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NANOホールディングス×SBIグループ、創薬バイオの「100億円問題」突破へ! 新・資金循環モデルと出口戦略の全貌

2025年12月11日(木)、日本の創薬バイオ業界にとって一つの転換点となる動きがあった。NANO MRNA株式会社は、同日開催された臨時株主総会を経て、社名を『NANOホールディングス株式会社』へと変更。SBIグループ […]
舌肥 shitakoe 2025年12月28日

2025年12月11日(木)、日本の創薬バイオ業界にとって一つの転換点となる動きがあった。NANO MRNA株式会社は、同日開催された臨時株主総会を経て、社名を『NANOホールディングス株式会社』へと変更。SBIグループとの提携を軸に、投資事業への本格参入を決定した。

上場株式やファンドを活用した新たな投資モデルを実行し、日本の創薬バイオ分野における健全な資金循環の創出を目指す同社。株主総会終了後には、業界のキーパーソンを招いた公開パネルディスカッション、続いて新体制による成長戦略記者発表会が開催された。

パネルディスカッション:「100億円問題」と新たな資金循環モデル

パネルディスカッションのテーマは「100億円問題後の新・創薬バイオ資金循環モデル」。産学官、金融、製薬の第一線で活躍するパネリストが一堂に会し、東証グロース市場の制度変更がもたらす影響と、その打開策について議論が交わされた。

オープニング:「出口が閉じた」日本の創薬市場と新スキーム

モデレーターを務めたSBI証券の石井巨道氏は、冒頭で「100億円問題」の深刻さを解説した。2030年以降、グロース市場上場後5年経過した企業に時価総額100億円以上が求められる新基準に対し、現状の該当企業の多くが未達である現状を指摘。IPOへのハードルが上がり、開発資金調達の悪循環が懸念される中、NANOホールディングスの飯野智CIOは、上場株式との交換を活用した投資モデルを提示。「新たな死の谷に橋を架け、健全な資金循環を起こしたい」と決意を語った。

石井巨道(株式会社SBI証券 シニアマネージングディレクター)
1988年野村證券入社。企業金融部門や公開引受部長などを歴任し、2022年にSBI証券入社。コーポレートファイナンス領域(IPO、M&A、資金調達)で豊富な経験を持つ。

飯野智(NANOホールディングス株式会社 取締役CIO/Nano Bridge Investment株式会社 代表取締役社長)
VCおよびPE業界で25年以上の経験を持つ。日立製作所、CSKベンチャーキャピタル、ウィズ・パートナーズを経て現職。国内外の成長企業への投資と経営支援に精通。

セッション1:崩れた「上場ゴール」の投資シナリオ

Beyond Next Venturesの澤邉岳彦氏は、投資家の視点から現状を分析。「創薬し、ライセンスアウトして東証上場」という従来の黄金シナリオが崩壊しつつあると指摘する。代替策が模索される中、東大IPCの河原三紀郎氏は、過去の「そーせいグループ(現ネクセラファーマ)」や「ナノキャリア(現NANO HD)」による株式交換を用いたM&A事例に言及。現金を伴わない株式交換によるM&Aが、今後の有効な選択肢かつブレイクスルーになるとの期待を示した。

澤邉岳彦(Beyond Next Ventures株式会社 投資部 ディレクター)
明治製菓(現Meiji Seika ファルマ)での創薬研究・事業開発を経て、2014年に産業革新機構へ。2022年より現職。バイオ・創薬領域の投資業務に従事。

河原三紀郎(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 パートナー)
凸版印刷を経て、理研ジェネシスCOO等を歴任。2016年より東大IPCに参加。MBA(Northwestern大学Kellogg)およびMEMを持つ。

セッション2:成功体験の枯渇と再成長への鍵

テック&フィンストラテジーの小南欽一郎氏は、過去20年のバイオ市場を振り返った。2000年代のブーム、ライブドアショックによる冬の時代、iPS細胞やアベノミクスによる再浮上を経て、現在は長期的な成功事例の不足により投資家の期待が縮小していると分析。NANO社の新スキームについて、資金注入だけでなく、株式取得を通じた主体的支援(マジョリティ取得)によって、POC偏重ではない「投資魅力のある事業水準」へ引き上げる契機になると評価した。

小南欽一郎(テック&フィンストラテジー株式会社 代表取締役)
英国王立癌研究所ポスドク、九大助手などを経て野村證券へ。サイエンスと金融の双方に精通し、バイオ・医療系企業の社外取締役も複数兼任。

セッション3:公的資金と民間資金の「橋渡し」

AMEDの下田裕和氏は、行政の立場から発言。国の支援により基礎からPOC取得までは進むものの、そこから先の事業化・大型化(ホームラン級のイグジット)への接続が課題であるとした。NANOホールディングスの構想は、民間投資家の視点で成長余地のある企業を集中的に支援する点に特徴があり、国としては承認取得やグローバル展開などのソフト面で連携し、長期的なエコシステム構築を目指したいとエールを送った。

下田裕和(日本医療研究開発機構(AMED) 調整役)
通商産業省(現経産省)入省後、バイオ・ヘルスケア産業推進を担当。経産省生物化学産業課長等を経て、2025年7月より現職。

