4月下旬に冷蔵庫の新フラッグシップモデルを発売するパナソニックが、同製品の体験セミナーを開催した。本製品では食品のおいしさを長く保つ冷凍性能が大きく進化。また、業界初となるデマンドレスポンス自動運転サービスに対応し、環境にも配慮した一台となっている。会場では実機の展示・実演に加え、新機能を共同開発した中部電力ミライズの担当者をゲストに招いたトークセッションを実施。デマンドレスポンスの考え方やその利点などが語られ、電力需給と連動して社会貢献にも繋がる冷蔵庫の未来を感じることができた。
おいしさを長期間保つ「霜つき抑制冷凍」を強化&拡大
「サクッと切れる微凍結」「熱いまま急速冷凍」などを搭載した保存庫とケース丸ごと引き出せる大容量の収納庫を兼ね備え、使いやすさとおいしさにこだわった冷凍性能で高い評価を受けている同社のフラッグシップ冷蔵庫。同社・冷蔵庫事業部の樋上和也氏によると、冷蔵庫市場全体は2021年を境に販売台数が下降傾向にあり、特に401L超の大型冷蔵庫は厳しい販売状況にあるという。一方で、同社の大型冷蔵庫は売れ行きが好調で、昨年4月に発売されたHYタイプは、前身モデルに比べて前年比175%の出荷台数を記録したそうだ。

その上で、今回発売される新製品(WXタイプ/HYタイプ)は、従来からの特長である「霜つき抑制冷凍」機能を強化。庫内の温度を検知して冷却能力を最適化する新たな制御技術により、食感の低下や臭いの発生につながる「霜つき」の抑制性能が向上した。また、従来製品では冷凍室上段のみだった霜つき抑制冷凍を下段にも拡大。これにより上段では3か月後の霜つき量を約80%、下段では2週間後の霜つき量を約27%抑制できるという。

一方、今回の新製品で注目されるのが、業界初※となるデマンドレスポンス自動運転サービスへの対応だ。これについては、同社とともに本技術の共同開発を行った中部電力ミライズの執行役員でサステナブル社会推進本部長の臼井太郎氏と樋上氏によるトークセッションの中で詳しい内容が語られた。(※国内の家庭用冷凍冷蔵庫において。2026年4月時点。)
再エネ台頭で注目高まる「デマンドレスポンス」とは?
初耳という人も多いかもしれないが、「デマンドレスポンス(以下、DR)」とは、電力の需給状況に応じて消費者が電気の使用量を調整する取り組みのこと。カーボンニュートラルな社会が求められる中、天候や自然条件によって発電量が左右される再生可能エネルギーの台頭によってその重要性が高まり、電力を「使う量」と「作る量」のちょうどいいバランスを保つことを目的にしている。

DRには電力の供給が少ない時に使用量を下げる「下げDR(節電アクション)」と、電力の供給が多い時に使用量を上げる「上げDR(電気使用アクション)」という2つのアクションがあり、再エネ由来で発電した電気を余らせないよう「使える時に使う」という考えが含まれているのもポイントだ。
中部電力グループの一社である中部電力ミライズでは「NACHARGE(ネイチャージ)」という名称で2022年より家庭向けDRをサービス化。現在約37万件の登録があり、登録者自身のアクションでDRに取り組む「NACHARGE Action」の場合、登録者はスマホに届く協力要請に応えることで、電気料金の支払いや他社ポイントに交換できる「カテエネポイント」を得られる仕組みとなっている。
“冷蔵庫でポイ活”が新たな潮流に?
2015年のパリ協定締結後、世界的にカーボンニュートラルの動きが高まり、国内では電力供給の逼迫が社会問題化する中、両社は2019年から共同でDRの取り組みを開始。「それまで冷蔵庫の省エネというと本体の節電に主眼が置かれていましたが、そうではなく社会インフラ的な視点から何かできないかと考えました」と樋上氏は当時を振り返る。
その上で「冷蔵庫はエアコンなどと違って年中動いている家電のため、電気を止めるとなると、庫内の冷気をいかに保つかが課題でした。ただ、真空断熱材を採用している当社の冷蔵庫は断熱性能に優れているため、DRが可能だと思いました」と同氏。その後、2023年に実証実験を行い、構想から7年をかけて今回の実装に至った。

新製品には中部電力ミライズが提供する「NACHARGE Link」と同じ機器制御型DRの技術を採用。これは機器が自動でDRに対応する仕組みで、臼井氏は「(消費者自身がアクションを起こすよりも)機器制御型の方が大きな効果が得られ、特に上げDRでは機器から出る通知音が電気を使うきっかけとなり、より大きな違いが生まれることが分かりました」と語る。

「特別な手間なく社会貢献できることが、今回のDR対応の大きなメリットだと思います」と述べた樋上氏。それだけでなく、新たに立ち上がる「NACHARGE Link KADEN」に加入すればDR貢献に応じたポイントが獲得でき、臼井氏は「ユーザーの方々に経済的なメリットも感じてもらえたら」と語る。さらに今後は中部電力グループ以外の電力会社とも取り組みを広げ、2027年までにDR対応冷蔵庫の購入ユーザーのうち5割のサービス加入を目指していくという。

トークセッションの後には、デマンドレスポンス自動運転サービスのデモンストレーションが行われ、下げDRと上げDRの状況に合わせて消費電力が自動で調整される様子が数値的に確認できた。また、始動の通知がスマホに届き、DR貢献量や獲得ポイント数がアプリを通じて確認できる分かりやすさから、まさに何をせずとも社会貢献ができる仕組みを実感した。
食べ物のおいしさを長く保つだけでなく、社会貢献に繋がり、ポイ活までできてしまうパナソニックの新冷蔵庫。その登場は、普段食べ物を保管するだけだった家電に新たな魅力と楽しみを加えてくれそうだ。
