まちに新しい建物ができるとき、そこに「どんな人が集い、どんな時間が流れるのか」まで考えられていることは、意外と多くありません。
高齢者や障がいのある人、そして地域で暮らす人たちが、自然に同じ空間を共有できる場所とはどんな施設なのか――。
その問いを、共立女子大学・共立女子短期大学では“学びのテーマ”として真正面から捉えました。
学生たちが向き合ったのは、図面の中だけの理想ではなく、これから先、地域で使われ続けていく現実の場所です。
建物をつくることではなく、そこで生まれる関係や時間を考えること。
まちの未来を思い描くことが、そのまま学びにつながっていきました。
今回紹介するのは、産学連携を通じて生まれた、学生たちの学びとまちの未来をめぐる物語です。
なぜこの取り組みが生まれたのか 公共施設計画を“学びの題材”にした理由

千代田区では、これから先の地域の姿を見据え、高齢者や障がいのある人が増えていく社会にどう向き合うかが大きなテーマになっています。
単に施設を新しくするのではなく、誰もが安心して使え、世代や立場を超えて人が交わる場所をどうつくるか。その視点が、公共施設には求められています。
今回題材となったのは、旧千代田保健所跡地に整備が進められている複合公共施設の計画です。
この施設には、障がい者支援や高齢者支援の機能に加え、地域の人が自然に集まれる交流の場が組み込まれる予定となっています。
共立女子大学・共立女子短期大学では、この「実際に地域で使われる予定の施設計画」そのものを学びの題材とし、学生が社会課題に向き合う教育プログラムを実施しました。
連携先となったのは、千代田区とともに施設計画を進めているスターツグループです。
教育の場と実務の現場をつなぐことで、机上の課題ではなく、現実に根ざした視点から考える機会が生まれています。 公共施設を「完成した建物」として捉えるのではなく、「これから使われ続ける場所」として考える。
どのような人が訪れ、どのような関係が生まれていくのか。
そうした先の時間まで見据えて考えることが、この取り組みの出発点だったように感じられます。
学生たちが向き合ったのは「使われ続ける場所」という視点

この取り組みの特徴は、建物そのものを設計すること以上に、「その場所がどのように使われ、どんな人たちが関わっていくのか」までを考える点にありました。
学生たちが向き合ったのは、完成した瞬間がゴールではなく、長い時間をかけて地域に根づいていく公共施設の姿です。
授業には、建築とデザイン、それぞれ異なる専門分野を学ぶ学生が参加し、混成チームを組んで課題に取り組みました。
空間の広さや動線といった建築的な視点だけでなく、誰にとっても使いやすい工夫や、自然と人が集まる仕掛けなど、デザインの視点も交えながら議論が重ねられています。
公共施設というテーマには、明確な正解がありません。
利用する人の年齢や立場、体の状態もさまざまで、そのすべてを想定する必要があります。
学生たちは、多様な利用者が同じ空間を共有することの難しさと向き合いながら、ひとつひとつの選択について考えを深めていきました。
提案の中では、可動式の家具を取り入れた柔軟な空間づくりや、年齢や障がいの有無に関わらず利用しやすいユニバーサルデザインの考え方が示されました。
さらに、カフェやギャラリー、イベントスペースといった要素を組み合わせることで、日常の中に人が集うきっかけを生み出す工夫も盛り込まれています。
注目したいのは、空間設計だけで終わらせず、開業後のイベント企画やプロモーションのアイデアまで含めて提案されている点です。
施設が完成したあと、どのように地域と関係を築いていくのか。
その視点まで含めて考える姿勢からは、実社会を見据えた学びの深さが伝わってきます。
こうした提案は、限られた時間の中で一人ひとりが意見を出し合い、専門の違いを越えてまとめ上げられたものです。
公共施設という身近でありながら難しいテーマに対し、学生たちが真剣に向き合った過程そのものが、この取り組みの価値なのかもしれません。
成果報告会で得たのは評価だけでなく次につながる視点

取り組みの成果は、成果報告会という形で共有されました。
学生たちは、自分たちが考えた空間や企画について発表し、実務の現場に近い視点から講評を受ける機会を得ています。
この場では、提案の完成度そのものだけでなく、公共施設としての現実性や、地域の中でどのように機能していくかといった観点からの助言が示されました。
学生にとっては、アイデアを形にするだけでなく、「社会の中でどう活かされるのか」を考える視点に触れる時間だったように感じられます。
実際に建設や運営に関わる立場からのフィードバックを受けることで、机上では気づきにくい課題や、視野の広げ方を学ぶ機会にもなりました。
他者の視点を受け取り、自分たちの考えを見直すことも、実践的な学びの一部といえます。
成果報告会は、この取り組みのゴールというよりも、学びが次の段階へ進むための通過点といえる存在です。
地域や社会と関わりながら学ぶという姿勢が、具体的な対話の中で深まっていく。その過程自体が、この産学連携の大きな成果のひとつなのかもしれません。
地域とともに育つ学びが示したこれからの可能性

今回の取り組みから伝わってくるのは、学生が課題に取り組んだという事実だけではありません。
地域の現実に目を向け、将来使われる場所について本気で考える姿勢そのものが、学びとして大切にされていることが感じられます。
公共施設は、完成した瞬間よりも、その後の時間の方がはるかに長く続きます。
誰がどのように使い、どんな関係が生まれていくのか。そうした視点を持つことは、地域づくりだけでなく、これから社会に出ていく学生にとっても大きな意味を持つはずです。
産学連携という枠組みの中で、実際の計画を題材に学ぶことで、教室の外にある現実とつながる。
その経験が、学生一人ひとりの視野を広げ、地域や社会と向き合う力につながっていくように思えます。
共立女子大学・共立女子短期大学が続けているこうした実践的な学びは、目立つ派手さはなくとも、確実に地域と未来を結びつける取り組みです。
これから先、この学びの積み重ねが、どのような形で社会に還元されていくのか。その歩みを静かに見守りたくなるようなプロジェクトでした。
共立女子大学・共立女子短期大学 概要
共立女子大学・共立女子短期大学は、東京都千代田区にキャンパスを構える女子大学です。
専門分野の学びに加え、社会や地域とつながる実践的な教育を重視し、産学連携や地域連携を通じた取り組みを積極的に展開しています。
学生一人ひとりが社会課題に向き合い、実社会の中で活きる力を育むことを大切にしています。
