2025年6月18日から3日間にわたり、東京ビッグサイトにて「ジャパン・エネルギー・サミット2025」が開催されました。本イベントには、世界50カ国以上からエネルギー分野の専門家や政策決定者、業界リーダーが集まり、急速に変化するエネルギー情勢に対応するための現実的な戦略について意見を交わしました。初日の開会式では、AIやデジタルインフラの進展に伴うエネルギー需要の増加を見据え、LNG(液化天然ガス)の持続的な役割に改めて注目が集まりました。また、多様なエネルギー源の活用や国際協調の必要性も強調され、今後の方向性に明確なメッセージが示される場となりました。地政学的リスクや脱炭素への要請が高まるなか、LNGは“理想と現実の橋渡し役”として、確かな存在感を示したといえるでしょう。サミットを通じて、未来のエネルギーに求められる多様性と柔軟性が、より具体的に共有された機会となりました。
エネルギーの未来を語る、グローバルCEOパネル

サミット初日の目玉となったのが、「Securing Tomorrow: A Vision for Sustainable Growth in the Energy Sector(未来の確保〜エネルギー部門の持続可能な成長へのビジョン)」と題したグローバルCEOパネルでした。モデレーターにはBloombergのシェリー・アン氏を迎え、JERA、TotalEnergies、Woodside Energyの3社のトップが登壇し、それぞれの立場からLNGの将来性やエネルギー市場の動向について意見を交わしました。
Woodside Energyのメグ・オニールCEOは、地政学的リスクがエネルギー価格に与える影響に触れた上で、「だからこそ、安定供給に向けた長期的な関係性と多様な調達先の確保が不可欠です」と強調しました。
JERAの可児行夫会長は、「東京湾におけるLNG在庫はわずか10日分しかない」と指摘し、日本における供給リスクの高さを訴えました。また、同社が米国湾岸から年間550万トンのLNGを確保していることを明らかにし、多様化が「選択肢ではなく、必要条件」であると述べました。さらに、TotalEnergiesのパトリック・プイヤネCEOは、「ロシア危機を経て、当社は米国、モザンビーク、オマーンといった新たな供給源を開拓し、30%以上のLNG追加容量を確保しました」と語り、サプライチェーンの信頼性とレジリエンスの重要性を訴えました。各社の発言からは、LNGが持続可能な成長と安定供給の両立を実現するための重要な鍵であるという共通認識がうかがえました。
脱炭素と現実解の両立を目指して

今回のサミットでは、脱炭素化への取り組みとエネルギーの安定供給をどのように両立させるかについても、活発な議論が交わされました。グローバルCEOパネルでは、登壇者全員がネットゼロの目標を重視しつつも、「理想を追うだけではなく、現実的な課題にも目を向けるべきだ」との認識を共有していました。
JERAの可児会長は、「需要の増加、供給制約、そしてLNGの消費パターンの変動性を見据えた現実的な戦略が必要です」と述べ、政策における柔軟性の重要性を指摘しました。LNGは、石炭や重油といった高排出燃料の代替として、依然有効な手段であることが強調されました。また、Woodside EnergyのオニールCEOは、AIやデジタルインフラの拡大により求められる24時間365日の安定供給に触れ、「LNGは高排出燃料に代わる現実的なソリューションであり、今後も不可欠な存在です」と語りました。
最後に、TotalEnergiesのプイヤネCEOは、「日本は信頼できるパートナーであり、長期的戦略を理解するイノベーション先進国です。世界が今求めているのは、まさにその姿勢だ」と総括し、日本の果たすべき役割に期待を寄せました。脱炭素化というグローバルな課題に対し、LNGを含む多様なエネルギー源を現実的にどう位置づけていくか。その模索が、今回の議論の核心にありました。
多様な視点と技術が交差する3日間の議論と展示

サミット期間中は、政府、産業界、金融界から300名を超えるスピーカーが登壇し、LNGをはじめ、水素、アンモニア、カーボンマネジメント、デジタル技術、インフラ投資といった幅広いテーマで議論が交わされました。戦略的な視点と技術的な課題を両軸で扱うカンファレンスは、エネルギーの未来像を多面的に捉える機会となりました。また、展示エリアでは約100社が最新技術を披露し、エネルギー転換の実現に向けた具体的なソリューションを紹介しました。なかでも、クライメートテック・ゾーンやエネルギー・イノベーター・チャレンジでは、次世代の気候技術やスタートアップの取り組みが来場者の注目を集めていました。

ジャパン・エネルギー・サミット詳細:
https://www.japanenergyevent.com/ja/
多様化と連携が導くエネルギーの未来
「ジャパン・エネルギー・サミット2025」は、LNGという現実的なエネルギー選択肢を軸にしながらも、水素やデジタル技術といった新たな分野まで視野を広げ、多様な関係者が課題と解決策を共有する貴重な機会となりました。地政学的リスクの高まりや電力需要の急増といった現実に直面する今、理想を追い求めるだけでなく、実行可能な戦略を描くことがより一層求められています。
今回のサミットを通じて浮かび上がったのは、単独のエネルギー源に依存しない「多様性」と、国や企業の枠を超えた「連携」の重要性です。エネルギーの未来は、単なる技術革新だけでなく、それを支える柔軟な視点と協働の姿勢によって築かれていくのだと感じさせられました。今後の展開にも、引き続き注目が集まりそうです。