント活用の醍醐味です」
カスタマーサポートの自動返信、膨大な社内規程を網羅したヘルプデスク、企画会議の壁打ち相手。育て上げたAIエージェントは、エンジニアの業務を強力にサポートする、かけがえのないパートナーとなるでしょう。
AIの進化は、決してエンジニアの仕事を奪う「脅威」ではありません。古宮氏が語る「思考力」を磨き、西見氏が説く「AIエージェントの育成」を実践することで、エンジニアは自身の提供価値をかつてないレベルへと引き上げることができます。未知のテクノロジーを最強の「武器」であり「パートナー」として捉え直す視点こそが、次世代を生き抜く最適解です。
今回「ProTechOne 2026」を開催したPE-BANKは、単に案件を紹介するだけでなく、ITエンジニアが新しい技術の波に乗り、キャリアを主体的に切り拓くための場を提供し続けています。
激動の時代。立ち止まっている暇はありません。自ら考え、動き、テクノロジーと共に変化を楽しむエンジニアたちの前に、輝かしい未来が広がっています。
