京都の秋に、芸術大学ならではの“本気の文化祭”が帰ってきます。
京都芸術大学で開催される「大瓜生山祭(だいうりゅうざんさい)2025」は、学生たちが創り上げるアートと体験の祭典です。毎年1万人以上が訪れる人気イベントで、今年は11月1日と2日の2日間開催されます。
会場となるのは、自然豊かな左京区の瓜生山キャンパス。山の斜面を活かした装飾や大階段のアートなど、キャンパス全体が一つの作品のように彩られます。特に注目を集めるのは、学生が約7か月かけて制作する“本格お化け屋敷”と、100組以上が参加する“アート雑貨市”。どちらも芸大生ならではの発想とクオリティで、訪れる人を驚かせてくれそうです。
さらに、映像作家の藤井亮氏によるトークイベントや、学生作品展、フード企画なども開催され、芸術と学びが一体となった空間が広がります。芸術を通して人がつながる「輪(わ)」をテーマにした今年の祭りは、アートに詳しくない人でも気軽に楽しめる“体験型の文化祭”。京都の秋を感じながら、学生たちのエネルギーと創造力に触れられる2日間になりそうです。
学生が作る「お化け屋敷」と「アート雑貨市」に注目

京都芸術大学の学園祭といえば、毎年話題を集めるお化け屋敷「消店街(しょうてんがい)」が名物です。
この企画は単なる“怖がらせ”ではなく、ストーリー性や世界観づくりに重きを置いているのが特徴となっています。物語の構成、美術セット、音響、映像演出に至るまで、すべて学生たちが一から手がけています。照明の角度や音の響き方まで徹底的にこだわり、まるで小さな映画のように緻密な空間演出が展開されます。
制作準備はおよそ7か月。構想段階では脚本チーム、美術チーム、映像チームなどに分かれて役割を分担し、学科の垣根を超えた協働で完成へと向かいます。普段はキャンバスや映像を通して表現している学生たちが、“体験型アート”として観客を物語の中に誘うのです。来場者の驚きや悲鳴が、彼らにとって最高の拍手になると言えるでしょう。

もうひとつの人気企画が「アート雑貨市」。100組を超える学生や卒業生が出店し、イラスト・アクセサリー・ハンドメイド小物など、多彩なジャンルの作品が並びます。デザインの完成度はもちろん、どのブースにも制作者の個性がにじみ出ており、思わず足を止めてしまうものばかりです。学生とのちょっとした会話から作品の背景を知ることができるのも、このイベントならではの醍醐味。自分だけの“お気に入り”を探す時間が、芸大祭の楽しさをより深くしてくれます。
キャンパス全体が作品に 京都のロケーションを活かした装飾

京都芸術大学のキャンパスは、東山三十六峰のひとつ「瓜生山(うりゅうやま)」の斜面に広がっています。
その地形を生かした装飾演出は、学園祭の名物として毎年多くの来場者を魅了しています。
大学の象徴でもある大階段を中心に、キャンパスのいたるところがアートで彩られます。学生たちはチームを組み、設計・制作・設営をすべて自分たちの手で行います。テーマに沿って素材や色彩を選び、昼間の自然光と夜のライトアップで表情が変わるよう計算されたデザインも見どころです。昨年は階段全体を巨大な絵巻物のように見立てた装飾が話題となり、写真を撮る来場者が絶えませんでした。

歩いているだけで、目に入るすべてが作品のように感じられる——そんな空間体験こそが大瓜生山祭の醍醐味です。
屋内外に点在する装飾や展示はそれぞれ異なる学生チームが手がけており、回るたびに新しい発見があります。
芸術の息づく京都という街と、学生たちの創造力が融合したこのキャンパスは、まさに“生きた美術館”のような空間です。
映像作家・藤井亮氏によるトークイベントも開催

学園祭の期間中には、映像作家・藤井亮氏による特別トークイベントも開催されます。
藤井氏はNHKの特撮ドラマ「TAROMAN」や、滋賀県の「石田三成CM」、キタンクラブ「カプセルトイの歴史」など、独自の発想で話題を生み出してきたクリエイターです。
そのユーモアとアイデアのセンスは、広告や映像の枠を超えて多くのファンを魅了しています。
今回のトークでは、藤井氏がどのように“くだらないアイデア”を磨き上げ、唯一無二の作品へと昇華させているのか、その発想法や制作の裏側が語られます。
発想の自由さと徹底した構成力を併せ持つ藤井氏の話は、映像を学ぶ学生だけでなく、ものづくりや企画に携わる人にとってもヒントになるはずです。
また、このイベントは入場無料で事前予約不要という点も注目です。
誰でも気軽に足を運べるオープンな雰囲気が、学園祭全体の「学びを共有する」というテーマと自然に重なります。
普段は画面越しで見ているクリエイターの言葉を、学生たちと同じ空間で聞ける——そんな貴重な機会に心惹かれる人も多いでしょう。
芸術がつなぐ“輪”を感じる2日間へ

今年の大瓜生山祭のテーマは「わ(輪)」。
その言葉には、人と人、大学と地域、学びと社会をつなぐ“つながり”への願いが込められています。
学生たちはそれぞれの表現を持ち寄り、個人の創作を超えて、誰かと共に作り上げることの喜びを体感しています。
会場を歩けば、異なる学科の学生同士が協力して作品を展示し、地域の人々と笑顔で交流する姿があちこちに見られます。
その光景こそ、芸術が持つ「人をつなぐ力」を象徴しているようです。
大瓜生山祭は、単なる学園祭ではなく“街と大学をつなぐフェスティバル”としての存在感を高めています。
文化と創造が共鳴するこのイベントを通して、芸術の未来を支える若い世代のエネルギーが京都のまちに広がっていきます。
紅葉が美しいこの季節、アートをきっかけに人と出会い、思いが交わる瞬間を感じられるのも、この祭ならではの魅力です。
芸術を難しく考えず、ただ「楽しむ」ことから始められる場所——。
秋の京都で、学生たちの熱量が生み出す“輪”に触れてみてはいかがでしょうか。
創造の力が結ぶ未来のかたちを、きっとこの2日間で感じられるはずです。
京都芸術大学について
京都芸術大学は、通学課程と通信教育課程を合わせて約2万3千人が在籍する、国内最大規模の総合芸術大学です。
国内外から幅広い年齢層の学生が集まり、芸術を通して社会で必要とされる力を育むことを目指しています。
「藝術立国」を教育目標に掲げ、芸術が社会をより良く変える原動力になるという理念のもと、実践的な学びを重視しています。
特に通学課程では“社会と芸術”の関わりを重視し、企業や自治体が抱える課題をアートやデザインの力で解決する「社会実装プロジェクト」を年間100件以上展開。
学科を超えたグループワークや、実際の現場での制作を通じて、社会性を備えた表現者を育成しています。
