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AIは早すぎるのか 名古屋の園児がロボットに触れる意味とは

保育園の教室で、子どもたちがAIやロボットについて学ぶ——そう聞くと、少し早すぎるのではないかと感じる人もいるかもしれません。けれど名古屋市東区にあるアライブインターナショナルスクールでは、園児たちが“未来の技術”に触れる取り組みが実際に行…
ミライクエスト 2026年2月27日

保育園の教室で、子どもたちがAIやロボットについて学ぶ——そう聞くと、少し早すぎるのではないかと感じる人もいるかもしれません。けれど名古屋市東区にあるアライブインターナショナルスクールでは、園児たちが“未来の技術”に触れる取り組みが実際に行われています。

しかも今回、教壇に立つのは外部の専門家ではなく、園に通う子どもの保護者です。AIやロボットづくりに関わる仕事をしている大人が、自らの仕事やテクノロジーの世界をわかりやすく伝える時間が設けられました。テーマは「ロボット博士になろう!」。子どもたちは、ロボットがどのように生まれ、どんな役割を担っているのかを学びます。

英語教育で知られる園が、なぜいまAIやロボットに目を向けるのでしょうか。そして、保護者が“先生”になることにはどんな意味があるのでしょうか。幼児教育とテクノロジー、そして家庭と園の連携という視点から、その背景を探ります。

保護者が教える「AIとロボット」の授業とは

今回行われるのは、「ロボット博士になろう!」をテーマにした体験型の学びです。会場は名古屋市東区にあるアライブインターナショナルスクールで、未就園児から年長児までを対象にクラス単位で実施されます。

講師を務めるのは、園に通う子どもの保護者です。AIやロボット製造に関わる仕事をしている大人が、自らの経験をもとに、テクノロジーの世界を子どもたちに伝えます。

内容は専門的な知識を詰め込むものではありません。「ロボットはどうやって作られるの?」「ロボットはどんなことができるの?」といった素朴な疑問を出発点に、子どもたちの好奇心を引き出すことが目的です。

幼児にAIというと難しそうに感じますが、ここで重視されているのは技術の仕組みを理解させることではなく、“未来社会を支える仕事がある”という事実に触れることです。実際にその分野で働く大人の言葉を聞くことで、教科書では得られないリアリティを体験します。

英語教育を軸とするインターナショナルスクールでありながら、テクノロジー分野の学びを取り入れる背景には、社会の変化があります。AIやロボットが身近になりつつあるいま、幼少期から「知らない世界」と出会う機会をつくることは、将来の選択肢を広げる一歩にもなります。

この取り組みは単発のイベントではなく、「プロから学ぶ教育プログラム」として継続して実施されているものです。園児が多様な職業や分野に触れることで、興味や関心の芽を育てていくことを目指しています。 幼児教育の現場でAIやロボットを扱うことは、決して“英才教育”を意味するものではありません。むしろ、子どもたちが「なんだろう?」と問いを持つきっかけをつくる試みと言えるでしょう。

なぜ保護者が“先生”になるのか――家庭と園がつくる学びの形

今回の取り組みで特徴的なのは、講師が外部の専門家ではなく「保護者」である点です。園に通う子どもの家族が教育活動に参加し、自らの仕事や経験を共有する。このスタイルは、欧米では比較的一般的な「スクールコミュニティ型教育」と呼ばれる考え方に通じるものがあります。

家庭と園が分かれて存在するのではなく、一つのコミュニティとして子どもの成長を支える。そうした環境の中で育つ子どもは、「自分の家族も学校に関わっている」という安心感を得やすいとされています。また、大人同士が協力し合う姿を間近で見ることは、社会の仕組みを体感する機会にもなります。

保育園や幼稚園は、子どもにとって最初の“社会”です。そこに家族が自然な形で関わることで、園と家庭のあいだに一体感が生まれます。大人が一方的に教えるのではなく、さまざまな立場の人が学びに参加することで、子どもは「多様な役割がある社会」を少しずつ理解していきます。

さらに、この園では保護者向けの教育セミナーも定期的に行われています。園だけが教育方針を決めるのではなく、家庭と一緒に学びを深める姿勢が示されています。英語力の向上にとどまらず、思考力や社会性、自己肯定感といった“生きる力”を育む環境づくりを進めていることも特徴です。

