近年、AI技術の進展は目覚ましく、画像生成や音声対話など多様な創造の場で活用されるようになっています。しかし一方で、多くの子どもたちにとって「AI」はまだ使われる対象であって、自ら発想を形にする道具として捉えられている例は少ないように思われます。
そんななか、東京都内で行われた「親子で作る!初めてのAIゲーム制作体験会」では、小中学生とその保護者が一緒に、言葉を使ってゲームを“つくる”という新しい体験を味わいました。
主催は、AI人材育成を掲げる 株式会社SHIFT AI。
当日は、子どもたちがアイデアを出し、AIツール「DreamCore」を使ってゲームを生成し、親子でプレイし合う場も設けられました。プログラミング経験がない参加者でも、「言葉だけでゲームができる」という体験を通じて、発想から作品へと展開する楽しさを実感している様子が印象的でした。
親子で挑戦する“はじめてのAIゲーム制作”

10月19日(日)、東京都内の会場にて、親子9組・計24名が参加したこのワークショップ。参加対象は小中学生とその保護者で、用意されたのは「言葉でアイデアを出し、AIツールを使ってゲームを形にする」という体験プログラムでした。
使用されたDreamCoreは、テキスト指示(プロンプト)を入力することで、誰でも簡単にゲームの骨格や挙動を生成できるというツール。参加者はまず、「どんなゲームが作りたいか」を親子で話し合い、次にそのアイデアをAIに伝えるための言葉を探しました。ツール操作自体はシンプルで、プログラミングの知識がなくても手が動かせる設計になっていたため、子どもたちは保護者や講師のサポートを受けながら、自らゲーム画面や操作設定を編集していました。完成後には、参加者同士で作品をプレイしあい、作品の良さや工夫点を互いに共有する時間も設けられていました。
家庭内対話が自然に生まれる体験価値

この体験を通じて、多くの子どもたちが『AIって、ここまでできるのか』という発見をしたようです。ワークショップに参加した子どもたちからは、「AIでゲームを作れることを初めて知った」「コーディングがこんなに簡単になっていることに驚いた」という声が寄せられています。
また保護者側からは、「子どもと一緒にAIに触れられたのが良かった」「ゲームだと子どもも興味があるので、一緒に楽しみやすかった」というコメントも。家庭内でのAIをめぐる会話が自然に生まれたという点も見逃せません。さらに、参加者の87%が「家庭でAIについて話すきっかけになった」と回答し、93%が「また参加したい」と答えています。
このように、ただ体験するだけでなく、親子間の対話や創造する実感が伴ったことが、参加者にとって印象深いものとなったようです。
継続的な体験の場が生み出す次のステップ

こうした体験型プログラムは、単に楽しさを提供するだけでなく、子どもたちが「AI=使われるもの」から「AI=使いこなすもの」へと視点を変えるきっかけになりえます。アイデアを出し、それを言葉にし、AIという道具を介して形にするプロセスは、発想力・論理力・対話力といった複数の力を同時に育てる可能性を秘めています。
また親子で共に取り組む形式は、家庭での学びの場や会話のきっかけとしても期待できます。報告では「子どもが夢中でゲーム作成ソフトを動かしている姿を見て感動した」との保護者コメントも。
一方で、こうした取り組みをさらに広げるためには、定期的に実施可能な場を整えたり、子どもたちが単独で参加できるジュニアイベントのニーズも挙がっており、今後の展開に向けた課題も明らかになっています。
これからは、このような体験がより多くの子ども・家庭へと広がり、学校や地域の学びの場とも連携しながらAIリテラシーの裾野を拡げていくことが望まれます。
AIとともに育つ 親子で触れる第一歩
今回のワークショップは、子どもたちがゲームづくりを通じてAIの可能性を体感し、保護者がその様子を間近に見ることで、家庭内でのAIをめぐる会話のきっかけとなったようです。ツールの習熟や回数を重ねる場の整備など課題もありますが、“言葉からゲームへ”という体験そのものが、子どもと大人が共に創造的に関わる新たな選択肢を示したと言えるでしょう。今後もこうした機会が広がることで、AIを“使われるもの”から“使いこなすもの”へと昇華させる第一歩となるに違いありません。

 
                                             
                                             
                                             
                                             
                                             
                                            