セッション4:世界と戦うための「土台」作り

田辺ファーマの長山和正氏は、製薬企業のM&A動向について言及。グローバルでの大型買収に対し、日本企業は規模のメリットが活かしづらい現状がある。また、被買収側(スタートアップ)においても、グローバル経験のあるCXO人材の不足や、知財・法務戦略の弱さが課題だと指摘。NANO社の取り組みが、資金面だけでなく事業開発やリーガル面でも伴走することで、日本の技術力を世界に示す好機になると期待を寄せた。

長山和正(田辺ファーマ株式会社 執行役員 CTO & GC 兼 事業開発本部長)
エーザイ、モデルナ・ジャパン社長を経て現職。米国Dukeロースクール修了、NY州弁護士資格を持つ。グローバルな事業開発と法務に精通。

総括:「資金と人材の再配線」が始まる

最後にモデレーターの石井氏は、本日の議論を通じて「資金・人材の課題に加え、連携による競争力強化の重要性が示された」と総括。NANOホールディングスの新プロジェクト始動にあたり、SBIグループも伴走し、共に課題解決に取り組むと締めくくった。

成長戦略記者発表会:「戦略的投資持株会社」への進化

パネルディスカッションに続き、NANOホールディングスの新経営陣による成長戦略記者発表会が行われた。「Strategic Investment Holding Company」を標榜し、SBIグループとの提携で切り拓く新市場へのビジョンが語られた。

株式とファンドを組み合わせた「ハイブリッド投資」

(左から)富所伸広氏、中冨一郎氏、松村淳氏、秋永士朗氏、飯野智氏

代表取締役会長兼社長 CEOの松村淳氏は、新体制における成長戦略の中核として、株式交換とファンド(Nano Bridge Investment)を組み合わせた投資モデルを提示した。

「ソフトバンクやSBIが実践してきたモデルを、ヘルスケア領域で展開する。IPOギャップに苦しむ企業や、本来価値があるのに埋もれている企業に対し、我々が介入することで『オプションバリュー』を積み上げ、企業価値の最大化を図る」と松村氏は力説。2年で10件程度の買収、将来的には時価総額1,000億円超を目指すという野心的な目標を掲げた。

松村淳(NANOホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO)
野村證券、ウィズ・パートナーズ創業を経て、企業の成長戦略や資本政策に精通。NANO MRNAの事業モデル転換を主導し、NANOホールディングスの新ビジネスモデルを牽引する。

大企業に眠る資産を活かす「カーブアウト戦略」

取締役CGOの富所 伸広氏は、もう一つの柱である「カーブアウト事業」について説明した。大企業の内部には、事業規模や戦略の不一致により埋もれている有望なヘルスケア技術や事業(ノンコア事業)が多数存在する。これらを買収(カーブアウト)し、傘下のバイオベンチャーと統合したり、成長させて売却したりすることで、新たな価値を生み出す戦略だ。すでに製薬、化学、素材メーカーなど十数社とNDAを締結し、協議に入っているという。

富所伸広(NANOホールディングス株式会社 取締役 CGO)
日東電工にて執行役員等を歴任後、アクセリードCEOに就任。ヘルスケア分野での実績を持ち、M&Aやアライアンス推進を担う。

グローバル市場を見据えた「ハンズオン支援」

取締役CIOの飯野智氏は、SBI新生企業投資と共同運営するファンド「Nano Bridge Investment」の投資戦略を詳説。未公開企業やカーブアウト案件への投資に加え、小型上場企業への転換社債等による投資(PIPEs)や、IPO時のコーナーストーン投資も展開する。出口戦略としては、単独IPOだけでなく、複数企業のロールアップによる米SPAC上場や、大手企業へのM&Aなど、多様な選択肢を想定しているとした。

飯野智(NANOホールディングス株式会社 取締役 CIO)
(プロフィールは前述の通り)

科学的目利きとネットワークの力

また、会見には代表取締役CTOの秋永士朗氏、取締役CNO(創業者)の中冨一郎氏も同席した。秋永氏は、投資における科学的なデューデリジェンス(目利き)と、FDA対応などグローバル規制への実務対応の重要性を強調。中冨氏は、長年培った株主や業界との信頼関係(ネットワーキング)を基盤に、新体制を支えていく姿勢を示した。

秋永士朗(NANOホールディングス株式会社 代表取締役 CTO)
協和発酵工業(現協和キリン)出身。研究者出身の経営者として、知的財産戦略やグローバル展開を見据えたR&Dを統括する。

中冨一郎(NANOホールディングス株式会社 取締役 CNO/創業者)
久光製薬、米セラテック社副社長等を経て、1996年にナノキャリア(現NANO HD)を創業。国内外の製薬業界に広いネットワークを持つ。

日本のバイオ産業再生へ、資金循環の「再配線」が始まる

「100億円問題」という逆風を好機と捉え、投資事業へと大きく舵を切ったNANOホールディングス。SBIグループという強力なパートナーを得て、株式交換とファンドを駆使したM&Aやカーブアウト支援により、停滞する日本の創薬エコシステムに新たな血流を送り込もうとしている。

技術はあるが資金がないベンチャー、事業化されずに眠る大企業の技術シーズ――これらを「資本の力」と「目利き」で結びつけ、グローバルレベルの価値へと昇華させることができるか。NANOホールディングスが描く成長の軌跡は、日本のバイオ産業再生の試金石となりそうだ。

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