AIやロボットというテーマも、単に先端技術を紹介するためではなく、「社会の中で働く大人の姿」に触れる機会として位置づけられています。子どもにとっては、自分の身近な大人が専門性を持ち、社会の一員として役割を担っていると知ること自体が大きな学びになります。 保護者が“先生”になるという一見ユニークな取り組みは、実は家庭と園の関係を見直す試みでもあります。教育を学校任せにするのではなく、コミュニティ全体で支える。その姿勢が、今回のAI・ロボット授業の土台になっています。

“ほんもの”に触れる体験が育てるもの

この園では、今回のAI・ロボット授業に限らず、これまでも専門分野で活躍する人を招いた体験型の学びを続けてきました。その一例が、保護者による「歯科医師体験」です。

子どもたちは歯みがきの大切さを学ぶだけでなく、実際に歯科医師が使う器具に触れる機会も持ちました。単なる説明で終わるのではなく、目で見て、手で触れて、話を聞く。こうした体験は、子どもにとって強い印象として残ります。

興味深いのは、学びが知識にとどまらなかった点です。クラスメイトの保護者が“先生”として関わる姿を見ることで、子どもたちの中に「人を尊敬する気持ち」が芽生えたといいます。一人の大人への尊敬が、やがて自分の親への見方や、友だちとの関わり方にも影響を与えていく。そんな変化も見られたそうです。

ここで重視されているのは、いわゆるテストで測れる力だけではありません。意欲や協調性、粘り強さといった、数値化しにくい力をどう育てるか。その視点から、非認知能力の育成にも取り組んでいます。教育顧問として非認知能力研究の専門家を迎え、カリキュラム開発を進めている点も、その姿勢を示しています。

AIやロボットというテーマも、単なる“先端分野への早期教育”ではなく、社会とつながる体験の一環と捉えることができます。技術の細かな仕組みを理解することよりも、「世の中にはこんな仕事がある」「未来を支える技術がある」と知ることが、子どもにとっての第一歩です。

“ほんもの”から学ぶという姿勢は、英語教育やSTEM教育と並び、この園の柱の一つになっています。大人の仕事や社会の現場を、子どもの目線に合わせて伝える。その積み重ねが、将来の進路や価値観にどのような影響を与えるのかは、まだ分かりません。

それでも、幼少期に出会った一つの体験が、その後の興味や選択につながることは少なくありません。AIやロボットに触れる時間もまた、子どもたちにとっては未来への小さな入り口なのかもしれません。

幼児期にAIは早いのか――問われるのは“使い方”ではなく“向き合い方”

AIやロボットと聞くと、高校生や大学生が学ぶ専門分野というイメージを持つ人も多いかもしれません。未就学児がその言葉に触れることに、違和感を覚える声があっても不思議ではありません。

しかし、今回の取り組みを見ていくと、目的はプログラミング技術を身につけることではないと分かります。重視されているのは、「AIをどう使うか」よりも、「AIがある社会とどう向き合うか」という入り口に立つことです。

いまやAIは、ニュースやスマートフォンのアプリ、家電製品など、私たちの身近なところに存在しています。子どもたちが成長する頃には、さらに当たり前の存在になっているでしょう。そのとき、ただ便利に使うだけでなく、「どんな仕組みなのか」「誰がつくっているのか」と考える視点を持てるかどうかは大きな違いになります。

幼児期にできることは限られています。だからこそ、「難しいから触れない」のではなく、「やさしい形で出会う」ことに意味があります。ロボットはどうやって作られるのか、どんな仕事をするのかといった素朴な疑問に触れるだけでも、子どもにとっては新しい世界との接点になります。

また、今回の授業はテクノロジー単体の話ではなく、保護者が教壇に立つという構図も含めて設計されています。社会で働く大人の姿を知り、家庭と園がつながる様子を見る。その経験は、AIの知識以上に大きな影響を与える可能性があります。

テクノロジー教育が進む一方で、「人との関わり」が希薄になるのではないかという懸念もあります。だからこそ、AIをテーマにしながらも、中心にあるのは“人”であるという点は重要です。子どもが学ぶのはロボットそのものではなく、ロボットをつくり、活用している人の存在です。

幼児教育とAIの組み合わせは、まだ一般的とは言えません。しかし、社会が大きく変わる時代にあって、教育の形も少しずつ変化しています。今回の取り組みは、その一つの試みとして注目に値するでしょう。

英語教育を基盤としながら、非認知能力やSTEMの視点も取り入れるこの園の挑戦は、「早いかどうか」という議論を超え、「どう関わらせるか」という問いを投げかけています。

AIとともに生きる未来に向けて、幼児期からできることは何か。名古屋の一園で行われる小さな授業は、そのヒントを示しているのかもしれません。

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